わが子が学校に行けなくなったら

不登校の現状とインターネット(SNS)、ゲーム

 

不登校児童生徒数は平成25年度以降、年々増加傾向が見られます。平成29年度にはその数が14万4301人と、平成28年度から1万人程度の増加が見られ、統計を取り始めてから過去最多となりました(文科省,2018)。不登校の現状などについては、前回こちらに投稿させていただきました(https://synodos.jp/education/22272)。思いもよらず多くの反響をいただき、「不登校」への関心の高さを感じました。さまざまなご意見をいただいた中で、書き加えなければならないと考えたことは、不登校とインターネット、ゲーム依存の関連についてです。

 

現代の子どもたちは生まれたときからネット社会で暮らしており、ネットを介して簡単に多くの「他人」と関わることができます。また、スマートフォンやパソコンを使用し、ゲームも24時間お手軽に行うことができます。ネット上のゲームはいわゆるクリアされることなく、延々とミッションが続き、見たこともない「他人」とその早さや“レアキャラ”の有無や“巧さ”を競います。ゲームによってはピンポイントの時間で“ログイン”しなければ得られないような特典なども設けられています。

 

子どものみではなく大人の間でもネットやゲームに依存することは問題となっており、WHO(世界保健機関)が2018年に6月18日に公表した ICD-11(国際疾病分類 第11版)では、「物質使用症(障害)群または嗜癖行動症(障害)群 – 嗜癖行動症(障害)群」および「衝動制御症群」カテゴリにおいて「ゲーム症(障害)」が採用されました(WHO, 2018)。不登校との関連で言えば、ゲームのために生活リズムが崩れ、学校に行けない、学校に行く時間にゲームをやめることができない、という状態になる恐れがあります。

 

しかし、実際ゲーム依存にどの程度の人数がいるのか詳細な統計は出ていないため、推し量ることしかできませんが、経験上、とくに男児においてこの傾向が多いような印象を受けていますし、増加傾向にあるのではないかと思います。その他、インターネット(SNS含む)の使用に関しては、ネットいじめも増えている現状もあります。いじめに関してはインターネットによるもののみではなく、いじめの認知件数も増加しています(文科省,2018)。不登校とともに、いじめとどう向き合うかということは大きな社会問題になっていると言えます。

 

 

はじめにすべきこと

 

何よりも最初に行わなければならないことは、体調の確認です。このことに関しては、次の行うことが望ましい例で詳しく述べます。次に重要な点は、「学校でのいじめの有無」を把握することでしょう。体調に問題ない場合は、子どもは何か訴えたいことを、学校に行かないという表現で親に伝えようとしているのかもしれません。

 

しかし、率直に「いじめられているの?」と聞いても答えられない場合もありますし、自分からいじめられていることを告白することもハードルが高くなります。逆にいじめられていることがばれないように繕うこともあります。そのようなときには、子どもの所持品をそれとなくチェックしたり、学校の様子を教員や子どもの友だちから聞いてみるといった方法も重要になってきます。

 

実際にいじめ(殴られる、物が取られる、誹謗中傷を受ける、明らかな集団による無視があるなど)がある場合は登校させてはいけません。いじめに負けないように、強くならなければいけないなどは論外です。学校と協力し、いじめのない環境を作ることが必要ですが、これが実際は大変困難なこととなります。転校なども含め、環境を調整することを視野にいれましょう。

 

ただし、対人関係に不安を持っていると、いじめられていると勘違いしてしまっている場合もありますし、一度いじめにあうと、対人関係に不安を持ってしまう場合もあります。その場合は、専門家や学校の教員と連携して本人の助けを行うことが重要となります。頭ごなしに「いじめなんてない、気のせいだ。」と言っても、本人はいじめだと思っているので、解消するのは容易ではありません。専門的な支援を求めましょう。以下、行うことが望ましい例をあげていきます。

 

行うことが望ましいことを挙げます。

 

(1)学校や専門家、地域のなかに子どもの生活の質を上げてもらえる仲間を作る

(2)子どもの価値観を共有する

(3)子どもの行けるところを探す

(4)子どもと親と話し合いながら家のルールを決める

 

 

(1)学校や専門家、地域のなかに子どもの生活の質を上げてもらえる仲間を作る

 

医師との連携

 

学校に行けないことはさまざまな要因から起こります。例えば、子どもの体調が悪い場合も学校へは行けなくなります。そのために、体調に問題ないか、小児科医の診察などを受けましょう。子どもが体調不良を訴えているときには、子どもに身体的な異常がないか確認しましょう。子どもが体調不良を訴えない場合もありますが、身体のチェックは行うとよいです。詐病(仮病)の場合もあると思いますが、詐病とは決め付けずに、きちんと医師に確認してもらうことが重要です。

