2015.05.07

「いつもの自分とは違う」と感じたら――若年性認知症の実態と支援

小長谷陽子 医学博士

福祉 #若年性認知症#認知症介護

若年性認知症とは?

認知症は“物忘れ”という症状を起こす病気全体の総称であり、原因となる疾患は後述するようにさまざまである。認知症は年齢を重ねるとともに発症しやすくなるので、一般的には高齢者に多いが、年齢が若くても認知症になることがあり、65歳未満で発症した場合には「若年性認知症」とされる。

高齢者であっても若年者であっても、病気としては同じであり、医学的には大きな違いはないが、「若年性認知症」と名前をつけて区別するのは、この世代が働き盛りであり、家庭や社会で重要な役割を担っているので、病気によって支障が出ると、本人や家族だけでなく、社会的な影響が大きいからである。

本人や配偶者が現役世代なので、認知症になると仕事に支障が生じ、結果的に失職して、経済的に困難な状況に陥ることになる。また、子供が成人していない場合には、親の病気が子どもに与える心理的影響が大きく、教育、就職、結婚などの人生設計が変わることにもなりかねない。

さらに、この世代では、本人や配偶者の親の介護などが重なることもあり、そのような場合には、介護の負担がさらに大きくなる。介護が配偶者に限られることが多いので、配偶者も仕事が十分にできにくくなり、身体的にも精神的にも、また経済的にも大きな負担を強いられることになる。

若年性認知症の実態

平成21年3月、厚生労働省の研究班から発表された調査結果によると、全国の若年性認知症の人数は約37,800人であり、人口10万人当たりでは47.6人であった。65歳以上の認知症高齢者は、平成25年の発表では約460万人あるいはそれ以上ともいわれているので、それに比べればかなり少ない。

男性は人口10万人当たり57.9人、女性は36.7人と、男性の方が女性より多い。これ以前に行われた若年性認知症の調査(平成6年から7年)では、18歳以上65歳未満の認知症は約26,000人だったので、10年余で約1.5倍に増えたことになる。これは単純に若年性認知症の人数が増えたのか、あるいは医療機関を受診し、的確に診断される人が増えたのかは不明であるが、いくつかの要因が重なっていると考えられる。

若年性認知症の発症年齢は、平均すると51.3歳であり、50歳未満で発症した人の割合は約3割であった。認知症の重症度は、軽度(職業や社会生活には支障があるが、日常生活はほぼ自立)、中等度(自立生活は困難で、見守りあるいは介助が必要)、重度(日常生活動作全体にわたり、介助が必要)の3段階に分けると、それぞれ3分の1ずつであった。

愛知県で行った調査で把握された1,092人では、重度が41.4%と最も多く、次いで中等度が35.1%、軽度はわずか15.8%であった。若年性認知症というと、映画やテレビのドキュメンタリー番組などからは、元気で体力があるというイメージがあり、なんとなく軽度の人が多いと考えがちだが、実際にはそうではない。

基本的な日常生活動作(ADL)、すなわち、歩行、食事、排泄、入浴、着脱衣について、ほぼ自立している人は食事以外では半数以下であり、特に排泄、入浴、着脱衣では、全介助を必要とする人が3分の1以上を占めており、介護者の負担が大きいことがわかった。愛知県の調査でもほぼ同様の結果であり、若年発症の認知症は必ずしも軽度ではなく、むしろ介助を要する人が多いと言える。

原因となる疾患

日本の若年性認知症では、図1に示すように、脳卒中(脳梗塞や脳出血)が原因である血管性認知症の割合が多く、約40%であった。若年性認知症は男性に多いこと、脳血管障害が男性に多いことなどからこのような結果になったと考えられている。

図1
図1.若年性認知症原因疾患内訳

血管性認知症のタイプとしては、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血が多く、高齢者の血管性認知症の原因は脳動脈硬化症による多発脳梗塞が多いのに比べ、若年性認知症に特徴的である。

これは、脳血管障害の危険因子である高血圧や糖尿病などの生活習慣病に対して高齢者の知識や意識が高まり、予防や治療が適切に行われるようになったためと考えられている。

一方、高齢者に多いアルツハイマー病は、若年性認知症では全体の約4分の1程度であった。その他、頭部外傷やアルコール性認知症などが多く、原因疾患が多様であることも若年性認知症の特徴である。

