ウェブ上労働相談≪高齢者介護編≫

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現行の介護保険制度のもとで、介護労働者がどういう条件で働き、どういう悩みを抱えているのか。都内の特別養護老人ホームでケアワーカーとして働く高木成未さんと、労働相談員でNPO法人POSSE事務局長の川村遼平さんが話し合った。(司会/大野更紗)

 

 

「新型」特養と「従来型」特養の人員配置について

 

大野 特別養護老人ホーム(以下、特養)は、介護保険で運営されている公的な施設です。しかし、そこで働く人たちがどのような業務形態をとっているのかということは、あまり広く知られていませんし、ケアワーカーはしゃべる機会がなかなかありません。そこで本日は、都内の特養で介護職員として働く高木さんに、介護労働の現状についてお話を伺っていきたいと思います。まず、現在働いている施設の人員配置について教えていただけますか。

 

高木 わたしの職場は、特養の中でも「ユニット型特養」というタイプに分類されています。「従来型」の特養に対して「新型」特養とも言われています。わたしの職場では、ひとつのユニット(生活単位)に、要介護の高齢者が9人暮らしていて、基本的に、日中は、介護職員1人が配置されています。

 

大野 新型特養と従来型特養の違いは何ですか?

 

高木 たとえば、人員配置の違い。全室個室なのか(新型)、相部屋もあるのか(従来型)。ひとつの生活単位/グループが、少人数か(新型)、大人数か(従来型)、といった違いがあります。

 

人員配置については、「3対1」(利用者3人に対し、介護職員1人)とよく言われますが、実際は、従来型特養の場合だと、たとえば、1フロアに、利用者30人~多いときは50人(ショートステイ利用者を含む)。介護職員は、時間帯にもよるんですけど、少ないときは1人ですし、多いときは、お昼の食事の時間帯とかは7~8人。早番とか遅番とかが重なったりしてうまくそろうときは。もちろんこれは施設によって違います。

 

大野 新型特養の夜勤はどの位ですか?

 

高木 わたしの職場だと18対1です。

 

大野 2ユニット(利用者18人)を介護職員1人で持つ、ってことですね。従来型特養の夜勤は?

 

高木 (上記の例でいくと、)利用者30~50人を介護職員1人でみます。

 

 

施設介護職に特徴的な3交代制

 

大野 ユニット特養は、全室個室の、もっとも贅沢と言われている……。

 

高木 んー(苦笑)。そうなのかな?

 

大野 施設ケアの中では一番贅沢な、一番資本を投下されている領域ですけれども……。9人を1人でみている……。介護職員の勤務時間帯はどうなっていますか。

 

高木 基本は、早番(7~16時)、遅番(13~22時)、夜勤(22~翌朝7時)の3交代制で、日によってプラスアルファで日勤(たとえば、8時半~17時半)などが配置されている場合があります。

 

日勤は、基準配置にプラスアルファとしていて、たとえば、休憩の交代要員であったり、食事介助や食器洗いや後片付けなどがメインです。朝食や夕食の時間帯が手薄にならないように、その時間帯に合わせて配置される場合が多いです。小さいお子さんがいる職員は、午前だけとか日勤(上記のような時間帯)だけとかで入ることもあります。

 

こうしたプラスアルファの勤務は、特定のユニットを担当せず、複数にまたがって動くので、わたしの職場では、フリーの職員という言い方をしたりします。ただ、こうした職員がまったくいない日もあります。

 

大野 このシフトを介護職員の中で組んで、「9対1」という人員体制を回していくわけですね。こういう業務形態は、施設で働く介護職の特徴だと思います。どうですか、川村さん。

 

川村 そうですね。そうだと思います。要は、24時間で組まないといけないので。

 

大野 たとえば飲食業とか、他のサービス業の労働相談を受けられていて、こういう業務形態をとっているところはありますか。

 

川村 均等にできる人がそれなりにいないと回せない職場って多分そんなにないんじゃないかと思うんですけど、つまり、コンビニも24時間ですけど、コンビニってこんなにしっかり分けていなくて、もっと適当というか、結構細切れだったりするんですけど、介護や看護ははっきりやってますよね。早番、遅番、夜勤って。

 

あと、保育もそうだと思います。病院付の保育で24時間対応しているところは割と近い印象ですね。サービス業以外でも、24時間稼働している工場などがあります。

 

シフトなんだけど、コンビニだと、たとえば希望を出して、それを組み合わせてつくるじゃないですか。

 

大野 「わたしこの日、2時間入りたい」っていう普通のバイトさんの感覚ですよね。

 

川村 そうですね。ただ、介護や看護はある程度決まっていて、そこに誰を入れるかって感じです。

 

 

残業なしには回らない

 

大野 残業はどの位ありますか?

