2013年度参院選を考える ―― 各党の経済政策から

第二次安倍内閣が昨年12月26日に成立して半年が経過した。昨年12月16日の衆院選前に1万円を下回っていた株価は1万4,000円台で推移し、83円台であったドル/円レートは100円近辺で推移している。5月23日以降株価は下落し円高が進んだ。だが第二次安倍内閣発足時と現在を比較すると株高・円安が進んだことは明らかである。

 

株価や為替レート以外の経済指標はどうか。昨年12月と直近時点(5月)の内閣府「景気動向指数」を構成する指標の動きを比較すると、株価の上昇や投資環境の改善、消費者マインドの改善、最終消費財の在庫率の低下といった動きが顕著であり、企業の営業利益は改善し、生産や出荷が増加し、所定外労働時間が増えている。消費も増えている。

 

2013年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率4.1%と1年ぶりの高成長だった。ESPフォーキャスト調査(2013年7月11日)によると、2013年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率3.03%(平均)と引き続き高い成長率が見込まれている。

 

もちろんこれで「失われた20年」から脱却できたと結論づけるのは早すぎるし、経済政策が実体経済に影響を及ぼすタイムラグを考慮に入れればアベノミクスそのものについての評価を下すのも時期尚早だ。しかし回復は実体経済にも次第に波及しており「アベノミクスで生じたのは株高と円安のみだ」と公言するのはさすがに無理があると言えるだろう(*1)。

 

(*1)直近の経済動向についてご興味の向きは例えば筆者が作成した「日本経済チャート集(2013年7月17日)」を参照していただければ幸いである。http://yahoo.jp/box/jZLclV

 

さて、こうしたなかで参院選が行われる訳だが、各党はどのような政策を主張しているのだろうか。以下ではアベノミクスの三本の矢である金融政策、財政政策、成長戦略について各党の主張を敷衍しつつ考えてみることにしたい。

 

なお、各党の主張をまとめるにあたり参照した資料はつぎのとおりである。詳細については以下のリンク先を参照いただきたい。

 

 

・参議院選挙公約2013(自民党)

http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/sen_san23/2013sanin2013-07-04.pdf

 

・参院選重点政策(公明党)

http://www.komei.or.jp/campaign/sanin2013/manifest2013/index.php

 

・アジェンダ2013みんなの政策(完全版)(みんなの党)

http://www.your-party.jp/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%802013%EF%BC%88%E5%85%A8%E4%BD%93%E7%89%88%EF%BC%89.pdf

 

・日本維新の会 参議院選公約(日本維新の会)

https://j-ishin.jp/pdf/2013manifest.pdf

 

・参議院選挙重点政策(マニフェスト完全版)(民主党)

http://www.dpj.or.jp/global/downloads/manifesto2013.pdf

 

・参議院選挙公約2013(総合版)(社会民主党)

http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2013/data/commitment.pdf

 

・参議院選挙政策(日本共産党)

http://www.jcp.or.jp/web_download/2013-saninsen-seisaku.pdf

 

・ふかせようみどりの風の「約束」(みどりの風)

http://mikaze.jp/news/upload/1372851421_1.pdf

 

・生活を守る!!生活の党(生活の党)

http://www.seikatsu1.jp/special/images/election/political_policy.pdf

 

 

金融政策

 

まず金融政策についてみていこう(図1)。安倍政権では1月22日に日銀との共同声明を公表し、「2%の物価安定目標」を設定した。その後黒田東彦、岩田規久男、中曽宏の三氏を日銀総裁・副総裁とする人事を行い、3月21日に成立した新執行部の下で4月4日に黒田総裁は2%の物価安定目標を2年程度で達成するための「大胆な金融政策」である「量的・質的金融緩和策」を公表・実行した。

 

 

slide1

図1 金融政策(クリックで拡大)
各党政権公約を参照して筆者作成。

 

 

以上の「大胆な金融政策」に関しての各党の反応をみると、与党である自民党・公明党は賛成だが、民主党、日本共産党、社会民主党は明確に反対の姿勢を表明している。これら三党の反対の理由をみていくと、大胆な金融政策により生活必需品や原材料・燃料の値段が高騰していること、多くの働く者の賃金は上がっておらず設備投資は増加していないこと、長期金利や株価・円相場の乱高下が生じていることの三つに要約できるだろう。

 

ちなみに三党の反対理由についての筆者の反論はつぎのようなものだ。つまり原材料価格高騰が問題であれば減税や一時的補助金で対処すればよく金融政策を元に戻す理由にはならない。設備投資は下げ止まりつつあり賃金への波及にはタイムラグがある。これまでと異なる金融政策を行っている事による混乱はあるものの長期金利や株価・円相場は次第に安定している。また黒田日銀が目指しているのは長期金利や株価・円相場の安定ではない。大胆な金融政策を通じて生産・雇用・物価の安定を達成することである。

 

さて民主党、社民党、日本共産党は「大胆な金融政策」に代わる政策として何を主張しているのだろうか。

 

民主党のマニフェストを読むと、「『中間層を厚く、豊かに』としてグリーン、ライフ、中小企業に政策資源を集中し、時代の要請に合った産業を育成します」とあるが、「大胆な金融政策」の代案は見当たらない。指摘しているのは産業政策である。

 

社民党の選挙公約をみると、日本銀行の更なる金融緩和に頼るだけではなく、格差・貧困の縮小、将来不安の解消、雇用の安定に向けた財政政策を実施すること、大企業が抱える余剰資金を消費と需要の拡大に振り向けることが必要との指摘がなされており、戦時立法であったかつての日銀法に逆戻りしかねない日銀法改正に反対するとの記述がある。

 

共産党の選挙政策においても「大胆な金融政策」の代案は無い。内部留保の一部を賃上げと雇用に、という指摘はあるが、どうしたら内部留保の一部が賃上げと雇用に向かうのかという具体策はない。

 

「大胆な金融政策」について賛成の反応をしめしているのは、自民・公明以外にみんなの党、日本維新の会がある。みんなの党の政策目標(アジェンダ)、日本維新の会の参議院選公約をみると、現政権の「大胆な金融政策」の路線を維持しつつ、さらに改善を進めるにはどうしたらよいかという具体策が明確に記されている。

 

具体的にみていくと、みんなの党は、デフレからの脱却を確実なものとし、日銀の目的や責任を明確化するため日銀法を改正。政府と日銀で物価安定目標や達成時期、日銀の果たすべき機能・責務を明記した協定を締結する。日銀が物価の安定に加えて「雇用」「名目経済成長率」に配慮すること、内閣に、国会の同意を条件とした総裁や副総裁・審議委員の解任権を付与することを日銀法で規定すると指摘している。

 

また日本維新の会は、政府と日銀の間で物価安定目標等に関する合意文書を締結、さらには日銀法改正により政府と日銀の役割分担・責任の所在を明確化すると述べている。

 

以上のように「大胆な金融政策」に関する各党の反応をみると、明確な反対を表明している民主党、社民党、共産党は具体策なしの反対論に終始する一方で、みんなの党、日本維新の会は、今後の金融政策の改善点について具体的な言及を行っているといえるだろう。なお、生活の党は金融政策についての具体的言及は無い。みどりの風は「アベノミクスは机上の空論」と指摘し、1%の大企業のためのバーチャル経済から99%の中小企業・自営業・国民のための実体経済重視へ転換をはかると述べている。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

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