また、男性では血管性認知症、アルツハイマー病、頭部外傷の順に多く、女性ではアルツハイマー病が最も多く、次いで血管性認知症、3番目は前頭側頭型認知症とレビー小体型認知症であり、頭部外傷の割合は男性の3分の1以下であった。アルツハイマー病は年齢に関わらず女性に多いので、このような男女差が出ると考えられている。

老年期認知症との違い

若年性認知症は、65歳以上で発症する老年期認知症と、医学的にはほぼ同じであるが、いくつかの特徴がみられる。すなわち、

1) 発症年齢が若い

2) 男性に多い

3) 異常であることには気がつくが、認知症と思わず受診が遅れる

4) 初発症状が認知症に特有でなく、診断しにくい

5) 経過が急速である

6) 認知症の行動・心理症状(BPSD)が目立つと考えられている

7)経済的な問題が大きい

8) 主介護者が配偶者である場合が多い

9) 親の介護などと重なり、重複介護となることがある

10) 子供の教育・結婚など家庭内での課題が多い

ことである。

<医学的な観点>

疾患という観点からみた若年性認知症は、第一に発症年齢が若いことである。平均の発症年齢は先に述べたように50歳代であり、まさに働き盛りに発症することになる。

進行が早く、経過が急速であるとされているが、客観的なデータはなく、必ずしもそうとは限らない。早期に発見できれば、適切な治療や対応ができることは他の疾患や高齢者の認知症と同じである。しかし、個人的な経験では、若年発症の認知症は、早期から失語などの高次脳機能障害が出やすいと感じている。

女性より男性に多いことも高齢者とは異なる特徴であり、そのために仕事に関することをはじめ、次に述べるようなさまざまな課題が生じる。近年、女性の社会進出が目覚ましくなってきているが、現在、若年性認知症に罹患している世代では、主として男性が働いている家庭が多いので、一家の大黒柱が病気になり、収入が減ったり、無くなったりすれば、大きな影響が出る。

物忘れによる仕事のミスや家事が下手になったことについては、本人や家族は「いつもの自分とは違う」、「どうも調子がおかしい」ことには気がつくが、 高齢者の場合と違って、これらの症状の原因が認知症であるとは思いつかず、受診が遅れることもある。

また、認知症特有の症状がみられない場合には、認知症とは関係の少ない診療科を受診して、診断が遅れる可能性がある。発症から診断がつくまでにかかる時間は高齢者より長い場合が多く、時にはいくつかの医療機関を経て、やっと診断されたという例もある。

しばしば、うつ病と診断され、薬が有効と聞くと、そのように信じてしまうこともあり、女性であれば年齢的にも更年期障害と診断され、治療を受けていた例もみられる。医療関係者の間でも、まだ十分に知られているとは言えず、職場での対応や、経済的支援、心理的な支援が最も必要な時期に正しい診断がなされていないのが現状である。

<BPSDは高齢者より現れやすいか>

認知症の人の介護では、中核となる認知機能の低下だけでなく、認知症の行動と心理症状、いわゆるBPSDの有無や内容、程度が大きく影響する。

若年性認知症ではBPSDが多いのかとか、BPSDが強く現れやすいのかという疑問が生じるが、BPSDの出現頻度は、若年性認知症全体では認知症高齢者と同じくらいで、約3分の2である。

内容的には少し違いがあり、高齢者では無関心やうつが多いのに比べ、若年性認知症では興奮が最も多く、体力があることから見かけ上強く出ているように感じられる。

さらに攻撃性、妄想も少なくなく、これらの陽性症状は、無関心やうつなどの陰性症状に比べて、家族や介護者の負担の大きな要因になるだけでなく、施設入所や入院のきっかけになると考えられる。

<家庭的な観点>

働き盛りで病気になり、休職や退職を余儀なくされる若年性認知症は、すでに退職した後の年代で発症する高齢者とは違い、経済的な問題が大きくなる。本人や配偶者の生活はもちろん、子供の教育にもお金が必要であり、さらに医療費や介護にかかる費用も少なくない。また、若年性認知症の場合は、主介護者は、ほとんどといっていいほど配偶者に集中している。

高齢者の場合は子ども世代、つまり、息子や娘、その配偶者が主介護者であって、本人の配偶者はどちらかといえば、従属的な役割である場合が多いが、若年性認知症の世代では、子供がまだ若かったり、幼い場合もあり、配偶者が介護を一手に引き受けることになる。

