「混合介護」の弾力化で何が変わるのか?――社会保障の理念から考える

「混合介護の弾力化」は、社会保障の理念に反する

 

――結城さんは、混合介護の規制を取り外して拡大化させようという今回の案に対しては、どうお考えですか。

 

私は、今申し上げた論理から反対です。規制を続け、あくまで保険内サービスと保険外サービスは明確に分けていくべきです。

 

介護保険制度は、あくまで社会保険制度の1つであり、「公平」「平等」という理念が重要視されます。そのため、「混合介護の弾力化」が促進されれば、所得再分配といった社会保険の理念が崩れてしまいます。

 

利用者の利便性の向上、介護士の賃金アップなど場当たり的なメリットを掲げ、社会保障制度の理念を軽視するような「混合介護の弾力化」は、中長期的に考えれば、高齢者間の格差を助長し、無駄な給付費を生む危険性をはらんでいます。介護保険制度の根幹を揺るがす安易な「混合介護の弾力化」は、きわめて問題と考えます。

 

 

――「ケアマネージャーがきちんとチェックを行えば問題を軽減できる」という意見もありますが、いかがでしょうか。

 

確かに、ケアマネジャーがしっかりチェックすれば問題はないとした考えもあります。しかし、現在のケアマネジャーは事業所に雇われているケースが大半で、サービス提供者側に近い関係があります。そのため、すでに現在の保険内サービスであっても、法律に反しない限り、ケアマネジャーが用意したプランによって「供給が需要を生む」といった現象が部分的に生じています。しかも、ケアマネジャーの技術力も個人によって差があり、必ずしも質が高いとは限りません。そのため、競争原理の問題点を克服できる専門職としてケマネジャーに託すことは、一部を除いて非常に危険だと思います。

 

 

介護士の賃金アップにつながるのか?

 

――介護士の賃金向上につながるという賛成側の意見もありますが。

 

一部の介護士だけで、普遍的ではありません。特に都市部に限られるでしょう。地方の小規模な事業所では低所得の利用者も多く、保険外のサービスを多く利用するとは考えられない。よって、人手不足を軽減する効果もあまり期待できないと思います。

 

むしろ、利用者や家族のいいなりの介護士が増えてしまう懸念もあります。介護保険がかなり金儲け主義になり、利用者のご都合主義的になることは、高齢者の自立支援の妨げにもなります。高齢者や家族からの要望が、必ずしも本人のためになるとは限らないのです。保険内サービスは、ケアマネジャーが、自立支援の視点からサービスを組み合わせ、利用者の感覚ニーズ(フェルトニーズ)を、リアルニーズ(自立支援に向けたニーズ)にしてサービスを展開しています。しかし、自費サービス(保険外サービス)を部分的に規制緩和させることで、感覚ニーズが拡充してしまう懸念があるわけです。

 

 

――介護士の処遇や人手不足の改善策として、どのような方法が考えられますか。

 

公費を投入して、準公務員的な発想で、介護士に対して賃金補助していくべきです。その財源は、「介護離職ゼロのために働く労働者を助ける」という視点から、労働政策で考えてもいいのではないでしょうか。例えば一部、雇用保険料の再引き上げをする、などの方法が考えられると思います。

 

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