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2021.11.15

社会民主主義の再生に向けて――ベーシックアセットという構想

宮本太郎

オノラ・オニールの思想——「カント的に正しい世界」とは何か

馬渕浩二

「女性は職業選択についていまだに十分真剣に考えていない」のか?――賃金格差と女性の職業観のはざま

穂鷹知美

J.ロールズの国際援助論の批判的検討(2)

浅野幸治

今月の1冊――『正義を振りかざす「極端な人」の正体』山口真一

芹沢一也

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01.宮本太郎「社会民主主義の再生に向けて――ベーシックアセットという構想」

日本の福祉政治の過去と現在、そして未来を考えるための必読書である『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』が出版されました。著者の宮本太郎さんは本書で、「例外状況の社会民主主義」「磁力としての新自由主義」「日常的現実の保守主義」という「三つの世界」が織りなす力学の中で、日本における福祉政治(貧困政治・介護政治・育児政治)がいかなる歴史の軌道をへて姿を現したのかを見事に描き出しました。同時に、この三つの世界とこれまでの歴史的経緯を無視したかたちで、「外」(北欧)から理想の福祉政治を持ち込むことは不可能であることも指摘されています。日本の福祉はいなかる経緯を経ていまの姿に至り、そして現在どのように機能不全を起こしているのか。しかし、それでもなお未来への希望をそこから紡ぎだしていくために、われわれは現行の制度のどこにそのポテンシャルを見出すことができるのか。宮本太郎さんにお話を伺いました。

02.馬渕浩二「オノラ・オニールの思想——「カント的に正しい世界」とは何か」

「汝の格率が普遍的法則となることを、その格率を通じて汝が同時に意欲することができるような、そうした格率に従ってのみ行為せよ。」有名なカントの定言命法ですが、このきわめて抽象的かつ形式的なカント倫理学の核心を指針に基づいて、オノラ・オニールは現実問題、すなわち子どもの権利、女性の権利、合意の問題、グローバルな正義論、グローバルな貧困問題、そしてバイオエシックスの問題などにアプローチします。ではオニールは、どのようにしてカントを社会に接続しようとするのでしょうか。あるいは、「カント的に正しい世界」をどう実現しようとするのでしょうか。馬渕浩二さんが、世界的貧困に焦点をあてて、オニールの戦略を解説します。

03.穂鷹知美「「女性は職業選択についていまだに十分真剣に考えていない」のか?――賃金格差と女性の職業観のはざま」

スイスにおいても男女間の賃金格差は問題になっているようで、2018年の数字によると、女性の賃金は男性に比べ19%少ないとのことです。こうした賃金格差は不当な理由に起因する、という理解が一般的だったのですが、スイスが今年から義務化した、100人以上の従業員を抱えるスイスの約5000社における雇用者の賃金分析によると、男女間の不当な差別的要因による格差は格差全体の2割に満たず、95%以上の会社で賃金による差別がみられないという結果でした。ではなにが女性の賃金を抑制しているのでしょうか。穂鷹知美さんにレポートしていただきました。

04.浅野幸治「J.ロールズの国際援助論の批判的検討(2)」

前回の記事につづき、今回は、ロールズの国際援助論の否定的側面を、浅野幸治さんが検討します。ロールズは、C.ベイツやポッゲの平等主義的な分配原理を批判し、途上国の国民を貧困から救済することは先進国の国民の義務ではないとするのですが、その前提となっているのが次のような仮定です。「ある国が(経済的貧富に関して)どれだけうまくやっていくかということを決める最も重要な要因は、あくまでもその国の政治文化──つまり、その国の構成員が有する諸々の政治的・市民的徳性──であり、その国が有する資源の種類や量ではない。」はたして、この「貧困の国民主義的説明」は正しいのでしょうか。

05.芹沢一也「今月の1冊――『正義を振りかざす「極端な人」の正体』山口真一」

「今月の1冊」、今回取り上げるのは山口真一さんの『正義を振りかざす「極端な人」の正体』です。そこかしこで「極端な人」たちが目を光らせ、あるときは正義を振りかざして不謹慎狩りに勤しみ、またあるときは見知らぬ他人に罵詈雑言を浴びせつける。そして、いわゆるネット炎上は、いまやネットで見慣れた風景となりました。しかし、その影響は甚大です。ネット炎上に巻き込まれて、進学や結婚が取り消しになった人、ネットで傷ついてひきこもるようになってしまった人、活動自粛をせざるを得なくなった有名人、倒産してしまった企業、しつこいクレームが原因で精神を病んでしまった人。こうした事例が日々、発生しています。なぜネットはこのような殺伐とした空間になるのでしょうか。こうした問いをもつ人に最適の一冊です!

次号は12月15日配信となります。お楽しみに!

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