参議院選挙を障害者政策の観点から考える ―― 各党の選挙公約をもとに

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2006年、国連では、国際障害者権利条約が採択された。その後、多くの国がこの条約採択を受けて、国内法の整備の検討を行い、批准にこぎつけてきている。

 

日本では新たな国内法整備にむけての動きは鈍かったが、2009年の民主党への政権交代時に、そのマニュフェストに批准にむけての国内法整備を明記したこともあり、民主党はこの権利条約の内容を反映させた障害者政策の改革に乗り出し、内閣府に障害者制度改革推進本部が設置され、障害者制度についての見直しが行われることとなった。

 

その後、障害者基本法の改正(2011)、障害者総合支援法の制定(2012.その内容は公約とは大きく異なるものとなってしまったが)が行われ、最終的に2013年、参議院の解散直前に、新たに障害者差別解消法(2016年4月施行予定)が成立した。

 

障害者権利条約のもっとも重要なテーマは、障害の有無を超えた共生社会の実現であり、障害者の「他の者との平等の権利」を社会生活のすべての領域において保障するシステムを構築することにある。そのために障害があることによりこうむる直接、間接的な差別を明確に規定し、それを禁止する法制度は必要不可欠であり、近年、諸外国も障害者差別禁止の法体系を整備している。

 

日本でも、ようやく障害者差別解消法が成立したことは、今後の障害者政策にとって、大きな一歩であることは間違いない。ただし、法律のもっとも重要な点となる「差別の規定」や、それを監視するシステム等の実質的な内容については、参議院選挙後に検討されることとなっている。また、障害者総合支援法についても、障害者福祉制度見直しの重要な項目については、法施行後三年を目途に検討されることとなっているが、いまだにその検討は行われていない。その意味で、今回の選挙は、障害者制度改革の流れがどうなっていくのか、また具体的にどのように実行されていくのかが問われている。

 

ここではまずは以上のような状況を踏まえて、障害者政策を各党がどのように公約で述べているかを概観する(すべての政党ではなく、後に述べるJD(日本障害者協議会)のアンケート対象となった9党に限定する)。

 

 

各政党の公約比較

 

■自由民主党

 

障害者政策に限定した項目はない。

 

「持続可能な社会保障制度の確立」の具体的内容として、「障害者の日常生活及び社会生活を支援し、豊かな共生社会を創るため、『障害者差別解消法』の着実な推進、障害福祉サービスの充実、障害者の就労支援を進めます」とある。
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/sen_san23/2013sanin2013-07-04.pdf

 

 

■民主党

 

社会保障の小項目に「障がい者」が規定され、以下の記述がある(民主党は公約について、点字版、白黒反転、テキスト版、音声版など、障害に対応した情報保障をもっともきめ細かく用意している点を明記しておく)。

 

 

●障がいのある人のニーズを踏まえ、障害種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、安心して地域で自立した生活ができるよう、しくみづくりや基盤整備、人材育成に取り組みます。

 

●障がいのある人もない人も共に生きる共生社会を実現するため、民主党が主導してきた「障害者差別解消法」の成立を踏まえ、その実効ある運用をめざすとともに、「国連障害者権利条約」を早期に批准します。
http://www.dpj.or.jp/global/downloads/manifesto2013.pdf

 

 

■公明党

 

「さらにきめ細やかな社会保障の充実と教育の改革」の項目で障害者政策について触れている。また難病については「難病対策の抜本的な改革」として特出し、難病対策総合支援法の制定などを明記している点が特徴である。

 

 

【年金の機能の強化】
低所得者への年金加算の拡充
新たな福祉的給付として実施される実質的な年金加算や免除期間加算の効果を検証し、より一層の拡充による低年金・無年金対策に取り組みます。その際、あわせて障害基礎年金の加算など所得保障をより充実させます。

 

【教育の改革】
障がいのある子どもへの特別支援教育
障がいのある者とない者が共に学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方=「インクルーシブ教育システム」を構築し、特別支援教育の充実を推進します。小学校・中学校・高等学校等に特別支援学級の設置を推進するとともに、特別支援教育支援員の拡充を進め、国連の障害者権利条約の批准を推進します。

 

教育ニーズの多様化への対応(電子黒板やデイジー教科書の普及)
教育ニーズの多様化に対応するために、電子黒板をはじめとしたICTを利用した教育プログラムを普及させます。また、特別支援教育でのマルチメディアデイジー教科書の導入を促進するなど、教科書のバリアフリー化を進めます。

 

難病対策の抜本的な改革
難病対策を抜本的に改革し、難病で苦しむ患者を社会で支える体制を築き上げます。そのため、将来にわたって安定的な難病対策が施されるよう、医療費助成の対象疾患の拡大、医療体制の整備、効果的な治療方法の開発・研究の促進、就労支援の拡充・強化、福祉・介護の充実などに力強く取り組むための「難病対策総合支援法(仮称)」を早急に制定します。医療費の負担軽減については、医療保険における高額療養費制度の見直しとあわせて、適切な措置を講じます。
http://www.komei.or.jp/campaign/sanin2013/manifest2013/index.php

 

 

■みんなの党

 

「子育て、介護で未来に希望を」の項目に障害者政策が具体的に述べられている。

 

 

障がいがハンデにならない社会へ
1) 障がい者支援を家族から社会による扶助に切り替え、障害者自立支援法違憲訴訟の和解の基本合意に沿った障がい者施策を目指す。
2) 障がい者の就労支援は、国連の障害者権利条約に則り、雇用における合理的配慮がなされるよう関連施策を充実させ、在宅ワークの活用等も積極的に行う。
3) 災害時に障がい者を孤立させないよう、災害時要援護者リストを整備し、地域NPOや教育・医療機関とも連携。緊急時に共助が行える体制づくりをする。また、自然災害の多いわが国において必要とされる、災害時の緊急医療に対応できる医師・看護師・民間ボランティアを育成する。
http://www.your-party.jp/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%802013%EF%BC%88%E5%85%A8%E4%BD%93%E7%89%88%EF%BC%89.pdf

 

 

■生活の党

 

「社会保障・雇用、格差をなくして国民が助け合う仕組みをつくる」の項目で障害者支援について述べられている。

 

 

障がい者支援の充実
障害者総合支援法の見直しに向けて、制度の谷間を無くすため、障害支援区分などに対し、当事者の意見を取り入れる。
http://www.seikatsu1.jp/political_policy

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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