ドイツを通して我が国の外国人介護士を考える

はじめに

 

周知のとおり日本の介護現場は、人材不足が顕著となり深刻な状況である。とくに、雇用状態が良好であるため、さらなる人材不足が加速化しており、介護施設ではニーズがあるものの、入居者への対応がかなわずベットを空けた状態となっているケースが珍しくない。

 

そこで、大きな期待が寄せられているのが外国人介護士の採用である。これまでEPA(経済連携協定:Economic Partnership Agreement)による外国人介護士受け入れ実績はあったものの少数の枠組みであった。しかし、2017年11月1日の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)の施行によって、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加された。これによって多くの外国人介護士が日本で働く可能性が高くなる。

 

その意味で、日本よりも先行して介護保険制度を実施しているドイツの現場を視察することで、筆者は外国人介護士の雇用において何らかのヒントが得られるのではないかとリサーチしている。ドイツも深刻な介護士不足にあり、外国人介護士の雇用を積極的に推し進めている状況だからだ。

 

もっとも、今回で10回目の訪独とはいえ(2018年2月18日~2月24日)、毎回、一週間の、現場を垣間見ながらの関係者ヒヤリングとリサーチであるため、ドイツの介護事情を充分に把握することは難しいことはご理解いただきたい。また、個人情報の関係で特定の事業所や人物の写真等は掲載できないことを申し述べておく。

 

 

1.ドイツでは「介護」職は不人気

 

現地の視察コーディネーターや介護事業所関係者に聞いたのだが、一般的にドイツの雇用情勢は良好であり、職種を選ばなければ誰でも「職」に就けるという状況である。統計的にも東西ドイツ統一以来、もっとも失業率が低下し3.6%だ(高田創「ドイツは経済が好調・低失業率でも賃金があがらない」みずほ総合研究所2017年12月21日)。このような経済情勢下において、EU圏内外からドイツに多くの短期労働者が出稼ぎにくる傾向にある。

 

また、ドイツ国内で常識化していることは、ドイツ人にとって「介護」職は不人気ということだ。とくに、このところ経済情勢が良好であるため、あえて「介護」の仕事に就く人が減少している。ある介護関係者が雑誌記事を見せてくれたのだが、「介護施設では人員不足が顕著で、排泄介助において何時間も便器の上に放置させていたことが問題となった」との内容であった。このことからも介護現場の深刻さが窺える。

 

 

2.在宅の外国人介護士をコーデネートする介護事業所

 

・コーディネートする事業者

 

筆者は、今回、2回目となる、外国人介護士をコーディネートする事業所を訪問をした。代表者の方は、私が3年前に訪ねた際のことを覚えており、丁寧に対応してくれた。ドイツでは在宅で介護保険サービスを利用できるが、必ずしも充分なサービスとはいえない。とくに、介護度が重くなると公的サービスのみでは立ち行かず、家族介護が欠かせない状況という。しかし、息子や娘といった家族は、日中、働いたり、独居高齢者も少なくなく、何らかの支援が必要だ。

 

そこで、一部、外国人の家政婦(介護士)を雇うことで、重い要介護度であっても家族介護に代わって支援を受け、在宅介護を可能にするケースが増えているという。取材した介護事業所は非常に良心的で、質の高い外国人介護士をコーディネートしている。

 

こちらでは基本、ドイツ語を話せる家政婦(介護士)しか紹介しないという。彼らは立場上家政婦であるが介護の仕事をする。その肩書は日本語で翻訳しにくいが、住み込みで約1か月間お世話をする保険外サービスである。1か月約2000ユーロで利用できる(20万円弱:現在、円換算にすると26万円となるが、ドイツでは100ユーロが1万円の感覚である、1ユーロが100円の貨幣価値である)。

 

要介護者や障害者などの年金給付としては、ケースにもよるが1000ユーロ以上の支給があり、場合によっては介護保険サービスを利用せず全額現金給付のサービスを受けることもある。この場合、年金と現金給付を併せると2000ユーロの金額を支払うことが可能だ。

 

 

・東欧から来た外国人家政婦(介護士) 

 

実際、重度の障害者が暮らす共同生活住宅(写真1)に派遣されている、東欧から来た外国人家政婦(介護士)に話を聞いた。その介護士は男性で、以前は自国でサラリーマンをしていたという。ドイツ語が話せるので、家政婦(介護)の仕事をするために出稼ぎに来ているそうだ。一か月間住み込みで24時間体制。業務は買い物、洗濯、食事づくり、掃除、介助などをこなす。基本、夜は眠れるが、場合によっては「介助」する時間もあるという。

 

 

写真1:障害者が共同で暮らす住宅

写真1:障害者が共同で暮らす住宅

 

 

自国の医師給与と比べても、ドイツに来て家政婦(介護士)として働くほうが3~4倍よい賃金が得られるという。1か月間ドイツで働いて1か月間自国に戻り、再度、ドイツに来て働くのが一般的だという。そのため2人組で交代しながら派遣されるケースもあるという。このようなサイクルによって仕事と休日のバランスを維持しているとようだ。

 

ただ、ドイツ語を話せる能力がないと、ドイツで家政婦(介護士)として働くことは難しいということであった。【次ページにつづく】

 

 

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