2013.12.03

2020年東京オリンピック――「ホームレス排除」のない社会を目指して

大西連 NPO法人自立生活サポートセンター・もやい

社会 #東京オリンピック#ホームレス#自立生活サポートセンター・もやい

2013年9月8日、2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会(以下「オリンピック」)の東京開催が決定した。僕はこのニュースを複雑な想いで聞いていた。オリンピック開催ともなると、スタジアムやインフラ設備など、街の再開発の規模は想像を超えたものとなるだろう。これまで歴史的にも、街の再開発と同時に、駅や公園、公共施設などで「適正化」と呼ばれる「ホームレス排除」がおこなわれてきた。

近年だと渋谷の宮下公園や、江東区の堅川河川敷などが有名だが、行政機関が、時に荒々しいやり方でそこに起居している「ホームレス状態の方」を追い出してしまうことも頻発している。

もちろん、駅や公園、公共施設等に無断で違法な形で寝起きすることは、必ずしも良いことだとは思わない。しかし、当事者の声を聞かずに、またきちんとした代替も用意せずに、ただそこから追い立てていくことは、彼ら・彼女らの最後の「居場所」をも奪ってしまうことだ。

僕は、オリンピック開催が決定してから、会場予定地近辺や、都内の公園、河川、高架下などを回り、そこで生活する何人かの「ホームレス状態」の方からお話をうかがった。彼らの言葉から、2020年東京オリンピックの「在り方」について考えていきたい。

「最近、急に少なくなっちまった」

佐藤(仮名・70代)さんは都内の高速道路の高架下に住んでいる。数年前にはそのエリアには10数人が寝起きしていたが、僕が訪れた時には佐藤さんを入れて2人のみ。最近、人数が急に減ったという。

―― いつごろからここにお住まいですか?

「ここには10年以上前からいるよ。5~6年前に1回、埼玉で仕事があって数カ月そこに行ってたんだけど仕事中に倒れちゃって。そのあと戻ってきてからはずっとここかな。」

佐藤さんは東北地方出身。中卒後、上京して配管工として働き、いわゆる高度経済成長期の建築ラッシュを現場で支えてきた。家族はいない。路上生活が長い方には多いが、職人気質で朴訥として話す。いまは古紙回収や古本を集めて生計を立てているが、最近は厳しいという。

「いまは景気が良くないから(単価が)安くて大変だな。昔は一日頑張れば数千円にはなることもあったんだが。これでもオレは長くやってて「しのぎ」があるから何とかなってるってとこかな。」

―― アベノミクスで景気が良くなったと言われていますが。路上にはあまり影響はない?

「そうだねぇ。上のほうはあるのかもしれないけど、俺たちは地べたを這いつくばって生きてるから。建築とか土方とかは景気いいのかもしれないけど、オレはもう年でそういう仕事はできないし、心臓もやってるから。」

佐藤さんは5~6年前に狭心症で倒れ、救急搬送された。幸い命に別条はなかったものの、本来では通院が必要な状態。以前の埼玉での飯場の仕事(建築現場での住み込み労働)も体調不良で辞めてしまった。年齢や体調面を考えると早急に生活保護等の支援が必要だが、本人はあまり考えていないと言う。

「オレはこれまで好き勝手に生きてきたから、いまさら国のやっかいになることは考えていねぇよ。オレらの時代はそうだったんだ。自分でなんとかやっていくさ。」

「でも最近、ここらでも若い、あんたぐらいの年の人が増えてきているよ。それは本当に心配だねぇ。どこに食べるものがあるかとか、どうやって缶拾ったり、雑誌拾ったりするかわかってない。よっぽど教えてやろうかと思うんだけど、みんな下向いて元気がないっていうか、一人でポツンとしていて。そういう新しい若い奴が来てはどっかに行って、また新しいやつが来てってのを繰り返している。これは何とかしないとと思うよ。」

―― この辺りを少し歩いてみたのですが、佐藤さん以外には他に路上生活されている方がいらっしゃらないように見えました。いま話に出てきた若い方は、どこに寝泊まりしているのでしょうか?

