2014年衆院選における教育政策の公約比較と3つのポイント

(3) 次世代の党

 

次世代の党は、「正しい国家観と歴史観を持つ『賢く強い日本人』を育てる教育」と公約に記されており、保守的な色彩が濃い。愛国心を育む教育、社会における公正と秩序を維持するための規範・道徳教育が明記されている。

 

・国際的に第一級の知力と科学技術の革新力を持たせるための教育の重視(次世代の党)

・「独立自尊」の精神を養い、愛国心を育む教育(次世代の党)

・社会における公正と秩序を維持するための規範・道徳教育(次世代の党)

・バウチャー制度(供給サイドから需要サイドへ税を投入)による子育て・教育政策の拡充により、親の経済格差によらず子供の教育を受ける機会を保証(次世代の党)

・文化による国際貢献、「世界の文化が輝き溢れ、交流する場」の実現(次世代の党)

 

 

(4) 共産党

 

共産党は「世界最低水準の教育予算の引き上げ・重すぎる教育費負担の軽減」「ゆきすぎた競争主義からの脱却」「”上からのしめつけ”をやめ子どもの権利と教育の自主性を保障する」との立場から教育を立て直すとしている。政策は詳細かつ多岐にわたるが、主なものとしては以下が挙げられる。

 

・少人数学級推進の一点で共同をひろげ、他党とも協力し、少人数学級推進の法律を制定するため全力をつくします。同時に、高校に少人数学級をひろげます。(共産党)

・(1)「奨学金」というならすべて無利子にする、(2)収入が少ない人への返済の減免制度など返済に困ったときのセーフティネットをつくる、(3)先進国にはすべてある返済不要の給付制奨学金を創設する(共産党)

・国定道徳の押しつけでなく、市民道徳の教育を(共産党)

 

 

(5) 生活の党

 

生活の党は、「家計収入の増大こそ最優先課題」として、次の施策を取り上げている。教育・子育て政策については、家計負担を軽減し、貧困の連鎖を断つための施策をもっぱら取り上げている。

 

・子育て応援券、高校無償化、最低保障年金を推進し、可処分所得を増やします。(生活の党)

・給付型奨学金の創設を含め、奨学金制度を拡充し、希望する全ての人が高等教育を受けられるようにします。(生活の党)

・貧困により困窮する家庭における子どもを乳幼児期・児童期から重点的に支援し、貧困の連鎖を断ち切るための対策を強化します。(生活の党)

 

 

(6) 社民党

 

社民党は教育予算のGDP比5%水準の実現、自立支援ホームに対する公的支援の強化、給付型奨学金の創設、30人以下学級の早期完全達成と教員定数の拡大など、公教育財政支出の拡大と少人数学級、奨学金・就学援助の充実を掲げている。

 

・地域に子どもの相談・救済など、子どもの人権擁護の仕組みを。「子どもの権利基本法」を制定。(社民党)

・いじめを許さず、共に学び共に生きる、ゆとりある学校を実現。教育予算のGDP5%水準を実現。子どもの貧困の実態を調査し包括的な取り組みを計画的に強化。さまざまな困難を抱える家庭に対する支援体制を整備。自立支援ホームに対する公的支援を強化。就学援助の保障、給付型奨学金を創設。(社民党)

・30人以下学級の早期完全達成と教員定数の拡大。(社民党)

 

 

(7) 新党改革

 

新党改革は政府に対して是々非々で臨む姿勢であるとしている。教育・子育てについては待機児童対策、少子化対策の充実のほか、子どもの学習進捗に合わせて、現場で柔軟に学習内容を決めることができる効果的な「詰め込み教育」が必要であるとしている。

 

・現在の教育制度では、各学年で学ぶ内容が定められていて、学習意欲があっても、上の学年の勉強はできません。子どもの学力の伸びを押さえつけてしまっています。「詰め込み」という言葉のイメージはあまり良くありませんが、ここで言っているのは、子どもの要求に合わせて、どんどん学習出来る教育を実現することです。効果的な「詰め込み教育」のため、中高一貫教育制度の導入を進めていきます。(新党改革)

 

 

3.衆院選における教育政策公約をどうみるか

 

本論では与党・野党それぞれの教育政策に関する公約を検討してきた。具体的な政策をみると、与野党通じてそれほど大きな違いがない政策もみられる。たとえば教育現場への支援や奨学金制度の充実、いじめ対策などは方向性としては各党で大きな違いはない。ただ奨学金制度については、給付型奨学金制度の有無は政党ごとにスタンスが異なる面もみられる。また、道徳教育や愛国心教育などの保守的な政策や、バウチャー制度や公設民営学校などのネオ・リベラル的な政策については、政党によって推進、反対、明記していないなど、立場が大きく分かれている。

 

教育政策に関する各党の政策・公約をみるポイントとして、筆者は次の3点を挙げておきたい。

 

第1は、道徳教育、愛国心教育などの政治的・イデオロギー的な教育課題、またバウチャー制度、公設民営学校などのネオ・リベラル的な政策志向をどのように考えるかという点である。

 

政治的・イデオロギー的な問題については道徳教育などの伝統的な課題とは別に、英語教育の強化やグローバル化への対応などの新しい教育課題をどう考えるかという点も含まれるだろう。ネオ・リベラル的な教育政策については、実験的導入にとどめるのか、あるいは「普通」の学校にも市場原理や競争を広く適用するのかによっても評価が変わってくる。さらにいえば、政治的・イデオロギー的な問題も、ネオ・リベラル的な政策志向も、二者択一的というよりバランスの問題としてとらえる見方もありうる。

 

第2は、教育・子育ての優先順位である。高齢化にともなって年金・医療・介護などに財源を割かざるをえない現状では、教育・子育ての優先順位はどうしても下がりがちである。今回は取り上げなかったが、教育・子育てをマニフェストでどの程度重点的に取り上げているかを見ることでも、その政党が教育・子育ての優先順位をどう考えているかが読み取れるかもしれない。保守的あるいはネオ・リベラル的かどうかよりも、教育・子育てに財源を優先的に割く、またその道筋や施策を具体的に提示してくれる政党を選ぶという選択肢もありうる(もちろん教育・子育てよりも経済政策を優先する選択肢もある)。

 

第3に、第2の点と関連するが財源の裏付けである。財源を具体的に提示している場合とそうでない場合があるが、提示していた場合でも現実的に実現可能かを我々自身が吟味する必要があることはいうまでもない。

 

なお、以上の点は各政党の公約を評価する視点であるが、これまでの政権の教育政策を評価する際の視点として考えることも可能である。今回は教育・子育ては選挙の主要な争点ではないかもしれないが、それゆえに、選挙で勝った政党の教育政策が全て信任されたわけではないともいえる。選挙の時だけでなく、選挙後も有権者が政策の動向に関心を持つことが、民主政治や教育の質を上げるためにはより重要である。

 

サムネイル「Mi aula」srgpicker

http://www.flickr.com/photos/srgblog/1732461298

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.276 

・橋本努「新型コロナウイルスとナッジ政策」
・三谷はるよ「市民活動をめぐる“3つの事実”――「ボランティア」とは誰なのか?」
・五十嵐泰正「『上野新論』――「都市の時代」が危機を迎えたなかで」
・倉橋耕平「メディア論の問いを磨く――言論を読み解く視座として」
・山田剛士「搾取される研究者たち」
・平井和也「コロナ情勢下における香港と台湾に対する中国の圧力」