2024.12.19
『比較のなかの韓国政治』(浅羽祐樹)
今月(2024.12)初頭のユン大統領による、おそらく誰しもが予想しなかった戒厳令に驚いた人は多いと思います。
野党からの追求を恐れてと目されていますが、そもそも弾劾にかけることのできる国会の権能とはいかほどのものでしょうか? さらに、大統領に対して弾劾案が提出されましたが、そもそも弾劾とはどのような条件で可決されるものなのでしょうか。
今後は司法の動きも重要とされますが、では検察内部の人事権は誰が握っているのでしょうか。大統領が裁かれるとしてそれは大法院(最終審)なのか、あるいは憲法裁判所なのでしょうか?
つまりは、過去に起きたことも、今後起きることも、私たちは韓国政治社会を規定するさまざまな制度や法律を知らなければ、理解できないということなります。
本書の特徴は、現在進行形の韓国政治を睨みながら、その背後にある制度や制度運営のダイナミクスの理解を通じて、現実政治の動きを把握しようとしていることにあります。通読すれば、KPOPや韓国文学の動向も、政治社会の動きと無縁ではないことが理解できるでしょう。
長年、韓国は日本から「近くて遠い国」と呼ばれてきましたが、依然としてその距離は縮まっていないようです。とても身近に感じることもあれば、遠くに感じることもあると思います。 そうだとすれば、それは私たちが等身大の韓国を理解していないからではないでしょうか。適切な距離でもってこの国を知るために欠かせない一冊です。
プロフィール
吉田徹
東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学博士課程修了、博士(学術)。現在、同志社大学政策学部教授。主著として、『居場所なき革命』(みすず書房・2022年)、『くじ引き民主主義』(光文社新書・2021年)、『アフター・リベラル』(講談社現代新書・2020)など。