入会なんて聞いてない ―― 父親たちの語るPTA

保護者と先生の団体であるPTA(Parent-Teacher Association)。勝手に入会? 勝手に役員に? 10年近くPTAに関わる作家の川端氏と、憲法学者の木村氏がその問題点について語り合う、「父親たちの語るPTA」前編。(構成/山本菜々子)

 

 

人生最大のカルチャーショック

 

木村 川端さんの「PTA再活用論」はこの分野の代表的な本です。お子さんがきっかけでPTAに関わられたとのことですが、いまおいくつなんでしょうか。

 

川端 中学一年生と高校一年生ですので、上の子どもが小学校に入学してから、かれこれ10年近くPTAと関わっていますね。木村さんの朝日新聞の記事を拝見しましたが、法学の立場からPTAについて書く人がやっとあらわれたと、心の中で大きな拍手を送りました。木村さんも子どもがきっかけで、PTAについて考えるようになったのですか。

 

木村 私の子どもは今、保育園に通っています。実は、PTAに興味をもったきっかけは、保育園の保護者会なんです。今まで、保護者会に参加せずに会費だけを払っていたんですが、年長になった瞬間に「これまで役員をやっていない人の中から、役員をやってもらうことになっています」と言われました。

 

「これはおかしい」とおもい、調べてみたんです。保護者会というのはマイナーな組織なのでインターネットで検索してもほとんど出て来ませんでした。しかし、似たような組織のPTAについて調べてみると、「PTAに勝手に入れられた」「とても大変なおもいをしている」といった意見がたくさん出てきました。

 

そして、どうもこの問題を本格的に最初に検討したのが川端さんであるということがわかったんです。今回は、ぜひ経験豊富な川端さんにPTAのお話をいろいろ伺えればとおもっています。小学校入学以前は、保護者会などに関わっていましたか。

 

川端 息子も娘も保育園だったのですが、保護者会がなかったんです。だから、その時はPTAや保護者会といった組織について考えることはありませんでした。

 

話によると、何年か前までは全員加入の保護者会があったそうなんですが、役員のなり手がいなくて、たまたまその時の会長がすごく胆力のあるお母さんで、「なり手がいないなら保護者会を休止します」と総会で通したんですね。そのあとも、もちろん手がいる時もあるので、その時々でボランティアという形で参加を募っていました。

 

しかし、小学校に息子が入ったとたん、頭をガツンと殴られたようなカルチャーショックを受けました。給食費のために口座をつくったのですが、そこからいつの間にかPTA会費も落ちていたんです。第一回保護者会というのに行ってみると、全員が会員であることを前提に、なんらかの役をやらなければいけないことを知りました。しかも、驚いたことに、役員選出委員会という委員会があって、次の年の会長や副会長を選ぶために、1年かけて活動するっていうんですよ。

 

役員決めの時に、周りを見ていてもあんまりやる気のある感じではなかったので「毒を食らわば皿まで」といった感じで、その役員選出委員会を引き受けたんです。それが、ぼくのPTAに関わったきっかけですね。

 

木村 「あなたはPTAの会員です」と言われたのはどういう段階なんですか。

 

川端 それが、言われてないんです。

 

木村 保護者会に行ってみたら、会議をやると言われて、そこで自分がPTAに入っていたことをはじめて知ったと。

 

川端 入っているという説明もなかったですし、会費も知らない間に引き落とされました。保護者会の前に、「調査票」のようなものがくばられましたが、「入会しますか?」というものではなく、「どの委員会や係を希望しますか?」というものでした。さらにいうと、「当日出席しなかった方は、委任状を出したものと見なし、役をやっていただくことがあります」と書いてありました(笑)。

 

それまでぼくは○○の会といった名のつくものは、自分が入りたいから入るものだと信じていました。PTAだって、基本的には「日本野鳥の会」と変わらないわけです。自分の子どもの育ちと学びに寄り添いたい人達の会も、野鳥に興味がある人達がつくる会も、入退会については同じはずです。ある日、前触れもなく、あなたは「野鳥の会」の会員ですと言われたら、びっくりしますよね。でも、PTAではそれがまかり通っている。今まで自分の人生で培ってきた世界観を根本レベルで否定されたみたいな衝撃でした。

 

 

注:保育園の「保護者会」と、小学校の「保護者会」の機能は異なっています。保育園・幼稚園の「保護者会」はPTA的な「組織」で、保護者が会員となり役員の選抜なども行います。一方で、小学校の「保護者会」は学校によっては「学級懇談会」と呼ばれることもあり、学校が主催した保護者と教員の話し合いの「場」で、本来ならばPTAとは独立した会合です。

 

 

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入会なんて聞いてない

 

木村 PTAに勝手に自動加入させられるというお話でしたが、川端さんが関わられた学校ではどのように加入が行われているのでしょうか。

 

川端 本当に「いつの間にか」入れられているんです。というのも、入会希望を書面で出さなくても、PTAは名簿をもっているんです。学校の児童名簿を使っています。

 

それで、きょうだい関係も把握できますし、学校に何世帯の家族がいるのかわかりますよね。その世帯数を「PTA会員数」といってそのままカウントしているという感じですね。しかも、副校長先生が「あの家が転出した」「今度はここは転入した」と、PTAに教えてくれるんです。絶えず最新の世帯数を把握していました。

 

木村 学校が管理している児童名簿をPTAに流し、そのまま自動加入にしている場合が多いということですね。入会の説明もないまま、役員選出の作業に移ってしまうと。

 

川端 その通りです。最初から名簿があって、全員加入。自分にとって一番近い例なので言いますと、ぼくが住んでいる世田谷区の64校の区立小学校のPTAでは、すべてが全員加入を前提とした運営をしています。

 

2、3か所、入会意志確認の紙をくばるところを知っていますが、「入会する」に○をするところがあるだけで、「全員出して下さい」と書いてあるんです。それはちょっとおかしいですよね。

 

木村 それは変ですね(笑)。先日、某テレビ局の朝の情報番組で、文部科学省のPTAを管轄していた部門のOBの方が、はっきりと、「PTAは任意加入の団体です。」とおっしゃっていました。それにもかかわらず、全員加入ではないPTAというのはそれ自体珍しいものだということですね。

 

川端 ぼくが知っている限り、全員加入を前提にしていないPTAはとても珍しいですね。

 

岡山市の西小学校PTA、札幌市の札苗小学校PTAが、自由に入退会できると宣言して、この2、3年話題になりました。また、余談ですが、八王子のみなみの小学校のPTAは、会員名簿はつくらず、会長がだれかも決めずに、枠組みはつくるけれど、委員会を必ずしもやる必要はない、と規約前文に書いているんです。

 

木村 そんなに崇高な理念をうたった前文があるというのは、憲法みたいですね。

 

川端 そうですね。そこに取材しようと、学校の事務方である副校長に問い合わせてみたら「困ったなぁ」と言われました。「だれに話をしたらわからない。責任者がいないから」って(笑)。その後、小中一貫校になって、ウェブサイトも消えてしまったので、どうなっているのかはわからないんですけど、当時はその緩さがなんとも心強かったように思えました。

 

 

 

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