わが子が学校に行けなくなったら

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(2)子どもの価値観を共有する

 

現代は多様化の時代です。私たち大人はさまざまな経験の中で、自分の中で作成した物差しによって子どもを見てしまいます。そのような大人から見れば、子どものしたいことはときに突拍子もなく、大人からすればそんな甘い考えでは無理だと思われることが多々あります。しかし、それを言葉で否定したところで、子ども自身が受け入れられないことはよくあります。

 

私は、学校に行かず、YouTuberになりたい、声優になりたい、ゲームがしたいと面接で言われたことが何度かあります。その場合、私はぜひやってみようと伝え、YouTuberや声優やゲーマーになるためにどのようなことが必要か、子どもと一緒に考えます。YouTuberなら実際に動画を作成してもらったり、声優なら声優の学校へ見学に行ってもらったり、ゲーマーならばゲーム大会に出場してもらうことを促します。なぜならそこには必ず社会的なかかわりが必要になったり、家から出なければならないからです。また、子どもが何に興味を持っているのかがよく分かります。そして何よりも、これらを継続することは子どもが考えているよりも多大な努力を要します。

 

残念ながら今までのケースで、実際にYouTuberになったり声優になったり、ゲーマーになった子どもはいませんが、これらも子どもの将来の選択肢の一つでしょう。ただし、とくにYouTuberの場合は、不特定多数の他者からの誹謗中傷の可能性があることを伝えたり、他者を傷つけるような投稿などは行わないことなどを約束してから促しています。

 

 

(3)子どもの行けるところを探す

 

学校へ行くことがすべてではありません。学校外でも、子どもの学びを促進できる場はあります。例えばフリースクールや適応指導教室、その他習いことなどでもいいでしょう。単純に外出でも構いません。子どもが積極的に行ける場所を探し、一緒に行ったり、子どもが単独で行けるようになることが大切だと思います。

 

 

(4)子どもと親と話し合いながら家のルールを決める

 

最初にも述べましたが、現代はネット社会のため、以前よりも簡単に情報を得られ、誘惑の多い環境となっています。そのような中で子どもが自分を律して行動することは困難だと思います。また、インターネットの使用のエチケットや、情報教育について学校でも取り組んでいます(文部科学省,2008)が、ネットいじめやインターネットトラブルが増えている現状では十分とはいえないでしょう(総務省,2018)。

 

スマートフォンの利用率は平成26年度から年々上昇しており、平成29年度では小学生で29.9%、中学生で51.8%となっています(内閣府,2018)。おそらく今後はさらに上昇を続けると予想されます。これらのことからも、まずは家庭内でのスマートフォンやパソコン、SNSの使用に関するルールを作成しながら子どもを守る必要があると思います。総務省のホームページにインターネットトラブル事例集があるため(総務省,2018)、それを参考にしながら子どもと話し合いルールを作成するとよいと思います。

 

私なりに要点をまとめると、(1)生活リズムを維持する、(2)他人の誹謗中傷を書き込まない、(3)個人情報となるようなものはSNS上に書き込まない、(4)困ったようなことや自分では判断できないようなことがあれば必ず親に相談する、といった内容が望ましいと考えます。気をつけることは、抑制するルールばかりを作らないことです。身の危険を防ぐため以外の抑制するルールを作成する場合(例えば使用時間など)は、それが緩和される条件も提示することが重要です。そのようにルールを作成することで、どのように使えば良いのか学んでいけると考えられます。

 

次に行わないほうが望ましい例を挙げます。

 

(1)無理やり学校へ行かせる

(2)原因を追究する

(3)学校へ行ってもらうために子どもの言いなりになる

(4)不安を助長する

 

 

(1)無理やり学校へ行かせない

 

多くの保護者の方は、無理やり学校へ行かせることは逆効果だということは、昨今の不登校に関するニュースなどからも頭では分かっているのではないでしょうか。また、他人のお子さんが学校に行けなくなった場合には、冷静に「無理やり学校へ行かしてはいけないよ。」とアドバイスもできるかもしれません。

 

しかし、おそらく自分の子どもが学校へ行かなくなった場合は、そのような考えは頭の隅に行ってしまい、自分の子どもが学校に行けなくなったことを受け入れられなくなります。もし無理やり学校へ行かせることで、学校へ行けたとしても、多くの場合は別の問題が起こってくることでしょう。まずは、自分の子どもが学校へ行けなくなったことを受け入れることの難しさを理解しましょう。そのうえで、学校に行かないことを叱っても決して好転はしないことを頭の中で繰り返しましょう。

 

学校へ行けないのは学校へ行っても本人が楽しめることがない、あるいは苦しい、つらいことがあるために行けないのです。さらに家にいると叱られ、つらい目に合いうようならば、子どもは逃げ場がなくなってしまいます。叱るだけではなく励まして学校へ行かせようとすることも同じことです。励ましてくれるから行かないと、親に悪いから、という理由で学校へ行ったところで、学校がつらい環境であることに変わりはありません。きっと長くは続かないばかりか、叱られることと同様、逃げ場がなくなってしまいます。

 

 

(2)原因を追究しない

 

