つながるSYNAPSE――世界制作のための(x,y,z)

SYNODOSとSYNAPSEとのコラボ連載第4回です。私たちは研究者と編集者・ライター・プランナーによるチームで、異分野の人達とのコミュニケーションを通して科学を広める活動をしています。連載第1回ではその活動の歴史的・理論的背景を、第2回と3回では実際の活動であるイベントのレポートをお届けしました。

これまでの記事こちら

 

今回は、2014年の10月に我々が行ったカンファレンス「つながるSYNAPSE−世界制作のための(x,y,z)−Synaptogenesis phase.2」で話し合われた内容を受けての論考をお届けします。

 

連載第1回ではサイエンスコミュニケーション以外の分野でも課題となっている「異分野との繋がりの重要性」を指摘してきましたが、このカンファレンスでは科学や大学以外の分野で、異領域同士のコミュニケーションを軸に活動を展開している以下の6名の方々と共に議論をしました。

 

江口晋太朗(編集者、ジャーナリスト、NPO法人スタンバイ理事)

緒方壽人(takram design engineering)

外山雅暁(特許庁)

西村真里子(元バスキュールプロデューサー、現Heart Catch代表取締役)

松倉早星(ovaqeinc.代表クリエイティブディレクター)

鷲尾和彦(Future Catalysts/博報堂クリエイティブプロデューサー/写真家)

 

 

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このカンファレンスの目的は、様々な領域において越境やシステムの再編が必要とされる昨今、既にその架け橋となり活動されている実践者たちが集うことで、新たな働き方や職能、その社会的意義を問うこと。

 

そして、「つながるSYNAPSE」と題したイベント名の通り、肩書きや領域は違えど、似たようなビジョンを持つ人々同士の「つながり」を生むことでした。

 

さて、議論の出発点を決めるために、私たちは最初に以下のお題を立てました。

 

1.「既存の体系を壊さずにハックする方法とは何か?」

2.「それぞれの活動の社会的意義とは何か?」

 

現在を振り返ってみると、2000年代から2010年代にかけて、ソーシャルネットなど新たなWeb上のツールやICT技術が一般化し、それらを強みとするベンチャー企業も数多く登場しました。

 

一方、大企業では情報や消費者の多様化によって、トップダウン型のものづくりや従来の分業制による組織体系の再編が求められるようになってきています。また、地域拠点のNPO法人などの活動がますます盛んになり、新たなコミュニティが多数形成されたはずです。

 

そして2011年の震災以降は、さらに人と人の関係性が重要視され、コミュニティへの意識が高まったように思います。

 

近年、既存の体系では対処しきれないモノゴトに対し、新たなアプローチが数多く試みられ、固有の領域を超えて活躍するクリエイターも増えてきました。

 

しかし、10年代も折り返した今、「異分野融合」といった言葉も一人歩きしはじめ、「新しいコト」であったはずのものの中には、もはや新しい「既存の体系」になりつつあるものも目立ち始めているように感じます。

 

「新しい」アプローチが既存の体系を打破することは叶わず、また、打破することで失われるものも実際には大きく、それを失ってまで変化を望む人は多くはない。

 

そして、小さな新しい分野は周辺コミュニティの中で体系化、もしくは権威化し、同じことが再起的に繰り返され、状況はあまり昔と変わっていない。そんな風に感じることがしばしばあります。

 

一方で、最近面白い動きをしていると僕らが感じる人たちは、むしろ既存の体系とうまく付き合い、少しずつ目的を達成しているようにも思えます。

 

そのヒントは、既存のシステムを壊すのではなく順応しながら、したたかにそれらをハックしていく方法。カンファレンスでは、登壇者の実践的な活動内容を探ると共に、その根底にあるビジョンや方法論をここでもう一度確かめ、我々の今後の活動に活かしたいと考えました。

 

本稿ではディスカッションの中でゲストから語られた内容の一部を以下に紹介します。

 

 

広告代理店から、アートを都市・産業の触媒にしていく(鷲尾和彦)

 

 

