262

2019.04.15

知的障害のある人たちと「ことば」

打浪文子

発達障害を文化人類学する

照山絢子

こうすれば「インクルーシブ教育」はもっとよくなる

野口晃菜

トランスヒューマニズムと責任ある想像力

戸谷洋志

「社会への投資」から考える日本の雇用と社会保障制度

濵田江里子

学びなおしの5冊 「沖縄」とは何か――空間と時間から問いなおす

山本章子

自民党シンクタンク史(6)――設立準備期、郵政民営化選挙後

鈴木崇弘

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αシノドスの読者の皆さま、こんにちは。シノドスの芹沢です。Vol.262をお送りいたします。

最初の記事は、『知的障害のある人たちと「ことば」』を出版した打浪文子さんにお話を伺いました。知的障害という言葉を聞いて、皆さんはどのようなイメージを持ちますか? インタビュー中に出てきますが、知的障害のある方たちのなかには、数カ国語を操る人や、スーパーコンピュータ並の記憶力を持つ人もいるとのことです。この事実だけでも、わたしたちの一般的なイメージが打ち壊されるかと思います。それでは、彼らといわゆる健常者のあいだには、いったいどのような違いがあるのか? あるいは、両者のあいだにあるハードルはどのように構築されているのか? 打浪さんはこの問題に、「ことば」という切り口から迫ります。

ついで、照山絢子さんの「発達障害を文化人類学する」。最初、照山さんのご専門を伺ったとき、「文化人類学」と「発達障害」が頭のなかでうまく結びつきませんでした。しかし、文化人類学とは「文化的他者」の理解をめざす学問なのですから、当然、発達障害をもつ人々も視野に入ってきます。そして、発達障害を文化人類学の観点から理解したとき、この現象がいかに社会との関わりのなかで生じているのかが、よくわかります。それは決して、どの時代、どの社会においても同様のものとして現れるような固有の存在ではありません。ぜひ、打浪さんへのインタビューとともに、この問題についてお考えください。

「今月のポジだし」は、インクルーシブ教育を実践する野口晃菜さんにご提案いただきました。この文章も先のふたつの文章と、根底において同様の問題関心をもつものです。インクルーシブというのは、他者をひとつの同質な社会に同化しようとするものではありません。「われわれ」と「彼ら」のあいだに差異があるのではありません。わたしとあなたのあいだには違いがあります。同じように、「すべての人」のあいだには違いがあるのです。すべての人間は異なっている、このような多様性を肯定し、そしてその多様性が社会のなかで共存していく道をさぐることがインクルーシブという言葉がもつ意味なのではないでしょうか。

トピックを一転させて、つぎの記事は「トランスヒューマニズム」がテーマとなります。去年、中国の科学者がゲノム編集を行い、双子の新生児を誕生させたというニュースが世界中を駆け回りました。生殖細胞に対するゲノム編集によって、人体を強化するエンハンスメントへの道が開かれつつあります。そして、すでに生殖細胞をゲノム編集された子どもがすでに生まれてしまったからには、操作された人間とともに生きる社会をデザインすること、あるいは、そうした共生が可能な仕方で、トランスヒューマニズムを制御する規範を構想する方向へと、議論をシフトしていかなければならないと、戸谷洋志さんは説きます。間違いなく、議論は新たな次元へと突入しつつあることが理解できると思います。

みなさんは、「社会的投資」という言葉を耳にしたことがありますか? それは、福祉や教育、子育てに「投資」の意味合いを持たせながら進める考え方で、1990年代半ばからEUやOECDといった国際機関が提唱し始め、その後ヨーロッパ諸国が政策として実践してきたもので、世界的な政策トレンドとなりつつあります。日本でも現在、安倍政権のもと、子どもや子育て世代への投資が打ち出されています。それでは、日本の動きもまた、この世界的なトレンドのうちにあるのだと考えてもよいのでしょうか? 濱田さんは「社会的投資」について解説しながら、日本の動きをどう評価すべきか考察しています。

ついで、「学びなおしの5冊」。今月は山本章子さんに「沖縄」をテーマにお書きいただきました。「沖縄?どうせ基地問題でしょ?正直飽き飽きなんだよね」と思った方、ちょっとお待ちください。気が早いです。空間と時間という軸から沖縄を考え直すために、山本さんは小説と沖縄県史をあげながら、さらなる補助線として、台湾、硫黄島、グアムという補助線を引きます。そこにあるのは一貫して「虫の眼」であり、空間と時間を貫く権力に翻弄される「人間」たちです。ぜひご一読を!

最後に鈴木崇弘さんによる連載「自民党シンクタンク史」。今回は「設立準備期、郵政民営化選挙後」を扱います。郵政選挙後の改革への熱気のなかで、いよいよ自民党のシンクタンクが立ち上がります。政党のシンクタンクというとなにか形容矛盾のような気もしますが、しかし自民党のような人間関係の情実に絡められている(ようにみえる)政党が、シンクタンクという政策形成のための知識・情報を集約し加工する組織をもとうと考え、そして実際にもつにいたった時期があったということが、いまとなっては驚くべきことだと思います。わたしたちの社会は、どこかで大事な可能性を失ったのでしょう。この連載を読みながら、ぼくもこのことを考えていきたいと思います。

それでは、αシノドス最新号をお楽しみください。次号は5月15日配信です!

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