貧困の「現場」から見た生活保護

現場から見えること

 

さて、ここまで生活保護の制度の紹介と、私が現場で感じた制度の運用の問題、この間の生活保護を取り巻く動き、生活保護が担わされている領域などについて、本当に一部にすぎないが掻い摘んで紹介させてもらった。本当は書きたいことはまだまだある。

 

私は生活保護が万能な制度だとは思っていない。先述したが「扶養照会」の問題や、「世帯単位」の問題、本来他の社会保障制度で担うべき領域を担わされている問題など、さまざまな問題がある。

 

また、財政負担としても、生活保護利用者の急増により、平成12年度に1兆9393億円であった負担金が、平成23年度には3兆4235億円にも達していることも事実である。これで保護の捕捉率が2割~3割だというので驚きだ。(本来生活保護を受けることができる方の2割~3割しか生活保護を利用していないと言われている)。

 

しかし、日々さまざまな困難さを背負って生活困窮に陥る方の相談を聞いていて思うことは、「現場は待ったなし」ということだ。

 

貧困の現場は社会のひずみの縮図である。「雇用」から、「制度」から、「福祉」から、「家族」から、そして「地域」や「社会」から切り捨てられた彼らが、最後に辿り着くのが「生活保護」である。

 

「社会の仕組み」の不都合によって、「個人」がさまざまな生活上の困難を抱え、生活困窮に陥って生きづらくなってしまう状態が広がっている。私たちはそれを「社会の仕組み」でしっかりと受け止め、一人ひとりが自分らしく・人や社会とつながりながら生きていくことを目指していく必要がある。

 

私は彼らに、「財源の問題があるから生活保護はあきらめてくれ」とは言えない。私が出来ることは、今ある制度をどう使ったらその人の生活を支えられるか考えることしかない。また、生活保護を利用して「最低生活」で生活している彼らに、「申し訳ないけれども保護費を減らすから一食我慢してくれ」とも言えない。私は、彼ら一人ひとりの生活に困ったいきさつ、背景事情、現在送っている生活について知っているからだ。

 

ただもちろん、財源の話も大事だ。だからこそ、責任を持って議論に参加したい。当事者・支援者も同じテーブルについて、財源論にまで踏み込み、政局や感情、風潮に流されず、冷静で丁寧に話がしたい。私たちにできることは限られている。私たちは「いのち」を守りたい。でも、もちろん「持続可能な社会保障制度」を必要としている。ただ一緒に議論し、考えたい。私たちは現場の声を、ささやかではあるが、これからも発信する。

 

 

参考文献

生活保護手帳 2011年度版(中央法規)

生活保護手帳 別冊問答集2011年(中央法規)

生活保護関係法令通知集 平成23年度版(中央法規)

社会福祉小六法(2012)(ミネルヴァ書房編集部)

六法全書(平成23年度版)(有斐閣)

生活保護法的支援ハンドブック(日本弁護士連合会生活保護問題緊急対策委員会 (編集))

路上からできる生活保護申請ガイド改訂版(ホームレス総合相談ネットワーク)

 

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

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