 

私の経験では、腹痛を訴えていたが、「怠けずに学校に行け」と父親に言われ学校に行っていた方がいます。ときおり痛みが和らぐので、本人も気のせいかもしれないと思ったようですが、数日後、痛みが継続するために病院で診察を受けた結果、胃潰瘍だったというケースもありました。

 

その他、極度に不安が高い(つねに人目を気にする、こだわりが激しくささいなことで爆発的に“キレ”てしまうなど)や、気分の浮き沈みが著しい(死にたいと頻繁に言う、普段より明らかに動きが緩慢、逆に普段に比べてテンションが高いなど)、生活リズムが崩れているなど、があれば、児童精神科の医師の診察を受けることも必要になってきます。これらは適切な治療を受けることで改善される可能性が大いにあります。

 

 

学校の教員との連携

 

学校へ行けない子どもがいることは、ほぼすべての教員は理解していることでしょう。協力を求め、一緒に子どもの生活を豊かにするための手立てを相談しましょう。重要な点は登校を強要することも、学校へ来ないことを助長することもないように、子どもの行うことを支えることです。

 

気をつけなければならないことは、教員が本人を必要以上に励ましたり、クラスメイトからの励ましを本人に伝えたりすることは控えたほうが良いです。なぜならば本人にはプレッシャーになってしまい、ただでさえ学校に行けてない状況が良くないとわかっている子どもにとっては、害となってしまう場合もあるからです。

 

教員とのつながりを維持できるようなかかわりを行うことが望ましいです。例えば、電話で話す。決まった時間に家庭訪問を行う。放課後に学校で会う。教室とは異なる別室で会うなど、子どもができる範囲で、また教員が行える範囲でつながりを継続していくことが重要です。

 

 

スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーとの連携

 

クラス担任の場合は、年毎に変わってしまう可能性があります。そこで、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、比較的学年に関係なく継続したかかわりを持てるような専門家とつながっておくことも重要です。

 

自分のことが分かってもらえる人が学校にいるだけでも子どもは安心します。子どもがこれらの人と会えない場合は、保護者の方だけでも相談に行くとよいと思います。

 

 

学校外の専門家

 

私の数少ない臨床経験の中では、学校の対応が不親切であった経験はありません。しかしながら、ニュースやケースを聞くと、中にはごく稀に学校の対応が悪い場合もあるようです。そのような場合のために、学校外の専門家から支援を受けることが重要であると思います。

 

児童精神科医はもちろんのこと、病院の心理室や開業している臨床心理士や公認心理師、カウンセラーなどがこれに含まれるでしょう。保護者が単独で学校側に対応を求めたりすると話がこじれてしまう場合があると思います。これらの人に間に入ってもらい、調整してもらうことも必要になるかもしれません。

 

 

どんな専門家を探せばいいのか

 

ここでの専門家とは学校の教員、児童精神科医や臨床心理士、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、そして新しく国家資格となった公認心理師を指します。では、どのような専門家と協力すればいいのかというと難しいです。残念ながら専門家といわれる人たちにもそれぞれの個性があり、子どもと合わない場合もあります。複数箇所訪れ、子どもに合った専門家を探すことが重要です。

 

子どもに合うといっても、休むことは重要ではありますが、いつまでたっても、ただ「休みなさい」や、「学校へは行かなくてもいいんだよ」、「様子をみましょう」といった提案しかされない場合は他を探してもよいと思います。できれば、今子どもができることをとらえてくれ、それを子どもの無理のない範囲で徐々に広げていくための段階的で具体的な目標を、子どもと一緒に作ってくれるような専門家が望ましいと考えます。

 

また、明確に見通しを付けることは難しいのですが、ある程度の見通しを提示してくれる方が望ましいでしょう。さらに、他の機関との連携も積極的に行ってくれる専門家が望ましいと思います。できれば保護者も、普段どのように子どもと接するといいのかアドバイスをもらうとよいでしょう。

 

 

注意点

 

さまざまなところと連携し、子どもと保護者を支えてくれる仲間を探すことが重要ですが、子どもを無理やりそのような場所に連れて行くことは望まれません。また、嘘をついたり、偶然を装うことも望まれません。子どもが専門家と会う場合は、子ども本人が納得をして、できる範囲でかかわりを持たせることが重要です。

 

私は母親が私のもとに相談に訪れてから、子ども本人に会うまで半年を要したケースを経験しました。その間は、母親から私が会ってみたいといってるよ、とだけ子どもに伝えるように促していました。【次ページにつづく】

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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