絵本の読み聞かせが、子供の学力を伸ばす――全国学力・学習状況調査からの示唆

子供の学力は、家庭の経済水準や保護者の学歴と密接に結びついている。昨今、そうした見解を様々なメディアで目にすることが多くなったが、果たして本当なのだろうか。また、仮に本当であるとしたら、どうすれば家庭の経済水準等にかかわらず、子供の学力を高めることができるのだろうか。

 

三菱総合研究所が文部科学省より委託を受けて実施した分析結果を見ると、確かに家庭の社会的・経済的な要素が子供の学力に影響を与えていることが明らかとなった。一方で、家庭環境にかかわらず、子供が小さいころに絵本の読み聞かせをすることにより、子供の学力が高まる可能性が示唆されている。そのエビデンスと、今後に向けた若干の示唆を紹介していきたい。

 

 

分析の背景 全国学力・学習状況調査

 

文部科学省は平成19年度から、全国の児童生徒の学力・学習状況を把握・分析して教育施策の改善を図るとともに、学校における教育指導や子供たちの学習状況等をより良くすることを目的として、「全国学力・学習状況調査」を実施している。

 

対象は小学校6年生と中学校3年生であり、国語と算数・数学の学力テスト[*1]に加えて、学習習慣や生活習慣に関するアンケート調査(児童生徒対象)、教育指導や学校経営の状況に関するアンケート調査(学校対象)もあわせて実施される。このうち学力テストは、主に基礎的な知識レベルを問う問題(A問題)と、応用力を問う問題(B問題)から構成されている[*2]。

 

[*1] 平成24年度調査では、国語と算数・数学に加えて理科のテストも実施された。

 

[*2] 全国的な学力・学習状況調査の詳細については、文部科学省ページ参照。(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/index.htm

 

平成25年度は、これらに加えて、児童生徒の家庭環境や保護者の教育に対する意識・行動等について、保護者を対象としたアンケート調査が実施された。三菱総合研究所では、文部科学省より「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究業務(経済的な面も含めた家庭状況等と全国学力・学習状況調査の結果との関係に関する調査研究)」の委託を受けて、以上の各種データを活用し、家庭状況と児童生徒の学力等との関係について詳細な分析を行った。以下で示す内容は、その結果の一部である。

 

 

家庭の社会経済的背景が学力を強く規定している

 

子供の学力や学習意欲と、家庭の社会経済的背景(Socio-Economic Status:SES)の関係については、これまで様々な先行研究において指摘されてきたが、全国学力・学習状況調査の結果を用いた分析においても、その傾向は明らかであった。

 

図表1は、小学生の家庭の世帯年収区分ごとに[*3]、学力テスト(国語と算数のA問題・B問題)の正答率を集計したグラフである。教科にかかわらず、またA問題・B問題にかかわらず、世帯年収の水準が高いほど正答率が高くなっている。

 

[*3] 保護者対象のアンケート調査においては、世帯年収について「200万円未満」から「1500万円以上」まで12区分(概ね100万円刻み)で質問しているが、ここでは3区分ごとに集約している。

 

例えば、国語A問題の平均正答率は、世帯年収400万円未満の児童は58.3%、400万円以上700万円未満の児童は63.6%、700万円以上1000万円未満の児童は68.2%、1000万円以上の児童は72.1%である。また、中学生を対象として同様の方法で集計しても(図表2)、世帯年収の水準が高い生徒ほど、教科や問題種別によらず正答率が高いことが分かる。

 

図表1 小学生の国語A・B問題と算数A・B問題の平均正答率(世帯年収区分別)

図表1 小学生の国語A・B問題と算数A・B問題の平均正答率(世帯年収区分別)

 

図表2 中学生の国語A・B問題と数学A・B問題の平均正答率(世帯年収区分別)

図表2 中学生の国語A・B問題と数学A・B問題の平均正答率(世帯年収区分別)

 

 

続いて、児童生徒の保護者の学歴別に、各教科の正答率を集計したのが図表3(小学生、父親の学歴別)、図表4(小学生、母親の学歴別)、図表5(中学生、父親の学歴別)、図表6(中学生、母親の学歴別)である。ここでも世帯年収と同様に、保護者の学歴が高いほど、教科や問題種別にかかわらず平均正答率が高くなっている。

 

例えば、小学生の国語A問題の平均正答率は、父親の学歴が小学校・中学校・高校の児童は59.7%、専門学校・短期大学・高等専門学校等の児童は62.8%、大学・大学院の児童は71.5%であり、母親の学歴別に見ても、また中学生においても同様の傾向が見られる。

 

 

図表3 小学生の国語A・B問題と算数A・B問題の平均正答率(父親の学歴別)

図表3 小学生の国語A・B問題と算数A・B問題の平均正答率(父親の学歴別)

 

図表4 小学生の国語A・B問題と算数A・B問題の平均正答率(母親の学歴別)

図表4 小学生の国語A・B問題と算数A・B問題の平均正答率(母親の学歴別)

 

図表5 中学生の国語A・B問題と数学A・B問題の平均正答率(父親の学歴別)

図表5 中学生の国語A・B問題と数学A・B問題の平均正答率(父親の学歴別)

 

図表6 中学生の国語A・B問題と数学A・B問題の平均正答率(母親の学歴別)

図表6 中学生の国語A・B問題と数学A・B問題の平均正答率(母親の学歴別)

 

 

 

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