復興から日本の災害支援をアピールする 

東日本大震災支援では、市町村や自治体の活躍が随所でみられた。とくに住田町は、震災当日の晩には陸前高田市や大船渡市といった沿岸部に支援物資を送り、その迅速な対応が非常に注目された。なぜそのような素早い対応が可能であったのか。小さな自治体だからこそ可能であった支援とは何か。そして住田町の特徴的な取り組みである木造仮設住宅のメリットとは何か。経済学者・飯田泰之によるインタビューをお送りする。(構成/金子昂)

 

 

木造仮設住宅が生まれたきっかけ

 

飯田 復興アリーナでは東日本大震災の経験を、次の震災に活かすべく様々な情報を集積しています。今日は、復興支援のなかでも近接自治体によるバックアップの方法などについて、住田町の取り組みを参考にさせていただきたいと思います。

 

さっそくお話に入らせていただきますが、三陸地方の沿岸部に取材に行くと、後方支援では住田町が一番早かったという声を聞くことが多いです。

 

多田 だと思います。震災当日の晩には、陸前高田市と大船渡市に食料や水、衣料品や日常雑貨を届けました。

 

飯田 かなり素早い対応ですよね。そして住田町への感謝の声を聞くことも多い。

 

そのなかで、報道で頻繁に取り扱われているのが、住田町の木造仮設住宅です。もともと仮設住宅を供給することを考えて震災前から準備をされていらっしゃったと伺いましたが、どんなきっかけで木造、オリジナルという、住田独自の仮設住宅のアイディアは浮かんだのでしょうか。

 

多田 きっかけは自衛隊のサマーワ派遣をテレビで見たことです。自衛隊は、砂ぼこりのなかで1、2年ものあいだテントを張って活動をしています。それを見ていかがなものかと思い、半日で建てられる木造仮設を住田町で提供しようと自衛隊に提案したんです。ただし、無料で提供するのも悔しいので、「住田の家」と書いて、報道のたびに住田町をアピールできるようにしました。ただ、この提案は「コマーシャルベースのものは扱えない」ということで自衛隊に断られてしまいましたが。

 

その後、四川大地震とハイチ大地震が発生した際に、被災者が仮住まいもなく避難生活を送っていると知って、レスキューや食糧支援だけでなく、木造仮設住宅の提供も行えば災害支援として喜ばれると思いました。さらに、もしその住宅に日の丸とJAPANという文字を付けておけば、世界中に、日本の災害支援をアピールできると思ったんです。

 

飯田 震災以来、岩手県、なかでも沿岸部の方とおつきあいさせていただくことが多いのですが、なんといいますか本当に控えめな方が多いですね。企業名はもちろん、町や地区の名前をアピールしたり、特産品を押し出す雰囲気が感じられない。いいものがあっても知名度が無い状態です。だからこそ住田町の取り組みはとても貴重だと思います。

 

多田 確かに控えめな方は多いですね。でも住田町最大の資源である木材を売り込むためにはアピールが必要でしょう。

 

 

小さな自治体のスムーズな意思決定

 

飯田 あれほどまでに素早い対応はやはり以前から備えていたからこそだと思います。

 

多田 実は3月22日に、木造仮設住宅の図面と提案書を持って内閣府の政務官に会うことになっていました。日本では仮設住宅をプレハブで作ることが常識になっていますが、これはもったいない。日本の豊富な木材を活用しない手はないと思っていて、震災前から国に話をしていたんです。ですから設計書が7、8割は完成していました。

 

さらに、私は「構想は頭のなかにあります」なんて言わずに、考えていることをすぐ口に出してしまうので(笑)。住田町の製材工場、集成材工場、プレカット工場、工務店は、私が考えていることをすでに知っていました。だから震災後に「行くぞ!」と声をかけたら「町長なら言いだすと思っていた」と。彼らが一気に流れを作ってくれたからこそ素早く対応できたのだと思います。

 

飯田 国からの指示はなく、独断で仮設住宅の提供を決められたわけですよね。やはり住田町という小さな自治体だからこそ意思決定がスムーズだったのでしょうか。

 

多田 そうですね。

 

行政のルールに従った場合、予算をとって、設計を発表し、工事をすることを議会に説明して予算を計上し、入札をかけて、契約議決をいただいて、ようやく着手することになります。でもそんなことをしているうちに4、5ヶ月も経ってしまう。それは本当の避難者救助ではない。さらに仮設住宅は本来、被災自治体が作るルールになっていました。でも陸前高田市や大船渡市が自分たちで仮設住宅を建てられるはずがありません。

 

そこで本会議ではなく、議会全員協議会で説明をして、専決処分しました。議員も承諾をしてくれました。ただ条件が2つあって、1つは「手抜きしたと思われないよいものを作る」こと。もう1つは、「住田町はよくやってくれたとみんなに感謝される」ことをすること。それを守れば、うるさいことはとやかく言わない、と。これが小さな自治体の良さでしょう。住田町は、会派対立もなければ、当局と議会の対立関係もありません。12人の議員と私を含めて13人で一緒に町づくりをしています。

 

 

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