「ここら辺も、最近、急に少なくなっちまった。若い奴はよくわからないな。そこのファミレスとかにいるのかな。転々としているような気がするな。」

「元々この辺りにいたやつが何でいなくなったのか、実はよくわからないんだ。でも、最近、役所の人が来たり、はやく出てってくれと言われている。そこの交差点のとこも一人寝てたんだけど、いまはああなっている。(写真1)オレも隙間を見つけて何とか寝てるよ(笑)。最近、居づらいなぁと思ってる。」

(写真1)ホームレスの方がいられないようにしている
(写真1)ホームレスの方がいられないようにしている

「役所を信用してない。こんなテープ(立ち入り禁止の)貼っていくんだから」

佐藤さんのいるエリアでは(写真1)のように「立ち入り禁止」と書かれ、カラーコーンやバリケード、フェンスなどで、寝起きしている場所が囲われてしまっている。このようなものが近辺に数か所あったので、いずれもそこの「住人」がこれらに囲まれて、そこに居られなくなったり、居づらくなってしまって、そこを離れたものと考えられる。

また、(写真2)のように、荷物を置いていたら撤去する旨の警告を貼られ、実際に所有者がいない時に片づけられてしまうこともあるという。しかも、「立ち入り禁止」のテープで囲われたのは10月に入ってからという。オリンピック開催決定の影響はあるのだろうか。

(写真2)警告文が貼られている
(写真2)警告文が貼られている

―― 2020年に東京オリンピック開催が決定したのですが、ご存知でしたか? また、オリンピックがおこなわれることについて、どう思われますか?

「落ちてたスポーツ新聞をみて知ったよ。オリンピックをやるのはいいことなんじゃないのかな。景気が良くなるといいし。オレはもう7年後なんて生きていないだろうけど、若い人にとっていいものになれば。」

「ただ一方で、いまは、昔みたいにみんなが一つになって、っていう感じでもないんじゃないかな。この辺をウロウロしている若い奴(ホームレス状態の若者)を見ていても、みんな暗い顔してて不憫に思う。難しいことはわからないし、オレには関係ないけどね」

オリンピック開催が決定して、役所の人などが訪問はあったのだろうか。また、「排除」ではない代替としての「提案」などなされているのだろうか。

「役所から委託を受けたNPOだかの人がたまに来る。ホームレス向けの施設があるから入らないかと言うよ。でもそんなとこ、タコ部屋(多人数部屋)だろ? それにこの年になっていまさらって思っちゃう。ただ、心臓(病気)があるから、もうちょっと年を取ったらどこかでお世話にならないとな、とは思ってる」

―― タコ部屋(多人数部屋)の施設じゃなければ、支援を受ける気はありますか? 例えば、すぐその日からアパートに入れるとか。

「そんなとこあるわけないだろう。兄ちゃん、そんなこと言ったって騙されないよ(笑)。まあ、もちろんアパートに入れるなら住んでみたいけどね。でも、役所のやつらを基本的に信用してないんだ。こんなテープ(立ち入り禁止の)貼っていくんだから。」

「それに、好きで路上やってるというか、自分自身のせいでもあるから。自業自得というか、仕方がないことなんだよ」

佐藤さんは自分が路上生活をしているのは「自分のせい」と強く思っていた。もしかしたら、ある種、自罰的な意味も込めて路上に留まり続けているのかもしれない。

佐藤さんは確かに違法に路上を占拠し、本来住んではいけないところで生活をしている。しかし、掘り下げて聞くと彼にも家族がいた時代があり、愛する人と生活していた場所がある。

彼は「恥を忍んで生きている」と言う。しかし、その「恥」とは何だろうか。もちろん本人の努力が足りなかったり、責めがあるような事情があるかもしれない。しかし、一生懸命、彼なりに不器用に生きてきて、でもその結果、社会のなかで「居場所」を失い、路上生活に追い込まれてしまった。彼を「路上」に追い込んでいる社会には責任がないのだろうか。

また、佐藤さんは「オリンピックはいいことだ」と言う。そして、フェンスやバリケードで囲まれ、立ち入り禁止と書かれたテープに覆われたなかで生活しながら、彼は同時に「自分は追い出されても仕方がない」と言う。

