「子ども兵士」の背景と実情 ―― なぜ子どもが兵士になるのか

まだ幼さの残る顔の、しかしギラついた瞳のアフリカの少年が、その年に似つかわしくない小銃を肩に担いでいる。そんな写真や映像を見たことのある人は多いかもしれない。彼らは「少年兵」、「児童兵士」、「子ども兵士」などと呼ばれる(英語では”Child Soldiers”)。2000年代初頭の時点で、世界には50万人の子ども兵士がいるとされ、彼ら/彼女らは、戦闘だけではなく伝令や偵察といった任務に従事している。

 

彼らの姿から想起されるものは何だろうか? 子どもを殺人マシーンにさせる戦争のおぞましさだろうか。子どもとは思えないほどの残忍さを感じるだろうか。戦争に巻き込まれた子どもたちへの憐憫の情か……。そのような子ども兵士たちの理解は、たしかにその通りではあるが、表層的なものに過ぎなくもある。本稿では、その定義や社会的背景を踏まえ、事例を交えながら、子ども兵士とはそもそも誰であり、なぜ子どもは紛争下で兵士として動員されるのかについて解説していく。

 

 

子ども兵士の定義

 

歴史を遡れば、子どもが兵士として戦闘に参加することは珍しいことではなかった。少年十字軍に参加した少年少女、幕末の会津戦争の白虎隊もそうである。もちろん当時と現在とは「子ども」の定義は異なるわけで、現代の子ども兵士の問題と一様に扱うことはできないのだが。

 

それではまず現代の「子ども」とは誰か。「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」(1989年採択)では18歳未満を「児童(子ども)」と定義している。また、子ども兵士に関連する条項としては、同条約38条で、15歳未満の児童の軍隊への採用を禁止することが規定されている。この他にもいくつかの国際条約で児童の国軍への徴募や採用を、年齢を定めて規制している。

 

この時期以降、冷戦終結後のアジアやアフリカの発展途上国では、国内紛争が頻発するようになり、多くの子ども兵士が紛争に動員された(その背景については後述)。このような中、2007年にユニセフとフランス政府によって開催された国際会議において、「軍・武装集団に関係する児童に関するパリ原則とガイドライン」を決議した。その中では、国際的に合意された定義とした上で、子ども兵士とは、戦闘員、調理人、荷物運搬、伝令、スパイもしくは性的目的のために軍もしくは武装集団によって徴募、使用される18歳未満の少年少女であるとしている。

 

 

ウガンダのNGOが運営する元・子ども兵士リハビリ施設の少年。うつろな表情をしている。2005年撮影。(写真提供 アフリカ平和再建委員会)

ウガンダのNGOが運営する元・子ども兵士リハビリ施設の少年。うつろな表情をしている。2005年撮影。(写真提供 アフリカ平和再建委員会

 

ウガンダのNGOが運営する元・子ども兵士リハビリ施設の少年。うつろな表情をしている。2005年撮影。(写真提供 アフリカ平和再建委員会)

ウガンダのNGOが運営する元・子ども兵士リハビリ施設の少年。うつろな表情をしている。2005年撮影。(写真提供 アフリカ平和再建委員会

 

 

 

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