大改革案:地域医療・介護総合確保推進法案を考える

今国会で審議されている「地域医療・介護総合確保推進法案(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案)」は、これまでの慣例にない、医療法と介護保険法の改正案をセットで議論するもので、野党からは「性質の異なる分野の法改正をまとめて審議することに違和感を覚える」といった批判もあり、注目度が増している。

 

確かに、医療と介護は表裏一体であり、両者をセットで議論することは間違いではない。しかし、今回の介護保険法改正案は、2000年に介護保険制度が創設されてから、2度目となる大改革案であり丹念な議論が必要不可欠である。

 

前回の2011年の介護保険法改正の内容であれば、小幅にとどまるため医療法とセットで審議することも効率的であっただろう。しかし、今回の改正案の中身は、高齢者にとって大きな影響があり、セットで議論されると論点が絞れず好ましくない。その意味では、法案審議の方法論としても粗い印象を受ける。

 

 

医療法改正における基金の創設

 

医療法の改正のポイントとしては消費税増税分の一部を財源に(約900億円規模)、都道府県に基金を設け医療関連人材確保の方策を打ち出すこととなっている。具体的には、「医療従事者等の確保・養成」「看護職員等確保対策」「在宅医療(歯科を含む)の推進」などが使途目的である。

 

消費税引き上げ分によって医療施策に財配分する法改正は、一定の評価ができる。とくに、医師や看護師といった人材確保に診療報酬以外で財源確保がなされることは重要である。

 

いっぽう2014年診療報酬改定においては、消費税5%から8%の引き上げに伴う薬価や医療材料の仕入れ負担増などへの対応として、診察報酬が1.36%(診療報酬本体0.63%+薬価・医療材料分0.73%)引き上がった。しかし、消費税増税分を加味しなければ、診療報酬本体は0.1%の引き上げにとどまり、薬価・医療材料分は1.36%引き下げとなった(結果的にマイナス1.26%引き下げ)。

 

 

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結果的に、基金は創設されたものの診療報酬本体部分の引き上げはわずかであったため、今後の医療施策の拡充は期待できないと考える。

 

 

病床区分の変更

 

また、今回の法律改正に伴う医療制度改革においては、「急性期医療」をはじめとする医療機能の分化の方向性が示された。具体的には、従来の一般病院である急性期病院を高度なものと、そうでないものに区分けし、病床を再編することが盛り込まれた。

 

そして、退院において「在宅復帰率」という数値が病院経営で本格的に導入され、結果的に患者側にすれば、さらなる退院促進が迫られる可能性が見受けられる。

 

地域医療・介護総合確保推進法案の骨子は、在宅医療・介護の促進であるため、医療法改正のねらいは入院医療の短縮化にある。しかし、現在でさえもベット回転を高めるなどを理由に、病院をたらい回しにされてしまう「患者難民」といった問題が顕在化しており、行き場のない患者がさらに増えるのではないかと懸念される。

 

 

 

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