いろいろ変わっちゃったから、もう一度本当の経済の話をしよう――『本当の経済の話をしよう』刊行一周年記念

【シノドスに参加しよう!】

▶メールマガジン「αシノドス」

 https://synodos.jp/a-synodos

▶セミナー「シノドス・サークル」

 https://synodos.jp/article/20937

▶ファンクラブ「シノドス・ソーシャル」

 https://camp-fire.jp/projects/view/14015

アベノミクスは矢継ぎ早

 

栗原 「第二の矢」の財政政策についてはどうですか。

 

若田部 今の自民党が言う「財政政策」は、結局のところ公共事業です。建築業者にお金をばらまいていると。しかし、これは本当の意味での「バラマキ」ではないんです。「バラマキ」というのは全員に渡すことです。ですが、公共事業は単にエコひいきしているだけなんですよね。自民党がそういった政治家の集まりなんで、仕方ないと言えば仕方がないんですが。

 

ある意味で、安倍さんは成長したなと私は感じていて、第一次安倍内閣の時は自分のやりたいことだけを通していましたが、今回は麻生さんや甘利さんと手を組みながら、妥協出来ることは妥協している。第二の矢のえこひいきを許すことで、ある種の政治家の人たちは満足するんです。でも、それを許すことのリスクもあって、一度味をしめちゃうと、税金を沢山徴収して、たくさんえこひいきしてしまう可能性があります。

 

ちなみに、私は本当の「バラマキ」をすればいいと思うんです。各国民に10万円ずつ渡すとかね。物価が上がっていますので、所得も直接配ってあげるというのは方法としてありだと思っています。

 

栗原 今の財政政策は、復興政策とミックス出来るんでしょうか。

 

若田部 やろうと思えば出来ますけど、今の復興政策って被災地の建物を再建するとか、インフラを整備するという話になっている。東北三県、特に宮城県では、建設労働者の有効求人倍率は2倍を超えているんです。つまり、求職者1人あたりに、2つ以上の求人があるということになります。そこにお金をつぎ込むことに果たして意味があるのか疑問です。

 

復興事業をするよりも、被災者にお金を配った方がいいのではと感じます。住みたい人はそこに住めばいいし、住みたくない人は移住するといった選択肢を採ることが出来ますしね。

 

栗原 さて、「第三の矢」の成長戦略ですが、問題と言えばこれが一番問題ですかね(笑)。

 

若田部 結局、アベノミクスというのは経済政策ですのであくまでも「政治」なんですね。この「政治」というのは、安倍晋三、麻生太郎、甘利明という、奇しくも頭文字がAではじまる3Aの政治家の、ペットプロジェクトを束ねたものです。第一の矢を安倍さん、第二の矢を麻生さん、第三の矢を甘利さんが担っていると言ってもいいのかもしれません。甘利さんというのは経済産業省とねんごろの仲の人なんですよ。だから、第三の矢が経産省的な政策にならざるを得ないんですよね。

 

栗原 「経産省的」というのは具体的にどのような動きなんでしょうか。

 

若田部 特徴的なのは、特定の産業を選び、補助金をつける手法です。えこひいき政策になりやすいんです。

 

栗原 政府が、この産業が伸びると目星をつけて、そこに投資すると。イノベーションというのは人為的に起こせるもの、というのが前提になっているんですかね?

 

若田部 伸びる産業が分かっていたらこんなに楽なことはない。それが可能だったら日本は日本社会主義共和国になって、ソ連が世界を支配してた(笑)。

 

栗原 クールジャパン(Cool Japan)とかもねえ(笑)。

 

若田部 『ジャパン・タイムス』を読んでいたら(Can METI’s ¥50 billion fund unfreeze ‘Cool Japan’?http://www.japantimes.co.jp/culture/2013/07/09/general/can-metis-%C2%A550-billion-fund-unfreeze-cool-japan/#.UgKt3VrSaig)、日本の漫画やアニメは素晴らしいし、サブカルチャーはクールだと書いているわけです。でも、クールジャパンはクールではないと(笑)。8月2日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』のブログでは、「経産省が作ったクール・ジャパンの宣伝がクールじゃない」と揶揄されていました(http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2013/08/02/japanese-governments-uncool-cool-japan-video-goes-viral/)。

 

アニメだろうが漫画だろうが、日本のサブカルって政府の援助を受けないどころか、日の目もあたらないところでやってきたわけです。そんなところから世界的な文化を築いてきたというのが日本の底力だと思います。

 

栗原 『本当の経済の話をしよう』では「TENGA」をイノベーションの一例として取り上げましたが、政府が補助したわけじゃないですからね、言うまでもなく。補助してたらクール・ジャパンも見直したかもしれないけど(笑)。

 

若田部 そうですね。日本食だってそうです。今、ラーメンや餃子が世界的な人気です。パリっ子が餃子を食べて喜んでいるし、ラーメン店に行列が出来ているようです。昨年の夏ニューヨークの一風堂に行ったのですが、超満員でしたね。しかも、日本人ではなく地元の人が多く人気が高いことを実感しました。しかし、ラーメン屋に政府が補助金を与えたという話は聞いたことがないですよね。

 

栗原 むしろ、勝手に伸びてきたところに今さらカネを突っ込もうという話になってますよね。

 

若田部 アベノミクスに対して、「金融緩和で景気がよくなるはずがない」、といった批判はよくありますが、「国主導の産業政策は上手くいくはずがない」とは不思議と言われません。

 

栗原 クールジャパンに対する風当たりが強いのは、オタク連中がビビッドに反応するジャンルだからでしょうが、同じことをやっていても、その他の産業になると業種にもよりますけど、民間に投げるよりも公共事業でやった方が何となく好ましいんじゃないかと考えたがる傾向はある気がします。新自由主義批判って、要するにこの漠然とした意識のまとまりですよね。

 

 

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

・畠山勝太「こうすれば日本の教育はよくなる」
・穂鷹知美「マスメディアの将来――マスメディアを擁護するヨーロッパの三つの動きから考える」
・大賀祐樹「リチャード・ローティ」
・西山隆行「学び直しの5冊〈アメリカ〉」
・知念渉「「ヤンチャな子ら」とエスノグラフィー」
・桜井啓太「「子育て罰」を受ける国、日本のひとり親と貧困」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(8)――「シンクタンク2005年・日本」第一安倍政権成立」