「LGBTといじめ」を考える

「自分らしくって言うけど、それってなんなんだよ」――。そう言われた少年は、苦しそうに顔をゆがめた。10年ほど前に放映された「真剣10代しゃべり場」(NHK教育)のこの一コマを今でも覚えている。「真剣~」は、10代の若者たちによる討論番組で、その回のテーマは「男らしくなきゃダメですか?」だった。テーマを発案したのは「男らしくないことでいじめられている」という中学生男子。

 

彼は「自分は自分のままではダメなんだろうか」とスタジオに集まった10代の仲間たちに問いかけていた。仲間たちは「そのとおりだ」と応じた。「いじめられる側にも原因がある」「自分を変えるべき」との厳しい意見が相次ぐ中で、彼はやがてポロポロと涙を流し始めた。番組を観ながら、当時高校生だった私はだんだん重苦しくなった。いじめられても守ってもらえないタイプの子どもっているんだな、と思った。そして、そんな子どもである彼のことを、他人事だとも思えなかった。

 

「いじめを受けやすい子ども」は存在する。「いじめ被害にあったときに孤立しやすい子ども」も存在する。人種や民族が違っていたり、発達障害があったり、男らしさ/女らしさから外れたり、LGBTであったりする子どもたちは「いじめ被害のハイリスク層」として、欧米諸国では個別のいじめ施策が取り組まれている。しかし、日本のいじめ対策は「いじめはいけない」という一般論にとどまっており、これまで個別のハイリスク層に目を向けてこなかった。

 

■LGBTについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参考にどうぞ。

セクシュアル・マイノリティ/LGBT基礎知識編

 

本稿では、昨年秋に開催されたシンポジウム「LGBTといじめ~男らしさ、女らしさの圧力を考える」後半に行われたパネルディスカッションの様子を報告する。パネルディスカッションでは、レズビアンであることを公表しているタレントの牧村朝子氏リンクをゲストに迎え、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表理事の荻上チキ氏、「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」共同代表の大磯貴廣氏、遠藤まめた(筆者)の4名で、性にまつわる「らしさ」といじめの関連について語り合った。

 

なお、シンポジウム前半では「LGBTといじめ」に関する国内外の調査について紹介がなされた。「いのちリスペクト~」による報告は「大人には話しにくい――LGBTの子どもの学校生活といじめ」にも集約されているため、ご興味のある方は是非ご参照いただきたい。

 

 

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日本では話題にあがりにくい

 

牧村 インターネットで「レズビアン いじめ」と検索すると、他国では相談窓口など当事者の役に立つ情報が出てくるのに対して、日本とロシアでは、まずアダルトサイトがヒットしてしまいます(2014年9月調べ、http://www.2chopo.com/article/detail?id=874)。

 

大磯 日本では、いじめとジェンダー、セクシュアリティについては、まだまだ話題にあがりにくい。

 

牧村 欧米圏では、結構話題になっています。LGBTに対するいじめに反対しようと、みんなで紫色の服を着るのが「スピリット・デー」。他には「ピンクシャツ・デー」というのもあります。ある学校で、ピンクのシャツを着て登校した男の子が「お前、ゲイなんじゃないの?」「男なのにピンク着るんだ」と言っていじめられたのを見て、周りの生徒たち50人ほどが一斉に、自分たちもピンクのシャツを着て登校した。そのエピソードに由来して、みんなでピンクのシャツを着ることでいじめに反対しようという記念日ですね。

 

荻上 アメリカやイギリスでは、LGBTといじめに関する調査がたくさん行われているのに対し、日本ではまだまだデータが少ない。研究者の力が必要です。【次ページにつづく】

 

 

 

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