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2021.09.15

「食は都市の問題でもある――食農倫理と環境倫理との対話」

太田和彦×吉永明弘

「多文化主義における文化概念の変容」

河村真実

「「奇妙」に映る地域に住む「普通」の人々――4人に1人が極右政党を支持する旧東ドイツ地域の背景」

穂鷹知美

「リバタリアニズムと仮想通貨」

蔵研也

「アリストテレス哲学から見る幸福論 「習慣」と「観照」――高校倫理から学びなおす哲学的素養(8)」

池田隼人

「P.シンガーの援助義務論(3・完)」

浅野幸治

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〇はじめに

いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。シノドスの芹沢一也です。本号のラインナップをご紹介いたします。

01.太田和彦×吉永明弘「食は都市の問題でもある――食農倫理と環境倫理との対話」

環境倫理学者の吉永明弘さんによる連続対談、今回は食農倫理がご専門の太田和彦さんをお迎えしました。応用倫理学の新しい分野として生まれた食農倫理学は、「フードシステム」と呼ばれる一連のプロセス、すなわち食べ物の生産・加工・包装・流通・調理・消費・廃棄というプロセスにおいて、わたしたちが他者にどのような影響を与えているのかを倫理的に検討する学問です。太田さんは、この学問をけん引してきたポール・B・トンプソンの著作を訳され、日本に食農倫理学を精力的に導入している研究者です。対談では、トンプソンの仕事をご紹介いただくとともに、食農倫理学の日本における意義をお話しいただいています。

02.河村真実「多文化主義における文化概念の変容」

ヨーロッパの難民危機やアメリカの不法移民問題を筆頭に、近年、「文化」がクリティカルな政治イシューとなっています。こうした中、注目が集まるのが、多様な文化集団に対して平等な処遇を求める「多文化主義」です。本記事では河村真美さんに、多文化主義において問題となる文化とは何か、これまで多文化主義をめぐってどのような論争がなされてきたのか、そしてその今日的意義とは何なのかを解説していただきました。ウィル・キムリッカとアラン・パッテンの議論を軸に、多文化主義をめぐる議論がきわめてクリアに整理されており、格好の入門となること請け合いです。

03.穂鷹知美「「奇妙」に映る地域に住む「普通」の人々――4人に1人が極右政党を支持する旧東ドイツ地域の背景」

スイス在住のライター、穂鷹知美さんによるヨーロッパ事情レポートを、今月から再開します。今回のテーマは、なぜ旧東ドイツの住民は極右政党を支持するのか、です。東西ドイツの統一によって、旧東ドイツでは経済が停滞、社会が混乱し、よりよいキャリアのチャンスを求めて、女性を中心とした多くの若い高学歴の人たちが旧西ドイツに流出しました。その結果、あとに残されたのはパートナー探しや家庭の希望ももてない男性たちでした。そして、そのような彼らが極右を支持しているとのことです。しかし、生活の苦境や生きづらさが背後にあるのなら、なぜ左派政党の支持につながらないのでしょうか? その理由は極右政党がもつ「過激さ」がもたらす政治的効果にあります。

04.蔵研也「リバタリアニズムと仮想通貨」

アベノミクスによって金融政策に注目が集まりました。デフレ、つまり物価が持続的に減少すると、経済活動が停滞し、企業や個人の収入を圧迫します。そこで、日銀は金融機関から国債等を買い入れる資金供給オペ―レーションを通じて、市中の資金量を増加させ、金利を引き下げるなどの政策をとります。企業や人々が資金を調達しやすくし、消費や投資を促進することで、デフレを解消しようとするわけです。蔵研也さんによると、このようなケインズ主義的な政策に反対するのが、政府からの干渉を嫌う「リバタリアン」たちです。そして、ビットコインを筆頭とする仮想通貨とは、彼らリバタリアンたちの思想が結晶したものにほかなりません。ビットコインには2100万枚の発行上限がありますが、それはインフレによって現金・預金保有者しようとする中央銀行に対するアンチテーゼです。

05.池田隼人「アリストテレス哲学から見る幸福論 「習慣」と「観照」――高校倫理から学びなおす哲学的素養(8)」

池田隼人さんによる「高校倫理が学びなおす哲学」、今回のテーマはアリストテレス哲学と幸福論です。近年、「善く生きること」という倫理的テーマへの関心が高まり、アリストテレス哲学に言及される機会が増えています。プラトンにとっての幸福は「身体からの解放」にあり、それは彼岸においてのみ達成されるものでした。それに対して「現実主義」の立場に立つアリストテレスは、あくまで身体を備えた存在としての人間が、この世の中でどのようにして「善く生きるか」を探求しました。そうしたアリストテレスの考えた幸福とは何だったのでしょうか? 

06.浅野幸治「P.シンガーの援助義務論(3・完)」

3回に分けてお届けしてきた、浅野幸治さんによるP.シンガーの援助義務論の検討、今回が最終回です。国際連合のミレニアム開発目標を達成するためには、毎年600億ドルが必要だと見積もられています。ミレニアム開発目標は貧困や飢餓の半減を目指していますので、2倍の毎年1,200億ドルあればよいことになります。そうすると、先進国に住む富裕な人たちがだいたい6億人いるとして、先進国の人間が年200ドル負担すれば、われわれはこの問題を解決することができます。さて、年200ドルの負担を、富裕な先進国の人間に義務化するべきでしょうか? ぜひ、この問いを自分事として、本記事を読んでみてください。

次号は10月15日配信です。お楽しみに!

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