貧困の「現場」から見た生活保護

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生活保護の要件と「健康で文化的な最低限度の生活=最低生活」

 

生活保護の要件は「資産や能力など、すべてを活用してもなお生活に困っている」ということである。

これを少し砕いてみると、大きく分けて次の4つの要素になる。

 

第一に「収入が最低生活費以下」であること。

第二に「資産を活用しても最低生活が保てない」こと。

第三に「働けない、もしくは働く場がない」こと。

第四に「あらゆる手段(年金や手当などの他の制度など)を使っても最低生活費に満たない」ことである。

 

ちなみに「扶養義務」は保護の要件ではなく「優先しておこなわれるものとする」とのみ定められていて、DVや虐待など家族や親族と離れて暮らす必要がある場合も多く、必要な保護を妨げるものではない。

 

では、「生活に困っている」ということ、つまり「最低生活以下であること」はどう定義され、かつ、どのような形で生活保護制度によって保護されるのだろうか。生活保護制度では「健康で文化的な最低限度の生活=最低生活」を8種類の「扶助」という形で定義している。一つずつ紹介しよう。

 

まず、「生活扶助」。

生活扶助とは文字通り、生活全般にかかる費用のことで、食事や洋服、光熱費やその他日常の消耗品などにかかるお金である。生活扶助はl類とll類とあり、l類は「個人消費」としてかかる費用で、個人の食事や被服費などを意味し、ll類は「世帯消費」としてかかるお金で、光熱費などの世帯を維持するためにかかる費用をあらわす。そして、生活扶助に関しては、障がいや妊産婦、母子など、本人や世帯員の状況により「加算」といってl類・ll類以外にプラスされる場合がある。生活扶助に関しては現金給付される。

 

次に、「住宅扶助」。

住宅扶助は「住まい」にかかる費用のことである。家賃や地代など安定した住まいを維持するために必要な費用を、基本的に実費分の現金給付にて支給される。後述するが地域や世帯員の状況によって上限額があり、その範囲の実費分である。

 

3つ目は「医療扶助」。

医療扶助は「医療」や「看護」にかかる費用のことであり、必要最小限の範囲でのサービスの現物給付が行われる。ちなみに医療扶助費は生活保護費全体の約47.2%にのぼり、最も大きな割合を占める(平成22年度生活保護費負担金事業実績報告より)。

 

4つ目は「教育扶助」。

生活保護を利用する世帯の子どもが義務教育を受けるために必要な学用品などの費用を、必要最小限の範囲で現金給付するものである。ここには教材費や給食費などが含まれる。

 

5つ目は「介護扶助」。

要介護または要支援と認められた方に対して、原則として介護保険と同等程度の範囲でサービスの現物給付を行う。

 

6つ目は「出産扶助」。

出産する際にかかる費用に関して、必要最小限の実費分の現金給付を行う。

 

7つ目は「生業扶助」。

仕事に就くために必要な費用の、必要最小限の実費分を現金給付。高等学校などに就学するための費用や就職の支度金(スーツ代など)なども含まれる。

 

8つ目は「葬祭扶助」。

亡くなった際にかかる火葬や埋葬、その他手続きの費用であり、必要最小限の実費分の現金給付が行われる。

 

そして、この8つの扶助以外にも「一時扶助」として、生活の状況、世帯員の状況によって一時的にお金が必要になった場合、実費分(必要最小限の範囲)支給される枠がある。(具体的には、やむを得ず引っ越しをする場合の引っ越し代や、住居がない方がアパートを借りるための初期費用など)。

 

このように、8種類の扶助と一時扶助において、国は最低生活を定義している。そして、それぞれの扶助に関して、年齢別・性別・世帯構成別・所在地域別に、「基準」を設けていて、その基準額、もしくは基準内の必要最小限の実費分が、その「世帯」の最低生活ラインとなる。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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