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博報堂のクリエイティブプロデューサーとして働きながら、写真家としても活動する鷲尾さんは「これまでの広告手法だけではリーチできないものがある」と、冒頭に語りました。たとえば、従来の産業においてアートとビジネスは全く別の物だと考えられる傾向にありました。

 

もちろん、分野としては別物かもしれませんが、産業の裏には必ず文化があり、人々の欲望や情動を掻き立てるものがあった。その媒介が文字通り「メディア」だったわけですが、企業も広告会社も、消費者の動向ばかりを気にするマーケティングビジネスをはじめ、短期的な利益追求を求めるばかりでイノベーションとはほど遠く、大きなビジョンが描けていない。

 

こうした疑問に立ち向かった矢先、鷲尾さんが8年前に出会ったのがオーストリア・リンツ市にあるアートセンター、アルスエレクトロニカでした。テクノロジーを主軸に、メディアアート分野に強いアルスエレクトロニカの掲げるテーマは「アート、テクノロジー、社会」。1979年に発足したこのアートセンターは「灰色」のイメージがあったリンツという工業都市において、これからやってくるエレクトロニクス産業を見据えたテクノロジーのあり方を考察する場として広く機能し、今日ではユネスコの認定する「創造文化都市」に選出されるまでに至りました。

 

では、アルスエレクトロニカの果たしてきた功績とは何なのか?鷲尾さんはその真意を知るべく、アートが都市の触媒となる姿を探求してきました。8年の歳月が実を結んだのは2013年の終わり頃、社内から新たな風が吹き始め、博報堂とアルスエレクトロニカによる共同事業「Future Catalysts」が2014年に始動したのです。広告代理店とアートセンターという異色のコラボレーションが、産業や都市にどんな影響を与えていくかがこれからの課題だと鷲尾さんは語っていました。

 

 

トップの人間のホンネをくすぐる(西村真里子)

 

 

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一方、大きな組織が変革していくにはまだまだ大きな課題が残ります。クリエイティブとビジネスの架け橋をつなぐ実践的プロデューサーの西村さんもまた、その一つの原因として、組織における決裁権が一部の人物に集中している点を指摘しました。

そもそもの組織構造の問題として、決裁権を持つ人物に対して、組織の中からでは意見を上げにくいといった状況も目立つ、と。だからこそ、トップにくすぐりをかける「異人(まれびと)」的存在が求められているのではないか、と。

 

西村さんは持ち前のパワフルさと人を魅了するキャラクターで、たとえばテレビメディアのような企業に飛び込みで押しかけ、自身の得意とするデジタル領域とのコラボレーションを実現させています。1対1で話をしてみれば、企業の上層部にも悩みを抱える人は多いことがわかってくる。その打開策を共に編み出していく戦法こそが、これからの鍵を握るのかもしれません。

 

 

みんなのためになることは、世界的に受け入れられる(外山雅暁)

 

 

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同じような構造的問題は行政にもありうると、特許庁に務める外山さんも語っていました。美術大学出身でもある外山さんは、元々デザインの価値を高めることを目的に特許庁に務められ、外部のクリエイターとも多くのつながりを持たれている方です。

 

こうしたネットワークが強みとなって、時に内部からではアプローチの弱かった施策やアイデアも、外部の「声」を活かすことで解決につながることもあると言います。また、「行政」という存在にかたいイメージを持つ方も多いかもしれませんが、外山さんは行政的立場に身を置くからこそ、デザインの社会的意義を高められるなど、強みになることも多いと仰っていました。

 

そして、「みんなのためになる仕組みこそが、世界で受け入れられるチャンスになる」ことへの確信。「特許」というと誰かが権利を占有するイメージもあるかもしれませんが、「共有」の一つの方法でもあるのだと外山さんは言います。

 

これらの議論からのヒントは、「決定権のある人間と外部の人間をどうつなぐか」、そして「誰かが一人勝ちするのではなく、多くの人にとって有益なクリエイティブや施策とは何か」ということになるでしょう。【次ページにつづく】

 

 

 

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