知的障害者への情報提供――わかりやすい情報提供の実現に向けて

今後の展望――誰にでもわかる情報提供を目指して

 

2016年4月から施行される障害者差別解消法では、公的機関(自治体の役所・銀行・病院等)における合理的配慮が義務として位置づけられます。すなわち、そうした場所でわかりやすい情報提供や説明を求めていくことができるようになります。

 

今後は、知的障害者向けの情報提供のガイドラインのさらなる整備と検証を行い、わかりやすい情報提供とその方法を社会的に広めていくことが課題となるでしょう。

 

さらに、他の分野と連携することで「誰にでもわかりやすい」という形での情報提供の可能性は広がっていくと考えられます。例えば、日本語を第一言語としない外国にルーツを持つ方々向けの、平易な日本語表現による情報提供である「やさしい日本語」の研究及び実践があります。

 

「やさしい日本語」は、震災等の非常時の情報提供、各地方自治体のウェブサイトの「やさしい日本語版」(注8)の作成、平易な文章に加えふりがなや動画や辞書機能付きで時事情報の配信を行っている「NHK NEWS WEB EASY」(注9)など、外国人住民のニーズに対応する形で展開されています。

 

(注8)横浜市のホームページ「やさしい日本語版」 他に広島市などにも実践があります。

 

(注9)「NHK NEWS WEB EASY」は2012年4月から実施されている取り組みです。小・中学生や外国人の方々を対象とし、「やさしい日本語」によるニュースを一日5記事配信しています。

 

また、2020年開催予定の東京オリンピックでは多くの外国人の方も来日されることでしょう。公共性の高い情報が視覚的・文章的な双方において誰にでもわかりやすいかたちで提供されることは多くの意義が認められるのではないでしょうか。

 

情報化社会の進展につれ、今後の社会における情報提供のあり方も変化していくものと思われます。災害時等の生存にかかわる情報伝達など、緊急性や公共性の高い情報が誰にでもわかりやすく伝わる必要があることは言うまでもありません。

 

しかしそれだけでなく、生活全般において自分たちにとってわかりやすいものがあることや、一人一人の人生において重要な意味を持つ情報がわかりやすく伝えられることは、知的障害のある人の自立や自己決定のあり方自体に変容を促すものとなりえます。

 

一人一人が知りたいことを知ること、選択肢を理解し自分のことを決めること、知識や経験の幅を増やすこと。障害のない私たちにとって当たり前のことを、知的障害のある人々にとっても当たり前に保障していくべきではないでしょうか。わかりやすい情報提供はそれらに資するものであり、そして誰もが暮らしやすい社会を作るために社会全体で共有し促進していくべきものです。

 

 

付記 「わかりやすい情報提供のガイドライン」

 

【具体的に書く】

○難しいことばは使わない。常とう語(ある場面にいつもきまって使われることば)を除いて、漢字が4つ以上連なることばや抽象的な概念のことばは避ける。

○具体的な情報を入れる。

○新しい情報を伝えるときには、背景や前提について説明する。

○必要のない情報や表現はできるだけ削除する。

○一般的にはあたりまえのことと思われても、当事者にとって重要で必要だと考えられる情報は入れる。

 

【複雑な表現を避ける】

○比喩や暗喩、擬人法は使わない。

○二重否定は使わない。

○それぞれの文章に重複した「のりしろ」を付ける(指示語を多用せず、あえて二度書く)。

○名称等の表記は統一する。

 

【文の構成をはっきりさせる】

○手順のある内容は、番号をつけて箇条書きで記述する。

○大事な情報は、はじめにはっきりと書く。

○一文は一つの内容にする。内容が二つある場合は、二つの文章に分ける。

○話の展開は、時系列に沿う。

○接続詞はできるだけ使わない。

○主語は省かない。

 

【表記】

○横書きを基本とする

○一文は 30 字以内を目安にする。

○常とう語は、そのまま用いる。

○常とう語を除く単語には、小学校2~3年生までの漢字を使い、漢字にはルビをふる。

○アルファベット・カタカナにはルビをふる。

○なじみのない外来語はさける。

○漢数字は用いない。また時刻は 24 時間表記ではなく、午前、午後で表記する。

〇はっきりとした見やすい字体(ゴシック体)を使う。

 

(テキストのリライトに関する要点のみ抜粋)(注10)

 

(注10)なお、このガイドラインではテキストのリライトのポイントの他に、レイアウトや伝達手段についても記載されています。引用元については(注6)を参照してください。

 

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –



 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

・打浪文子「知的障害のある人たちと「ことば」」

・照山絢子「発達障害を文化人類学する」
・野口晃菜「こうすれば「インクルーシブ教育」はもっとよくなる」
・戸谷洋志「トランスヒューマニズムと責任ある想像力」
・濵田江里子「「社会への投資」から考える日本の雇用と社会保障制度」
・山本章子「学びなおしの5冊 「沖縄」とは何か――空間と時間から問いなおす」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(6)――設立準備期、郵政民営化選挙後」