精神障がいを抱える親と暮らす子どもたちに必要な支援とは

親&子どものサポートを考える会で行っていること

 

私たち『親&子どものサポートを考える会』[*7]では、これらの子どもの思いを受けて以下の活動を行っている。

 

[*7] 親&子どものサポートを考える会:http://www.oyakono-support.com/

 

孤独な子どもたちを繋ぐ活動として、月1回の頻度で、子どもの立場の者が集い、語り合う場(三重 子どもの集い・交流会)を開催している。親の存在をカミングアウトしてこなかったこれらの子どもは、同じ境遇の者と知り合う機会もなく、自らの生活状況や思いを語る場を持たなかった。語り合いの場で、同じような体験をしていた仲間がいたことを知り、また自分の思いや体験が受け止められる経験を経て、「私だけじゃなかったんだ」、「私の感じ方で良かったんだ」と感じ、自己否定的だった捉え方を和らげることができていた。

 

また、“普通”にこだわり、人に合わせてきた子どもたちが、同じ境遇の仲間とやり取りをすることで、違いがあること・違いがあっても良いことに気づき、「自分で枠にはめていたんですね」との言葉も聞かれるなど、自分自身の気づきにもなっていた。

 

しかしながら、こうした語りの場が開かれているのは現在、三重と京都[*8]の2か所しかなく、参加したくても参加できない人も多い。そこで、私たちの会では年に一度、交通の便の良い都市(2013年東京、2014年は名古屋の予定)で『全国版 子どもの集い・交流会』を開催したり、参加したくてもできない方が他の人とやり取りできるように、ホームページ内に掲示板を設けたりしている。

 

[*8] 公益社団法人京都精神保健福祉推進家族会連合会:精神障害の親を持つ子どもの集い

 

子どもたちの思いを伝える活動として、一般市民を対象とした講演会を開いたり、子どもを身近で支える立場の者(学校の教員や保育士、地域の民生委員・児童委員、医療・福祉機関のスタッフなど)を対象とした支援者研修を企画し、開催している。こうした研修を通して、親・子の理解を図り、親子が困った時に支援を求めやすく社会になるようにと考えている。

 

親が調子を崩すと心配で子どもが離れられなくなるように、こうした親・子への支援は、親支援・子ども支援が同時に行われないとうまく行かないように思う。そのため、今年5月に親支援・子ども支援に携わる者の情報交換会を開いた。私たちの会もだが、それぞれの機関でできることには限界がある。支援を行き渡らせ、親・子が安心して支援を求められるようにするためには、支援者同士が繋がり、情報交換・連携しながら進めていくことが不可欠だと考えたからだ。たった1回の情報交換会では何ができたかわからないが、周りの理解が得にくく、大きな変化が見えない状況に支援者も焦り、不安や孤独を感じる。この情報交換会はそのような支援者の孤独を癒し、他も頑張っているのだから自分たちも頑張ろうと支援者の士気を高める効果があったのではないかと思う。

 

 

子どもの発達や状況に応じた支援を……

 

親支援・子ども支援は同時にと記述したが、子どもへの支援は子どもの認知発達や状況に合わせることが必要だと考える。小学校低学年ぐらいまでの子どもは、親子で過ごす時間も多く、家庭内の状況を違和感なく受け止めていることが多い。この時期は家庭を訪れる機会のある訪問看護師や地域の民生委員らが、親・子に話しかけ、親が支援者に頼る姿に触れておくと同時に、自分自身に関心を持たれる体験をしておくと、将来、困難に遭遇した時に、相談してみようという気持ちになり、支援が求められるのではないかと思う。

 

小学校中学年~中高校生の年代になると、友だちの家とは異なる家の様子に、障がいを持つ親のことを隠そうとする気持ちが生じる。何も問題がない素ぶりを見せながらも、気にとめて欲しい、気づいて何とかして欲しいという思いも持っている。不用意にクラスで声をかけたりすることは、人に知られたくないという子どもの気持ちを侵害することになるため避けなければいけないが、子どもが困った時に支援が求められるようにするためには、日頃から関係が取れている身近な支援者が、子どもに関心を示し、応援する気持ちで見守り続ける関わりが必要であると思う。

 

また、この年代になると、様々な症状を示す親の行動が何であるのか、親の身に何が起こっているのか疑問に感じる。多くの子どもが「何が起こっているのか、本当は知りたかった。きちんと説明して欲しかった」と言われたように[*9][*10]、何も説明されないことが子どもを不安にさせる。現在、子ども向けに作られた親の病気のことを学ぶための物は、小学生年代の子ども向けに「あなたのせいじゃないんだよ」、「様々な症状は病気によるもので、治療すれば治るんだよ」と伝えるプルスアルハ[*11]の制作する絵本のみである。子どもの病気のことを知りたいというニーズに応じるための準備が必要であるように思う。

 

[*9] 土田幸子(2013):『親&子どものサポートを考える会』を設立して,統合失調症,6,41‐49,医薬ジャーナル社.

 

[*10] 土田幸子(2013):親が精神障がいである子どもたちへの生育支援,精神科臨床サービス,13(3),337‐340.

 

[*11] プルスアルハ:http://pulusualuha.p2.bindsite.jp/

 

子どもが自分の体験や思いを語ろうと思えるようになるのは、ある程度、状況が客観視できるようになった成人前後からのようである。親から自立し、社会と触れる中で感じる疑問や葛藤を他の人はどのように感じているのだろう?この生きづらさは何に由来するのだろう? と感じた時に、同じ境遇の他の人の思いに触れたくなるようである。三重で行っている子どもの集い・交流会がこの役割を果たし、子どもの頃の満たされなかった思いや傷つきを癒す場になっているように思う。

 

このように子ども支援は、子どもの成長や感じ方、ニーズに合わせながら、寄り添うことが必要なのだと思う。

 

サムネイル「parent and child」skyseeker

http://www.flickr.com/photos/skyseeker/1345190119

 

 

 

 

 

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