データジャーナリズムに見る報道イノベーション――英米から学ぶ最新知見

データ分析から新たなニュースを発掘するデータジャーナリズム。日本でも注目は高まるが、単なる「バズワード」で終わらせずに実践者を増やすにはどうすれば良いのか? 日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の赤倉優蔵、木村愛がニューヨーク、ワシントン、ロンドンの3都市で敢行した調査取材の報告から、ニュース報道にイノベーションを起こすための鍵を探る。(構成/JCEJ)

 

 

世界に広まるデータジャーナリズム

 

赤倉 私は普段、通信社でエンジニアとして働いています。2012年3月ごろからデータジャーナリズムに興味を持ち、事例研究や実践を試みています。5月にJCEJが開催したジャーナリストキャンプ福島2013では、記者、編集者、大学教授、そしてエンジニアである私の4人でチームを組み、データジャーナリズムで福島の風評被害を検証しました。(記事URL: http://diamond.jp/articles/-/38458

 

これまで取り組んで感じたのは、データジャーナリズムを通じてニュース報道に変化が起きているということです。ニュースはこれまで読んでもらう、あるいは見てもらうだけの一方通行なものでした。しかし、データジャーナリズムの手法が高度になるにつれ、読者にデータからニュースの発見を手伝ってもらったり、データを基に読者が報道内容を検証することも可能になり、読者とメディアの関係性を新しくしています。日本でもデータジャーナリズムを実践するヒントになればと、今回の取材に行ってきました。

 

「データジャーナリズム・アワード」という、世界中の秀逸なデータジャーナリズム・プロジェクトを表彰する試みが2012年から行われています。今年は、51カ国から計286作品の応募があり、部門別に7作品が選ばれました。日本からは朝日新聞が南海トラフ地震の被害想定を可視化する取り組みで参加しています。

 

 

jyanarist

 

 

メディア別では、ガーディアンが5作品応募していてトップです。アメリカの非営利オンラインメディアのプロパブリカ、英BBCが続きます。昨年のアワードの地域別出品数は、ヨーロッパや北米に多いですが、南米、アジア、アフリカ、オーストラリアからもあります。世界中でデータジャーナリズムが展開されています。

 

今年8月、アメリカのナイト財団がテキサス大学と組み、MOOC(Massive Open Online Courses)を活用したデータ駆動型ジャーナリズムのオンライン講座『Data-Driven Journalism: The Basic』を開催しました。実際に報道機関でデータジャーナリズムを実践するプロを講師に招いて基礎を学ぶ5週間のプログラムですが、世界140カ国から3500以上の受講登録がありました。

 

この講座の参加者が作成した、受講者の分布を可視化したインフォグラフィックを見てみると、アメリカが圧倒的で一番多く、アメリカを除いた2203人の受講者のうち45人が日本人でした。講義は英語でしたので、日本からの参加も決して少なくないと捉えています。講義は英語だったにもかかわらず、日本からの参加も決して少なくありませんでした。ブラジルからの参加が非常に多いほか、インド、カナダ、イギリス、メキシコ、ドイツ、オーストラリアもありますね。

 

世界に広まるデータジャーナリズムの舞台裏を知りたいと思い、イノベーションの国アメリカと、新聞の老舗イギリスを取材対象に選びました。取材項目として注目したのは、なぜデータジャーナリズムに取り組んでいるのか、どんな態勢でやっているのか、使っているツールやデータの種類、取り組む上での課題です。

 

 

 

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