2019.12.09
避難指示が出た地域に住む人の外部被ばく線量は?
東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線被ばくを避けるため、福島県の原発周辺地域の住民に、国や町村による避難指示が出されました。避難指示が解除された地域では、帰還したり移住したりした人々が生活しています。
避難指示が出た地域に住む人々は、生活の中で、どの程度の放射線外部被ばくをしているのでしょうか?
2019年2月、坪倉正治氏(福島県立医科大学、南相馬市立総合病院)らのグループが、避難指示が出た地域の居住者⼀人ひとりの外部被ばく線量を測定しました。分析の結果、避難指示が出た地域に居住する人の放射線の外部被ばく線量は、健康に影響するレベルにないということがわかりました。
測定は、原発事故後に国や市町村による避難指示が出た浜通りの被災12市町村(南相馬市、飯舘村、葛尾村、川俣町、田村市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、川内村、広野町)のうち、2019年2月に帰還がはじまっていた10市町村(大熊町、双葉町以外)に実際に住んでいる方239名を対象に行われました。(加えて、調査当時大熊町に住んでいた東電社員の線量も測定・分析しました。)
期間は2019年2月12日から25日までの2週間です。測定にはD-shuttle(1時間ごとの個人の外部被ばく線量を測定する機械)が使われました。また、外部被ばく線量の測定に併せて、一人ひとりの実際の生活上の行動も把握しました。
この測定と分析の結果、
論文を発表した研究者グループは、避難指示が出た地域に居住する人の放射線の外部被ばく線量について、「2019年には既に非常に低く、科学的にも放射線被ばくによる健康問題を懸念するレベルにない」としました。
参考
Shuhei Nomura, Michio Murakami, Wataru Naito, Tetsuo Yasutaka, Toyoaki Sawano and Masaharu Tsubokura: Low dose of external exposure among returnees to former evacuation areas: a cross-sectional all-municipality joint study following the 2011 Fukushima Daiichi nuclear power plant incident, Journal of Radiological Protection, 40(1), pp.1-18, 2020.
https://doi.org/10.1088/1361-6498/ab49ba