消費税率引き上げの経済への影響をどう考えるか

消費税率引き上げの経験をどう考えるか

 

では、前節で整理した97年の消費税率引き上げの影響を念頭に置いた場合、現時点の経済動向で消費税率を引き上げることをどのように理解すべきか。図表2は、景気後退がはじまった07年第4四半期から直近までの動向を、図表1と同じかたちで整理している。

 

図表2をみよう。消費は09年第4四半期以降プラスとなっているが、明らかなように消費の増加に影響しているのは耐久財消費の増加であり、これにはエコポイント制度の導入やエコカー減税といった政策が影響していることがみてとれる。

 

そして、総投資は10年第2四半期にプラスに転換し、これには設備投資と在庫投資の増加が影響していることがわかる。さらに実質所得は10年第1四半期以降増加に転じたが、これには名目所得の上昇と、家計消費デフレーターの下落がつづいていることが影響している。

 

有効求人倍率は回復しつつあるものの、その動きは緩慢であり、図表では示していないが生産(鉱工業生産)の動きは在庫投資の積みあがりを反映して、10年以降増加テンポがやや緩やかとなっている。

 

さて、このような状況を頭に入れながら八田(2002)の視点を考慮すると、近い将来に消費税率引き上げを行った場合にどのような影響が生じると考えられるか。

 

まず消費については、エコカー減税はすでに打ち切られ、エコポイント制度は11年3月末の打ち切りが決定している状況では、耐久財消費の反動減の影響が今後具現化すると考えられるが、消費税率引き上げのアナウンスは、この反動減を異時点間の代替効果を通じた一時的な消費増加効果によって、抑制する効果があると考えられる。

 

しかし注意すべきは、消費税率引き上げ後の反動減の影響が、現在の家計消費の増加を支えるのが耐久財消費の動きであるため、非常に大きくなると考えられる点だ。そして総投資が設備投資と住宅投資の緩やかな回復を基調にしながら推移すると考えれば、消費税率引き上げが住宅投資の落ち込みを誘発することで、総投資全体が下落する可能性も否定できない。

 

さらに家計消費デフレーターの上昇にともなう家計所得の低下が、家計消費を下落させる可能性も否定できない。このように考えると、現時点での早急な消費税率引き上げは、緩やかながら回復基調にある日本経済を、ふたたび失速させる可能性を高めるものと理解できよう。

 

 

図表2 07年第4四半期以降の国内家計消費・総投資・実質所得の動向 (出所)内閣府『国民経済計算』、厚生労働省『職業業務安定統計』より筆者作成。

図表2 07年第4四半期以降の国内家計消費・総投資・実質所得の動向
(出所)内閣府『国民経済計算』、厚生労働省『職業業務安定統計』より筆者作成。

  

 

 

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