オリンピック開催による再開発は、もし「排除」という形をとるのであれば、社会のなかで行き場を失い、生活困窮して身を寄せた「路上」という最後の居場所を、彼から奪ってしまうかもしれない。

やむを得ずテントを張って生活している方ばかり
やむを得ずテントを張って生活している方ばかり

「お金はいらない。住む場所だけでいい。」

「オリンピックが決まったあと、役所の人とかがぞろぞろと何人も連れだってやってきた。新聞社の人も取材にきた。」

山下さん(仮名・70代)は都内の某公園にテントを張って寝起きしている。その公園近辺は会場候補地の一つになっていることもあり、すでに僕以前にさまざまな方が話を聞きに来たという。

「役所の人には、ここにいたらダメと言われた。どこか別のところを用意すると言われたけど、どんなところかは具体的には話はなかった。まず、役所に来いと言われて。でも、どこに行けばいいか分からないし、聞いても仕方ないかなと。新聞社の人は缶ビールを持ってきてくれた (笑)」

山下さんは10年以上この公園に住んでいる。東京の下町出身で、小売店を営んでいたというが、50歳を過ぎたころに経営が悪化し仕事を失った。借金なども相当あると言う。その後は料理店などを転々とするが、60歳を過ぎて仕事を見つけられず、アパートを出て路上生活を始めた。生活保護などの制度は使ったことがないと言う。

「自分は生活保護を使わなくても生きていける。役所に行っても良く分からないし、大変だと聞く。自由がきくいまの生活のほうがいい。」

山下さんは、以前は空き缶拾いで生計を立てていたが、腰を痛めたことと自転車を盗まれてしまったことで、収入のすべを失った。いまは、近くのコンビニなどのゴミをあさって食べものを得たり、地域の人からこっそり援助してもらっているという。

地域の人に果物をもらったという
地域の人に果物をもらったという

「炊き出しとかには行かない。昔、ケンカになって、あんなとこにもう行くかと思った。今でもたまに回ってる人(都内の支援団体)がいるけど断っている。悪い人たちではないが、他人の世話になりたくない。」

支援団体の悪口をひとしきり言うと、過去に福祉事務所に相談にいったときのことを話してくれた。

「昔、7~8年前に一回だけ、腰を痛めてもうダメだと思って役所に行った。そしたら、いっぱいで入れる場所がないと言われた。空くまで待てば入れるが、何人かの大部屋だと言われたので、それならいいやとあきらめた。若いやつ(職員)に説教されて頭にきた。」

「前にここに住んでた人が生活保護になって、施設に放り込まれて大変な思いをして逃げてきた。タコ部屋(複数人部屋の施設)に入れられて自由がきかない生活なんてごめんだね。お金はいらないから、ちゃんと住む場所がほしいだけ。」

もちろん、実際には例え泊る場所が「いっぱい」であったとしても、福祉事務所は本来、それに代替するような場所を用意したり、宿泊するためのお金を貸し付けたりすることをしなければならない。

しかし、そういった制度上の知識がない山下さんは、結果的に制度利用を試みたものの「自分は使えない」と思ってしまい、また役所の対応のまずさから不信感を持つにいたり、その後、相談にいくことをやめてしまった。

―― すぐさまアパートに入居できる制度などがあったら利用されますか?

「そうだね。5年くらい一緒に住んでるネコがいる。捨て猫で兄弟2匹だったんだけど、かたっぽは死んじゃってね。ただ、こいつがいるうちは一人ではどこかに行ったりはできないな。一緒に住める場所があればいいんだけど。」

ネコの話をする山下さんは、とても70代には見えない無邪気な笑顔を見せる。長期で路上生活をする方のなかには、ネコなどと一緒に暮らしている方も多い。

しかし現在、公的な施設やシェルターなどでは入所できるのは基本的には本人だけで、心の支えであるペットの同伴は無理だ。それに、施設や宿泊所は、個室の場所が少なく、複数人部屋だったり、環境が悪いところも多い。

また、少しばかり話した程度の印象でもあるが、山下さんはかなりぶっきらぼうなところがあり、口も悪い。そういったコミュニケーションの部分、対人関係の部分でこれまでもトラブルを起こしてきたという。

もしかしたら、福祉的にも「支援がしづらい人」なのかもしれない。しかし、こういった方が入り口ではじかれ、結果として路上に残ってしまっているという実態もある。

ネコのご飯
ネコのご飯

「いますぐにでも出ていきたい」

―― オリンピックについてはどう思いますか?

