ドイツを通して我が国の外国人介護士を考える

2.外国人介護士を養成する介護施設

 

・移民を受け入れる

 

筆者は、ミュンヘン市内の介護施設を訪ねた(写真2)。ここの介護施設は、外国人介護士を養成しながら介護施設事業を展開している。一般的にドイツ人が介護の仕事に従事するケースは、マネジメントやリーダーなど管理職的な介護士が多い。視察した介護施設では、7割が外国人介護士で、3割がドイツ人介護士であった。

 

 

写真2:外国人介護士の養成・受け入れを押し進める介護施設

写真2:外国人介護士の養成・受け入れを押し進める介護施設

 

 

施設では、マダガスカル、北アフリカ、アフガニンスタンなど多くの外国人介護士を養成している。在籍するのは基本的に移民もしくは認定が降りた難民である。ドイツ連邦政府では、認定が降りた難民には政府から一定のドイツ語研修の機会が与えられ、費用も公費で保証されている。そのため、この介護施設の養成所に入学する外国人は一定のドイツ語力を身につけた外国人である。

 

 

・1年間の介護士養成

 

外国人介護士は、1か月間の半分は介護施設で実習という形態で介護に携わり(写真3)、残り半分は授業形式で講義を受けながら1年間のプログラムで介護士としての初期段階の資格(ヘルパー)を身につける(休日あり)。1年間のプログラムがしっかりと整備されているため、プロの介護士を育てることができると担当者は話していた。その後、さらに上級の資格を取得したいならば、働きながら学校に通い3年間のプラグラムが用意されているという。

 

 

写真3:同介護施設における入浴機器

写真3:同介護施設における入浴機器

 

 

ここの外国人介護士には養成中から給与が与えられる。年収ベースでの確認はできなかったが、養成中は毎月900ユーロ、資格取得後は1400ユーロの賃金体系であるという。さらに、3年間の上級資格を有すれば毎月2000ユーロ程度の賃金水準になるようだ。ただ、ミュンヘン市内は家賃が高いため、施設側は都市部近郊にアパートを借り上げて住まわせているという。

 

 

・外国人介護士に頼るしかない。

 

訪問した介護施設の責任者によれば、外国人介護士の採用は30年前から導入しており、移民の方などを受け入れているという。ただ、ここ10年間は、かなりの人手不足であるため、外国人介護士への採用に力を入れているということであった。

 

もはや、ドイツ人に介護の仕事が不人気である以上、外国人への養成および採用に力点を置かなければ、施設経営は難しいと話す。しかも、一部のドイツ人の介護士に比べれば、北アフリカ人などの介護士のほうが丁寧な対応をするなど、高齢者にも評判がいい。移民もしくは難民でドイツに来る人々は、高齢者を敬う気持ちがあり、多少、言葉がドイツ人よりも不都合であっても、ケアの面では評価が高いそうだ。

 

 

3.若い難民を支援する事業団体

 

筆者は、若い難民を支援する団体を訪問して、外国人の就労支援について話を聞いた。この団体は、ドイツ語を取得した難民に対して職業訓練校や企業実習などの橋渡し機能を果たす機関であり、若者難民を手助けしている(写真4)。活動費は市役所から補助金助成を受けている。主に、ソーシャルワーカーや社会教育主事の方々が支援に携わっているそうだ。

 

 

写真4:若い難民者の支援する団体のセミナー(就労支援)

写真4:若い難民者の支援する団体のセミナー(就労支援)

 

 

難民は経済的難民と政治的難民に分かれるが、戦争などで逃げてくる政治的難民は、長期間の滞在が許される。一方で、経済的難民の場合は強制帰国が課せられる場合がある。ただし、その判断が政府から決定されるまでは滞在が許されるので、少なくとも2年程度の滞在が許される。したがってその間、何らかの職業に就きたい意向がある。

 

多くの若い難民は、IT系の職、サービス業などへの就労を希望する。その意味では、介護職に就く人は少ないそうだ。とくに、シリアなどの難民者は基礎学力も高いためドイツ語取得力も高く、IT系の職に就く機会が多い。しかし、基礎学力が低い国から来る難民は、ドイツ語取得速度も鈍くドイツ人に不人気の職に就く傾向にある。

 

 

4.ドイツから学ぶもの

 

数年、ドイツの介護現場を視察しているが、年々、介護人材不足が深刻化している様相が窺える。日本と同様に自国の人々が介護職に就かなければ、外国人の採用に期待を託すしかない。その傾向は日本もドイツも同じである。

 

しかし、明らかに異なる点は、ドイツは移民政策導入の歴史が長く、どのように外国人労働者を受け入れるか、ノウハウが蓄積されている点である。しかも、ドイツ語教育(言語研修)は、公費でしっかりと保証しているため、それなりの受け入れ態勢が国家事業として整備されている。その意味で、ドイツにおいて外国人介護士は、しっかりと専門知識を身につける養成を受けることができる。しかも、ドイツでは移住者も本人が望めば長期的に滞在も可能であり、ドイツ人と同様の権利が保障されている。

 

一方で、日本の場合は、技能実習制度では公費負担は軽減されており、日本語教育などは送り出しおよび受け入れ機関の民間団体に託されている。外国人労働者への支援は、その財政負担が不安定である。しかも、現在、最長5年という期限付きの滞在しか認められていいない。

 

 

まとめ

 

その意味では、ドイツでは外国人を受け入れるのは、それなりの覚悟をもって対応している。対して日本では「ご都合主義」的な側面で、外国人介護士を受け入れている傾向にある。無論、外国人介護士は、日本人介護士よりも熱心で優秀な人も多い。しかし、そのような優秀な人材であればあるほど、日本以外の有利な国へ働きに行く傾向は無視できない。

 

今後、日本で本格的に外国人介護士を受け入れるのであれば、しっかりと人権を保障し、それなりの対応をしなければ、外国人介護士の確保・定着も難しいと考える。

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

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