アベノミクスを成功させるために、消費税増税を先送りせよ

出口戦略を考える時期ではない

 

飯田 「さっさと出口戦略を立てろ」という声もありますね。アメリカだってリーマン以降拡大させ続けてきた金融緩和に関して、ようやく資産買入れプログラムを終わらせることになりました。しかも金利については、相当の長期にわたってゼロを維持したいと言っている。日本はなにをそんなに急いでいるんでしょうか。

 

山本 経済の実態をじっくり見ていないんだと思いますね。7-9月期の数字がどうなるか、まだわかりませんが、GDP成長率が3.8%を切ったら1-6月期の平均に比べてマイナスですからね。

 

飯田 民間予想の中央値だと2%台のようです。

 

山本 3%きるんですか……。このまま続けるとスタグフレーションになってしまいますよ。

 

飯田 しかも官製の……。

 

山本 そんなことやるわけにいかない。おそらく今年度の成長率はゼロでしょう。来年度もゼロ。予定通り増税したらマイナスでしょうね。2015年にプライマリーバランスを黒字化するなんて無理でしょう。だったら、消費税増税は2017年4月に実施して、それまでの計画をしっかりつくるほうがいい。

 

飯田 物価が上昇しているのだから、金融緩和は早くやめるべきだという議論もありますが、消費者物価指数増加分の3.3%のうち、2.1~2.2%は消費税増税によるものです。企業物価指数(CGPI)も、3.7%増加のうち2.7%が消費税。つまり物価上昇のほとんどが消費税なんですね。

 

この景況だと、おそらく増税分が、そのまま中小企業や地方の粗利減少に結びついていると思います。

 

山本 結びついていますね。どうも消費税の滞納が増えているようですよ。ようは払えない。資金繰りでたいへんですから。

 

 

心情倫理的な増税強硬派?

 

飯田 景気の立ち上がり初期の段階で増税をして失敗したとなると、典型的なイギリスのパターンです。イギリスの場合はその後も継続された強力な金融緩和のせいで多少は緩和された側面はありますが、回復がアメリカに何歩も遅れた原因はおそらく増税によるものでしょう。

 

イギリスの例がある。その上、身をもって経験もしている。ここまでソースがそろっているのですから、君子は豹変すであって欲しい。それでもなお予定通り増税をするとなると、これは「言ったことをやる」という政治家の美学みたいなものによるのでは、と……いぶかしんでしまうのです。一体全体増税強硬派の根拠はどこにあるのでしょうか。

 

山本 どうも「財政健全一本!」という感じですね。経済は普通の循環状況なら、上がったり下がったりするだろう。消費税増税は決めたことなんだし、財政を健全化しないと国際信用を失ってしまう、ということなんですね。これは経済実態を客観的に把握した上での議論じゃない。心情倫理的なんですよね。結果倫理や責任倫理じゃない。「財政健全化を貫きます」と言っていれば、経済が駄目になってもいいんだって話す人までいて……。

 

飯田 いやあ……(苦笑)。日本らしいですよね。

 

山本 腹切り精神だな、こりゃあ。われわれが考えなくてはいけないのは国民生活がどうなるか。多くの国民の生活が守られて豊かになることを基準にしないといけませんよ。

 

 

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安定化政策としての消費税増税

 

飯田 消費税増税を先送りするとなった場合、どのような手続きになるのでしょうか。

 

山本 いまの法案に書いてある「2015年10月から」を「2017年4月から」に直せばいいだけですね。そのための改正案を提出すればいい。もちろん議論はいろいろと起きるでしょうけど。

 

飯田 附則を使うよりは本文を直す、と。

 

山本 附則を残しておけば、リーマンショックのような事態になったときに延期を検討できます。順調に景気がよくなっていたらそのときは増税すればいい。

 

飯田 山本議員もぼくも、いずれ消費税増税をしなくてはいけないと考えています。長期的な財政再建のためには、安定税源として消費税が重要になってくる。ようはタイミング論なんだと思うんですね。

 

山本 だから財務省には「急がばまわれ」と言っているんだけどねえ。

 

飯田 フィリップス曲線は時代遅れだという人もいますが、おおよその目安を考えるには非常に便利です。インフレ率が2%のとき、失業率はだいたい2.5%くらいになるんですね。消費税分を除くコアコアCPIが1年1%半ば上昇、総合CPIが2%で、完全失業率が3%くらいなら維持不可能な水準ではない。むしろ金融緩和の効果が十分あらわれて、給料も上がり始めると、インフレにブレーキをかけるために消費税増税をしなくてはいけない局面がいずれはでてくる。

 

 

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山本 オリンピック・パラリンピックもあるから、1年半もすればそういうことも出てくるでしょうね。

 

飯田 安定化政策としても、消費税増税の話は出てくると思うんです。だから性急に決めるのではなくて、最も利益のあるタイミングを見計らうのが必要なんだと思います。

 

 

増税強行で安倍内閣は潰れてしまう?

 

飯田 増税に対してストップをかけようという政治的な動きも強まっていますが、自民党内で、増税延期の機運はどのくらい高まっているのでしょうか。

 

山本 「アベノミクスを成功させる会」で議員が45名、代理が37名。今後の会合に参加したいという声もかかってきていますから、かなり局面が変わって来ているんだと思いますね。とくに世論調査で7割が増税に反対している中で、選挙区に帰った1年生議員は、肩身の狭い思いをしている。増税が自民党にとっていい風になるとは思えませんから、大半の人はやめてほしいと思っているんじゃないですか。

 

飯田 公明党はいかがでしょうか。支持層に中小企業経営者や自営業主が多いので、本来なら消費税増税をまっさきに反対するものだと思うのですが……。

 

山本 低所得の支持者も多いからね。今後本田参与を呼んで勉強会を開くみたいですから、これから機運が変わってくるかもしれない。

 

野党はねえ……民主党がよくわからない。

 

飯田 (苦笑)。

 

山本 維新の党、生活の党、次世代の党は反対していますね。

 

飯田 みんなの党ももともと増税反対ですね。となると、消費税増税を賛成しているのは、自民党と公明党の中にいる美学派といいますか、「決めたんだからきちんとやる」人たち、あとは民主党ということになりますね。

 

安倍首相ご本人、菅官房長官、そして閣僚をされている先生方はどのような反応をされていますか。

 

山本 菅さんは延期したいと思っているんじゃないかなあ。安倍さんは中立を保っていますね。甘利さんも慎重派かなあ。麻生さんは立場上、増税すると言わざるを得ないでしょう。他の大臣はわからないです。うーん……増税を強行したら安倍内閣は潰れてしまうとぼくは思うんですけどね。

 

飯田 ぼくもそう思います。

 

今後の動向を見守りつつ、山本議員のご活躍に期待したいと思います。今日はありがとうございました。

 

(10月30日 衆議院第二議員会館にて)

 

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