 

高木 正社員の場合は、たとえば、委員会(事故防止・防災・感染予防のための委員会や、排泄・食事・入浴を検討する委員会などがそれぞれ設置されています)に時間外で出席します。行事関係では、大がかりなものとして、夏祭り、敬老会、新年会を準備・実行するための委員会があります。

 

他には、ユニットごとのミーティングが月に1度あって、それも時間外でやっています。それ以外にも、他の職種も含めた施設全体の会議、施設内での研修、会議の事前準備のための書類作成や、会議の後の議事録作成、家族に利用者さんの様子を伝えるための手紙を書いたりするのも時間外で行っています。

 

大野 基本的にミーティングなどは時間外ということですね。

 

高木 はい。勤務時間内は基本的には介助のことで手一杯で、それでも全然足りない位なんですけども……。

 

大野 介護職の人に話を聞いていると、残業が発生するときっていうのは、基本的にシフトが当てはめられているから、「何で残業が発生するんだ」みたいな話になるわけじゃないですか。非常に理論的にはね。だけど、実際は、たとえば、夜勤と早番で交代するじゃないですか。7時でね。そんな交代って、「はい、じゃあ交代」みたいに交代できないですよね?

 

高木 そのときにもよるんですけども、基本的に、交代するときに申し送りをするんですよね。

 

大野 その申し送りっていうのは? 申し送る内容、引き継ぐ内容は?

 

高木 利用者さんについての連絡事項。たとえば、夜だったら、寝てない人とか、眠りが浅い人は、日中気をつけなくちゃいけないとか。あまり寝てないから行動がいつもより遅くなったり、いつも立てる人が立てないとか、そういうことがありうるので、気をつけてくださいって伝えたり。

 

大野 申し送りは、基本的にどういう形態で残すんですか? 文字で書くんですか? それとも口頭で?

 

高木 口頭で言うのと、わたしの職場はパソコンで記録類を管理しているので、それも勤務が始まる前に来て、見ることになっています。まあ、わたしはギリギリに来るので見る時間はないんですけど……。早めに来ても、他の職員がパソコンを使っていて見られないこともあります。

 

川村 結局、残業なしには、これ、回らないということですね。

 

高木 そうですね(苦笑)。

 

川村 口頭で伝えるのに勤務が重ならないわけにいかないですよね。

 

高木 そうですね。なので、たとえば、夜勤から早番だったら、一応6時50分から申し送りを始めます。細々とあります。「家族が来たら、これを渡してください」とか、「家族からこういう食べ物を預かったので、早めに出してください」とかも含めて。

 

本当は記録を見ていければいいんだけども、見られない場合もあるから、口頭で改めて全部言って、できるだけ抜けがないようにしています。あと申し送りの内容としては、夜間転んでしまっただとか、熱が出たとか。

 

大野 夜間の転倒……。熱……。あるいは救急搬送したとか……?

 

高木 はい、そういう場合も。80代、90代と高齢の方が多く、病気も抱えているし、昨日まで元気だったのに急に亡くなったとか、そういうこともあるので、些細な変化も申し送って、「普段とは様子が違うよ」とか、「食事を食べる量が少ないですよ」とか。食事量も、所定の用紙に書いてはあるんだけども、ちょっと気になる場合は、あえて口頭で言ったりもするし……。

 

申し送りが終わってからも、やり残したこと ――たとえば、利用者さんの対応や後片づけ、掃除、記録など―― をやったり、先ほど話したような事務的な仕事をしたりする人もいます。また、場合によっては、救急搬送の際の付添いもあります。これは、基本的には家族が病院に到着して引き継ぐまで対応します(ただ、家族が遠方にいる場合、到着するまでの間、長時間にわたって付き添うときもあります)。

 

それ以外にも、職員が調子を崩したりケガしたりして、早退したり休んだりしたときに、その職員の代わりに働くことも、まれにあります(たとえば、7時から22時まで)。これは、とくに、年度末に、介護職員の退職が重なりやすいのに加え、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症の流行時期に、職員自身が急に出勤できなくなる場合があります。毎年のことだから、会社も分かっていそうなものですが、手を打たない。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

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