さらに、本人や配偶者の親世代の介護が重なると、時に重複介護となることもある。配偶者の介護と親の介護が重なり、その上、家事や育児もこなさなければならない状況になってしまう。

若年性認知症の家庭では、本人だけでなく、介護者となる配偶者も介護のために仕事を減らしたり、場合によっては退職を余儀なくされる。そのため、ますます経済的に困難な状況が深まり、介護の疲れ、病気や将来への不安など、本人も介護者も大きな負担を強いられることになる。

<社会的な観点>

定年という形で退職し、社会の第一線から退いた高齢者とは異なり、若年性認知症の人は、病気によりやむなく退職することになる。これは本人にとって不本意な退職であり、働く場を失ってしまうと、経済的な面の不利益ばかりでなく、社会から取り残された気持ちになり、自分自身の存在意義をも失ってしまうことになりかねない。

初期の段階であれば、体力も十分にあり、認知機能が低下していても、何らかのサポートがあればできることが多く、仕事をしたいと希望する人もいる。このような社会復帰への願望は高齢者に比べ、若年者ではより強いと考えられる。

働き盛りで、社会的にも重要な役割を果たしている人が、病気により退職したり、家庭での役割を全うできなくなることは、社会にとっても大きな損失である。

しかし、経済的な理由で何とか仕事を継続していたが、最終的には退職となった若年性認知症の人に話を聞くと、「(後から振り返って)仕事をしているときはつらかった、十分に仕事ができないし、何をしていいのかわからず、周りに迷惑をかけていると思うといたたまれなかった。でも妻子のことを考えて我慢していた、辞めてほっとした」と述べた。

このように、必ずしも仕事を続けたい人ばかりではないので、本人の意向や家庭の事情をよく理解する必要がある。

認知症介護研究・研修大府センターの取り組み

認知症介護研究・研修大府センター(大府センター)では、平成18年度から、若年性認知症の社会的支援をテーマに、愛知県における実態調査、「若年認知症ハンドブック」の作成(これは内容を充実させて、『本人・家族のための若年性認知症サポートブック』として平成22年に出版)、産業医への就労の実態調査、本人・家族の交流会の立ち上げ、福祉的就労の支援、若年性認知症デイケアモデル事業など、さまざまな事業に取り組み、成果をあげてきた。

厚生労働省では、平成20年7月、「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」をまとめ、認知症対策の5つの柱を掲げ、若年性認知症対策もその1つに挙げられた。その短期的対策の1つが、全国で1か所の若年性認知症相談窓口の設置であり、平成21年10月1日に大府センターに開設された。

また、平成24年6月には、厚生労働省認知症対策検討プロジェクトチームによる「今後の認知症施策の方向性について」が出され、これに基づいた平成25年度からの「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」では、若年性認知症施策の強化が大きな柱の1つに挙げられ、平成27年度1月に出された認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)でも、若年性認知症施策の強化が取り上げられている。

以下に、大府センターで行ってきた事業の中から、いくつかを紹介する。

本人と家族の交流会モデル事業

これは平成20年度から始めたことであるが、当時、若年性認知症はまだ十分に認識されておらず、本人にとっては社会的な居場所が不足しており、家族にとっては同じ悩みを持つ人と交流する機会がなく、孤立感を抱きやすい状況であった。そこで、本人の居場所作り、家族の交流の場を作ることが目的となった。

認知症の人と家族の会愛知県支部の協力を得て呼びかけたところ、若年性認知症の人13人とその家族が参加し、作業療法士、ソーシャルワーカー、介護福祉士、臨床心理士、医師などの専門職をはじめ多職種のスタッフが集まった。

内容は、本人には、カラオケや公園の散歩、お抹茶体験、クラフト作りなどから好きなものを選んでもらい、家族は家族同士で交流した。

参加者の人数を制限しなかったので、子供や孫までのさまざまな世代が集まり、賑やかな会になるとともに、子供世代同士の交流ができるなど、広がりをもつようになった。4回のモデル事業を終えた時点で、参加者が継続を希望し、「元気かい!」と名付けて現在も月1回活動中である。