「実は前回の東京オリンピック(1964年)は家族で見に行った。いまでもその時のことが目に浮かぶし、感動したんだよ。すごいなって。だから、オリンピック自体はいいことなのかもしれないな。でも、7年後は想像できないし、その前に死んじゃうかも。ここに寝泊まりして10年くらいになるけど、10年もここにいることになるとは思わなかったよ。」

「ここが予定地だと聞いて、出てかなきゃいけないのかな。もともと人の土地だから追い出されても仕方がないんだけど。でも困ってしまう。行く場所があるなら、いますぐにも出ていきたいよ。」

山下さんはしきりに「仕方がない」を繰り返していた。しかし、彼が自ら話すように、望んでここにいるわけではない。ただ、ネコと一緒に住める場所が欲しい。それは贅沢な願いだろうか。

もちろん、支援団体などと協力して、彼の希望がかなうようなお手伝いはできるかもしれない。しかし、それをしたくても、役所に対して不信感を持っていたり、自分自身のことについて投げやりな気持ちになっていると、なかなか進めていくことは難しい状況になってしまう。

彼のような人は一般的には「支援をしづらい人」として、あたかも本人に責任があるかのように捉えられがちだ。もちろん、彼自身にもコミュニケーションの部分などで上手ではない面があり、それによって周囲を遠ざけてしまうところがあるかもしれない。

しかし、そういった「個性」を受け入れることができる社会であったり、制度があれば、彼自身が行き場を失って「路上」にとどまっている必要はなくなるのではないかと思う。そして、彼自身が「いますぐにも出て行きたい」と思っているにも関わらず、それを支えることができないでいる社会のほうにその不備があるのではないかと思う。

「ホームレス」の現状と課題

ここまで、佐藤さん(仮名)と山下さん(仮名)の話を紹介した。ここからは少し目線を変えて政策的な話や政府の方針について考えていきたい。

平成24年1月に実施された「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)」によれば、路上等のホームレスの数は9576人であり、平成15年度が25296人であったことから分かるように、この10年で大幅に減少している。

また、平成25年1月におこなわれた概数調査では、都内のオリンピック候補予定地付近には、「ホームレス」として約500人の人が生活しているということもわかる。(表1)

(表1)
(表1)

しかし、この調査報告では、「ホームレス」の数は減少していると言えるものの、その背後には、

・生活困窮し居住の不安定さを抱える層が存在すること。

・これらの層が何らかの屋根のある場所と路上を行き来している。

と指摘されている。

参考:平成24年度ホームレスの実態に関する全国調査検討会報告書

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002rdwu.html

以前、シノドスにて書いたが、いわゆる「ホームレス」の方以外に、統計では明らかにされていないネットカフェ難民と呼ばれる人たちや、友人・知人宅に居候している人たち、住み込みの仕事で失職と同時に路頭に迷ってしまう人たちなど、広い意味での「ホームレス状態」の方は、数万人にのぼると考えられている。佐藤さん(仮名)が話していた「若い奴」はこういった人たちであると予想することが可能だ。

参考:【SYNODOS】日本のホームレスの現状と課題/もやい・大西連氏インタビュー

https://synodos.jp/welfare/3559

また、実際に現場レベルのデータを見てみると、例えば、新宿区のホームレスの概数は平成25年には162人(前述の表1)であるにも関わらず、新宿区生活福祉課統計資料表4を見ると、ホームレス等の方からの相談は、平成24年度で来所相談が9133件となっている。