次に、いじめではないことが明らかとなった場合は、「本人のせいにしない」ことです。不登校はさまざまな要因から起こります。決して、「意志・心の弱さ」や「性格の問題」から起こるものではありません。同様に「育児のせいにしない」ことです。私が相談を受ける上で、家族(とくに母親)は、「私の育て方が悪かったのでしょうか。どうしてこんなことに。」とおっしゃる方が多くいます。

 

子どもの問題は親の問題であるとする文化的な背景があるのか私には分かりません。しかし、親は子どもがこの状態になったのは親のせい、なので周囲に相談するなんて恥ずかしい、と感じてしまったり、自分で何とかしなければ、と思い込んでしまったりする場合があります。私はたいてい保護者の方とこのような話をする場合は、「それは分かりません。」と答えた上で、「なぜ不登校になったのかではなく、どうすれば子どもの生活が充実するのかという視点に立ちましょう。」と答えます。

 

原因を追究しない理由は、学校に行けなくなるきっかけと、学校に行けないことが継続することとは理由が異なる場合が多いからです。いじめなど明確な理由がある場合は別ですが、本人も学校にいけない理由が分からない場合も多くあります。また、きっかけが判明しても登校につながらないことはよくあります。さらに、「何で?」と聞くことで、子どもを追い詰めていくことになります。

 

 

(3)学校へ行ってもらうために子どもの言いなりにならない

 

これもよく見られる保護者の行動パターンです。学校へ行くからゲーム機を買って欲しい。学校へ行くからWi-Fiをつないで欲しいといった子どもの要求に対しては、何かができるようになったら希望をかなえるというかかわり方が望ましいです。「何か」というのは「学校に行く」ことのみではなく、洗濯や買い物、掃除などといった、子どもができる範囲での「家事」や習い事など、子どもの社会的な活動を広げるための活動すべてを含みます。

 

あまりに高額な要求の場合は達成度などを考慮しましょう。そして欲しいものがとくにない場合はおこづかいでも構いません。また子どもが欲しいものがある場合は、親が代わりに購入するのではなく、本人に購入させたほうがよいでしょう。「何か」を行うよりも先に希望をかなえてしまっては、「何か」を行う可能性は低くなります。子どもが「何か」を行った結果、子どもにとってよいことが起こるほうが、子どもが自発的に行動する可能性が高まります。

 

 

(4)不安を助長しない

 

いざ学校へ行くとなったときに、必要以上に「大丈夫?」とたずねることはやめましょう。保護者としては不安がたくさんあるとは思いますが、子どもも不安でいっぱいです。大丈夫とたずねられると大丈夫ではないでしょう。

 

私が支援した例では、2ヶ月程度教室に入れなかった子どもが、支援の結果いよいよ教室へ行こうと思い、家を出たことがありました。しかし、学校の下駄箱に着くと不安になってしまい家に帰ってしまいました。その子に対して母親は、「そこまで行けたなら明日は下駄箱に靴がしまえたら良いね。」とだけ伝えたそうです。翌日からその子は教室に入れるようになりました。

 

不安というのは、大丈夫じゃないから不安になります。不安を軽減するためには実際に行動し、大丈夫だったという結果を得る必要があります。「大丈夫?」と聞くことで不安な場面が想起され、実際に行動に移せなくなってしまう可能性が高まります。「いってらっしゃい」など少し背中を押してあげたり、帰ってきたとしても本人の行動を評価することが重要だと考えます。

 

 

最後に

 

以前にも述べたように、学校に行かないこと自体がダメなことではありません。学校はあくまでも学ぶ手段を提供してくれるところです。学校外で同様の場所があればそちらに通うということで問題はないと思います。問題なのは学校に行かず家にこもり、抑うつ的になってしまうことです。

 

周囲から「学校は行かないといけない」、「学校へは行くべきだ」と言われても、多くの子どもはそのようなことは頭では分かっています。親から見ると、それは怠けていると見えてしまうかもしれません。さらに周囲からそういわれることで、「自分は学校にもいけないダメな子」という認識が強まってしまうかもしれません。そうなると、さらに子どもは自分の部屋に閉じこもることでしか自分を守れなくなってしまいます。

 

残念ながら学校以外の場所で、子どもがさまざまなことを学ぶ機会を提供できる機関は日本に多くはありません。そのようなところを家族で探し求めることが、子どもを支える上で重要でしょう。

 

不登校はダメなことではなく、自分をみつめる機会となったり、学校へ行かなかったからこそ得られる価値観や経験が必ずあります。子どもの今後の長い人生の中、そのようなことを大切にすることが必要だと私は考えます。

 

参考文献

・文部科学省(2018)平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について,

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/__icsFiles/afieldfile/2018/10/25/1410392_2.pdf.

・World Health Organization (2018) The 11th Revision of the International Classification of Diseases (ICD-11),

https://icd.who.int/browse11/l-m/en#/http://id.who.int/icd/entity/1448597234.

・文部科学省(2008)「教育の情報化に関する手引」検討案,http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249662.htm.

・総務省総合通信基盤局消費者行政第一課青少年担当(2018)インターネットトラブル事例集(2018年度版),http://www.soumu.go.jp/main_content/000590558.pdf.

・内閣府(2018)平成29年度 青少年のインターネット利用環境実態調査,https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h29/jittai_html/index.html.

 

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vol.264 

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