精神障害者授産施設(現:就労継続支援B型事業所)での福祉的就労モデル事業

若年性認知症に対する支援の中で、認知症高齢者との大きな違いの1つは就労に関することである。現在の職場に継続して勤務できるのが理想であるが、現実には困難な場合が多く、退職した後に再び働きたい場合の行き先として就労継続支援事業(障害者授産施設)が挙げられる。

若年性認知症の人の就労に関して、大府センターで行った地域包括支援センターの調査では、相談のあった事例への対応で最も多かったのは、就労継続支援事業(障害者授産施設)への就労であった。大府センターでは、国立長寿医療研究センター(認知症疾患医療センター)のソーシャルワーカーと連携して、若年性認知症の人の福祉的就労を支援した。

施設における精神障害者と若年性認知症の人を比較すると、共通点としては、後天性疾患であり、病気の受容や認識が困難であること、現時点の自分に自信が持てないことなどがあり、相違点としては精神障害者には自立を促すために意図的に責任を課すようにするのに対し、若年性認知症の人の場合は認知機能低下によることに対しては責任を課すことができない点が挙げられる。

したがって、現時点の自分を受容し、自信を回復するような共通の支援に加え、若年性認知症の人に対しては、繰り返し声をかけて確認することや、出勤簿の記入などできないことは職員がサポートするなどの柔軟な個別対応が必要となる。

このため、施設では家族や医療機関との連絡を密にし、連絡事項は本人だけでなく、家族にも伝えたり、覚えることが必要な作業はさせないなどの配慮をした。

最初の1人が成功例となり、計4人の男性(いずれもアルツハイマー病)が、福祉的就労を体験した。

若年性認知症デイケアモデル事業

愛知県の若年性認知症実態調査の結果、介護保険サービスを利用している人が最も多く利用しているのはデイケア・デイサービスであった。しかし、本人や家族からは、高齢者ばかりで行きたがらないとか、プログラム内容が不満という声があり、職員からは、若年性認知症に対する対応法がわからないという声があった。

若年性認知症向けのデイケアプログラムの特徴として、

1)身体機能が保たれているので、簡単なプログラムでは満足できない

2)職歴により、好ましい作業と好ましくない作業がある(特に男性の場合)

3)認知症の特性として新しいルールを覚えるのは困難である

4)実行機能が低下しているので、手続きが少ない作業が望ましい

5)短時間であっても、作品が完成するなど達成感が得られる作業が望ましい

などがあげられる。

大府センターでは、男性4人、女性4人の若年性認知症の人とともに3年間、デイケアモデル事業を行い、その結果をまとめた「若年性認知症デイケア実践的プログラムの紹介:ほのぼのデイケア」を作成した。

このようにして大府センターを中心に、若年性認知症の人やその家族を支援する地域のネットワークが自然に出来上がっていった。大府市やその周辺には、医療、福祉・介護関連の施設や機関が多く、若年性認知症の支援に熱意のある人や実際にかかわっている人が集まっていたということも幸いした。

次は、若年性認知症支援に関する全国的な規模の事業を2つ紹介する。

若年性認知症コールセンター

すでに述べたように、厚生労働省では、平成20年7月、「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」をまとめ、認知症対策の5つの柱を掲げ、若年性認知症対策もその1つに挙げられた。

その短期的対策の1つが、全国で1か所の若年性認知症相談窓口(若年性認知症コールセンター)の設置であり、平成21年10月1日に大府センターに開設された。若年性認知症コールセンターの目的は、

1)誰でも気軽に相談できる

2)早期に認知症疾患医療センターや地域包括支援センター、障害者就労支援機関等へのつなぎ役になる

3)定期的な情報提供

4)利用促進のための普及・啓発、である。

相談員は、看護師、准看護師、中学・高校教員、介護支援専門員、認知症介護指導者などで専門的な研修を受けた10名からなり、3~4名が交替で相談に対応している。開設後も、随時、研修や現場見学を行い、若年性認知症に関する知識や情報収集に努めている。

若年性認知症電話相談の特徴として、1)男性からの相談の割合が多い(28.4%~39.1%)(平成22~24年若年性認知症コールセンター報告書より:以下同様)、2)本人からの相談も多い(26.8%~40.0%)、3)傾聴するだけでなく、情報提供や経済的な問題に関する相談が多い、4)介護対象者も男性が多い(52.6%~61.0%) ことが挙げられる。

