景気循環から見た日本経済の現状と今後  

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2007年第4四半期以降、日本経済の景気は悪化し、それは2008年9月のリーマン・ショック、10月の世界同時株安を経由して深刻な影響を与えたのは記憶に新しい。2009年3月以降は景気回復局面に入ったが、その動きは緩やかといわれる。

 

以下では好況・不況といった景気循環の側面から、過去の景気循環と直近の日本経済の動きを比較することで、2007年第4四半期から2009年第1四半期にかけての景気後退と、2009年第1四半期以降の景気回復の特徴を浮き彫りにし、あわせて筆者が考える2011年の日本経済を考える際のポイントについて論じてみよう。

 

 

景気循環とは

 

まず景気循環とは何かという点から話をはじめよう。景気循環にはさまざまな考え方があるが、本稿では景気の転換点に着目して好況及び不況について考える。

 

景気の転換点がいつであったかを把握するには、内閣府経済社会総合研究所が公表している景気循環日付を参照する。これは、景気に影響すると考えられる主要経済指標の動きから、景気が好況から不況に移った場合、もしくは不況から好況に移った場合のタイミングをみているものだ。

 

好況から不況に移るタイミングを「山」、不況から好況に転じるタイミングは「谷」という。つまり、景気は山と谷を境に上下に変動するというわけだ。

 

 

消費・投資・輸出が大幅に落ち込んだ直近の景気後退

 

景気循環からみた今回の不況と、その回復過程の特徴は何だろうか。

 

図表1は、1980年代以降の実質GDPの動きを、景気循環日付に沿って「山」および「谷」と区分した上で、「山」から「谷」の時期を景気後退期、「谷」から「山」の時期を景気回復期とし、その期間内の実質GDP、民間最終消費支出、民間住宅投資、民間企業設備投資、政府消費、公共投資、輸出、輸入の変化を、期間内の累積額のかたちで表示したものである。

 

さて2007年第4四半期から2009年第1四半期にかけての景気後退期の動きは、過去と比較してどのような特徴があるのだろうか。

 

まず図表1から景気後退期における実質GDPの変化額をみると、マイナス55兆円となっており、過去最悪の水準である。

 

1980年以降の景気後退期の実質GDPの動きをみると、80年代からバブル崩壊直後の景気後退(1991年第1四半期~93年第4四半期)までの実質GDPの変化額はプラスだった。つまり、景気後退とは実質GDPそのものの低下ではなく、実質GDP成長率の低下を意味したというのがこの時期の特徴だった。

 

ところが1997年以降は状況が一変して、景気後退期の実質GDPの変化はマイナスとなった。つまり景気後退とは実質GDP成長率の低下ではなく、実質GDPの減少を意味するようになったのである。

 

そして2007年第4四半期以降の景気後退は、過去の景気後退期の実質GDPの落ち込みから比較して、3倍以上の落ち込みを記録した。図表1からも2007年第4四半期から2009年第1四半期の景気後退の影響の大きさがうかがわれるだろう。

 

 

図表1:景気後退・回復局面における実質GDPの変化(期間内累計)  (*1)図表は景気基準日付に基づく「山」から「谷」の時期を景気後退期、「谷」から「山」の時期を景気回復期とした上で、実質GDPおよび主要項目の累積変化をグラフ化したものである。 (*2)民間・公的在庫品増加、開差項は図表では割愛している。よって棒グラフの合計値が折れ線グラフの値とは一致しない。 (*3)計算にあたっては、実質季節調整済系列(年率ベース)を用いている。 (出所)内閣府経済社会総合研究所『国民経済計算』及び『景気基準日付』より筆者作成

図表1:景気後退・回復局面における実質GDPの変化(期間内累計)
(*1)図表は景気基準日付に基づく「山」から「谷」の時期を景気後退期、「谷」から「山」の時期を景気回復期とした上で、実質GDPおよび主要項目の累積変化をグラフ化したものである。
(*2)民間・公的在庫品増加、開差項は図表では割愛している。よって棒グラフの合計値が折れ線グラフの値とは一致しない。
(*3)計算にあたっては、実質季節調整済系列(年率ベース)を用いている。
(出所)内閣府経済社会総合研究所『国民経済計算』及び『景気基準日付』より筆者作成

 

 

2007年第4四半期から2009年第1四半期の景気後退は、他にどんな特徴があるのだろうか。いえるのは、実質GDPの大幅なマイナスは、民間最終消費支出、民間企業設備投資、輸出の大幅減少によりもたらされたということだ。

 

とくに過去の景気後退局面では民間最終消費支出の変化はプラスを維持していたが、今回ははじめてマイナスに転じたこと、民間企業設備投資についてはバブル崩壊後の不況である1991年第1四半期~1993年第4四半期以来の落ち込みとなったこと、輸出の落ち込みが過去最大であったことが大きく影響している。

 

消費、投資、輸出の落ち込みはしばしば指摘されるが、改めて過去の景気後退期と比較しても、そのインパクトが甚大であることがわかるのである。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

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