参考:新宿区生活福祉課統計資料

http://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000041514.pdf

全体数が162人にも関わらず相談件数が9133件というのは、国の調査による「ホームレス」が「ホームレス状態の方」のほんの一部でしかないことを端的にあらわしている。そして、9133件の来所相談のうち、相談のみが7449件、生活保護の申請受理が1684件となっていて、相談に来たものの制度につながる人の割合が非常に低い。山下さん(仮名)のように、本来は制度が必要でも窓口で申請にいたらない、といった人が多いことが予想される。

政府の「ホームレス」への基本的な方針

政府はこういった実態を受けて2013年8月1日に「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」(以下、基本方針と表記)を発表している。このなかでも、上記の指摘と同様に、

・固定・定着化が進む高齢層に対する支援

・若年層に対する支援

・再路上化への対応

の3点が主なポイントとして挙げられていて、この定義だと佐藤さんや山下さんは「固定・定着化が進む高齢層」のカテゴリーに入るであろう。

参考:ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(平成25年7月31日厚生労働省・国土交通省告示第1号)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/homeless08/pdf/data.pdf

政府はこれらの「ホームレス」に対して、個別的な支援をおこなっていくとしているが、一方で、上記基本方針の第3-2(9)「ホームレス対策の推進方針 地域における生活環境の改善に関する事項について」では、

“都市公園その他の公共の用に供する施設を管理するものは、当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられている時は、ホームレスの人権にも配慮しながら、当該施設の適正な利用を確保するために、

ア 当該施設内の巡視、物件の撤去指導等を適宜おこなう

イ アのほか、必要と認める場合には、法令の規定に基づき、監督処分等の措置をとる。”

とされている。

この項目は、解釈によっては公共施設・公共空間においては、ホームレスの人権に配慮しつつも、必要であれば「ホームレス排除」をおこなう、ということを言っている。非常に問題が多い方針となっている。

東京オリンピックが「ホームレス排除」の場とならないために

ここまで、実際に「ホームレス状態」にある二人の話と、日本のホームレスの実態、政府の方針についてみてきた。

佐藤さん(仮名)はすでに寝場所に「立ち入り禁止」のテープを貼られ、いまにもその生活場所を追い出されようとしている。山下さん(仮名)は、すぐにでも出ていきたいにも関わらず、公的な支援につながれずに食べものを拾っていのちをつないでいる。

二人とも、すぐさまアパートに入れるなら、望むような形での支援がメニューのなかにそろっているのであれば、路上ではなく地域のなかで生活していくことを選ぶだろう。しかし、残念ながら政府の施策や「方針」では彼らを「包摂(つつみこむ)」することができておらず、どちらかと言えば「排除」の方向性を向いているのが現状である。

また、国会にて議論されている生活保護法改正法案や生活困窮者自立支援法案などの動きを見ていると、今後ますます自己責任と家族扶養を前提とした(あてにした)社会に変わっていってしまう可能性が高い。

【SYNODOS】生活保護法改正法案、その問題点/大西連

https://synodos.jp/welfare/3984

【SYNODOS】新たな支援制度の実態とは――生活困窮者自立支援法の問題点/大西連

https://synodos.jp/welfare/5308

いま立ち止まって考えてみたい。

2020年東京オリンピックは「ホームレス排除」につながってしまうのだろうか。自己責任の名のもとに「支援しづらい人」として、彼ら・彼女らの最後の「居場所」を奪ってしまうのだろうか。

それとも、私たちが「ホームレス」を社会の共通の課題として認識し、彼ら・彼女らを支えられるような施策を作っていく方向に舵を取るのだろうか。

7年は先のようで、あっという間だ。2020年の日本社会をどうデザインするかは私たちが決めることができる。多様な価値観や人生の在り方が認められるように、私たちの社会も変わっていくことが必要である。

オリンピック開催をきっかけに、「排除」ではなく「包摂」を前提とした、これからの社会の「在り方」を考えていきたい。

大規模改修が予定されている国立競技場
大規模改修が予定されている国立競技場

プロフィール

大西連NPO法人自立生活サポートセンター・もやい

1987年東京生まれ。NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わる。東京プロジェクト(世界の医療団)など、各地の活動にもに参加。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言している。初の単著『すぐそばにある「貧困」』(ポプラ社)発売中。

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