若年性認知症ハンドブック

厚生労働省認知症対策検討プロジェクトチームによる「今後の認知症施策の方向性について」に基づいたオレンジプランでは、若年性認知症施策の強化が大きな柱の1つに挙げられた。

若年性認知症ハンドブックは、病気の発症初期の段階から、本人や家族がその状態に応じた適切なサービスを利用できるようにするために作成したものであり、医療機関や自治体窓口など若年性認知症の人や家族が訪れやすい場所で配布することを目的とした。

内容は、診断直後の相談窓口、雇用継続のための制度、退職に関連する制度やサービス、若年性認知症の医学的理解、本人・家族の心理状態、日常生活における工夫、医療機関の選び方、車の運転、介護保険制度、成年後見制度、相談窓口、サービス等の申請先など、具体的でわかりやすい記述になっている。

若年性認知症支援ガイドブック

ハンドブックを配布した機関で、若年性認知症の相談業務を行っている担当者等が、本人や家族から相談を受けて対応したり、支援をしたりする際に、ハンドブックの内容に基づいて、きめ細かく対応することが重要である。

そのために、平成25年度には、ハンドブックに盛り込んだ内容をさらに詳細に解説した、担当職員向けの「若年性認知症支援ガイドブック」を作成した。これにより、ガイドブックを活用して、若年性認知症の相談に対応する職員等に対する研修を行うことが可能となった。

これらの冊子をはじめ、若年性認知症への理解を深め、本人や家族、支援者のために作成したパンフレットは、若年性認知症コールセンターのホームページ (http://y-ninchisyotel.net/) で閲覧、ダウンロードが可能である。

おわりに

65歳未満で発症する若年性認知症に関しては、医療・介護分野のみならず、一般市民からも少しずつ認識されてきつつある。しかし、実際に診断された本人や家族にとっては初めての経験であり、戸惑いや将来に対する大きな不安がある。

若年性認知症の人は、適切な環境で生活することで安定した状態を維持でき、家族の不安や負担も軽減される。そのためには、医療機関、介護保険制度だけでなく、雇用、障害者福祉などのさまざまな既存の制度の活用とそれらの間の密な連携が必要である。

特に診断直後の支援は重要であり、必要な情報の提供と適切な助言、本人や家族の不安の軽減、今後の生活の方向性を示し、それにより、本人と家族の生活を再構築することが求められる。

【参考文献】

・朝田隆:総括研究報告.厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究)「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」平成18年度~平成20年度総合研究報告書.2009; 1-21.

・小長谷陽子, 渡邉智之, 小長谷正明.若年認知症の発症年齢、原因疾患および有病率の検討 ―愛知県における調査から― 臨床神経 2009;49(6):335- 41.

・小長谷陽子, 渡邉智之, 小長谷正明.若年認知症の行動と心理症状(BPSD)の検討 ―愛知県における調査から― 神経内科 2009; 71 (3): 313-9.

・小長谷陽子、柳 務.企業(事業所)における若年認知症の実態 ―愛知県医師会認定産業医へのアンケート調査から― 日本医事新報 4456: 56-60, 2009

・小長谷陽子編著.本人・家族のための若年性認知症サポートブック.中央法規出版、2010

・小長谷陽子、渡邉智之.愛知県における若年認知症の就業、日常生活動作および介護保険利用状況.厚生の指標 57(5): 29-35, 2010

・小長谷陽子、高見雅代、朝熊清花.若年性認知症に対する就労支援の実際.日本医事新報 4494: 60-64,2010
・小長谷陽子、田中千枝子.障害者福祉施設における若年性認知症の受け入れに関する調査研究.厚生の指標 61(1); 9-16, 2014
・小長谷陽子、鈴木亮子.若年性認知症電話相談の実態 ―若年性認知症コールセンター2年間の相談解析から― 厚生の指標 61(12); 36-42, 2014

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プロフィール

小長谷陽子 医学博士

昭和50年 名古屋大学医学部卒業。平成16年 認知症介護研究・研修大府センター 研究部長。国立長寿医療研究センター 物忘れセンター 神経内科(非常勤)現在、日本内科学会認定医、日本神経学会専門医・指導医、日本認知症学会専門医・指導医、日本認知症ケア学会評議員。日本医師会認定産業医。著作に、『本人・家族のための若年性認知症サポートブック』(中央法規出版)など多数。

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