いじめを止めたい大人たちへ ―― 「ストップいじめ!ナビ」第二弾更新にあたり

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性的指向は変えることができない

 

荻上 あらゆる社会問題には、とくに当事者になりやすい「ハイリスク層」がいます。

 

その代表的のもののひとつとして、性的マイノリティの当事者がいます。アメリカの場合、ネットいじめの被害経験は、性的マイノリティの生徒はそうでない生徒の二倍にのぼると指摘されています。

 

そうした当事者たちがいじめを受けた際に、どうやって対処したらいいのかという情報は圧倒的に不足しているんですね。今回「ストップいじめ!ナビ」では、LGBTといじめの関係について解説したコーナーを追加しました。「いのち リスペクト。ホワイトリボンキャンペーン」共同代表の明智カイトさんに、コーナーの主旨をご説明いただこうと思います。

 

明智 性的マイノリティやLGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイ・セクシュアル、T=トランスジェンダーの略)といった言葉になじみのない方も多いと思いますが、多くの性的マイノリティの当事者が周囲からのいじめに苦しんでいるという現状をみなさんに知って頂きたいと思います。

 

レズビアンやゲイといった、同性に魅力を感じ、恋愛感情を抱く人々については、文化や時代によってさまざまな解釈をされてきました。今の日本では「同性に魅力を感じることは一過性のものであり、いつかは異性を好きになることができる」とか、「同性愛はライフスタイルや趣味のひとつ」と間違って捉えられていることが多くあります。

 

同性愛というのは「性的指向」です。異性愛者の男性に対して「男を好きになれ!」と言っても無理であるのと同様に、同性愛者に対して「異性を好きになれ!」といっても無理なんですね。「同性愛は趣味や嗜好である」という捉え方はまったくの誤解であり、「同性愛は変えることのできない揺るぎないものである」ということをわかって頂きたく思います。

 

井桁 なるほど。バイ・セクシュアルというのは両方の性別に恋愛感情を抱く指向の人のことですよね。では、トランスジェンダーとはどのような人のことですか?

 

明智 トランスジェンダーとは、心と体の性別が一致しない人のことを指します。男性の体で生まれても、成長していく段階で「心は女性である」と認識する人がいます。心と体を一致させるために、性転換手術や戸籍の性別を変更する人も多くいます。

 

テレビでは、性的マイノリティは「オネエ系」という言葉で一括りにされていますが、そのなかには同性愛者とトランスジェンダーが混在しています。自分が望んでいる性別が生まれたときと逆であればトランスジェンダーであり、性自認は一致していても恋愛対象が同性であれば同性愛者です。このふたつはまったく違ったものなんです。

 

 

性的マイノリティを当たり前に受け入れる

 

明智 では、いじめのハイリスク層である性的マイノリティの子どもたちが安心できる環境を作るにはどうすればいいのかを説明していこうと思います。「自分はLGBTかもしれない」、「自分は周りと違うのかもしれない」と思っている子どもたちは、自分の悩みをどのように対処すればいいのか戸惑うことが多くあります。また、カミングアウトするには相当な勇気が必要ですし、リスクも伴います。したがって、子どもたちがカミングアウトをするか否かにかかわらず、安心して生活できる環境を作る必要があります。

 

性的マイノリティの子どもたちには、「自分らしく生きてはいけない」、「自分の好きな人を好きになってはいけない」という圧力を感じながら生活をしている子が多くいます。誰にとっても、そんな生活はとてもストレスフルです。周りの大人たちや学校の先生はそういった現状をしっかりと理解した上で、生徒たちのなかに当事者がいるかもしれないという意識を持たなければいけません。

 

どんな子どもでも同じように尊重される権利があるはずですから、学校側は「性的指向や性自認にかかわらず、すべての生徒を守る」ということを明示していく必要があります。大人たちが性的マイノリティの存在を当たり前のものとして意識していくことによって、子どもたちが性的マイノリティのクラスメイトを当たり前に受け入れていくことにもつながるのではないかと思います。

 

井桁 実際のところ、どれくらいの割合で性的マイノリティの当事者がいるのですか?

 

明智 日本では統計調査が行われていないので、海外の統計調査などからの推測ですが、30~40人のうち1人の割合で性的マイノリティの当事者がいると言われています。

 

荻上 単に自分が気づいていないだけでも、性的マイノリティの当事者は必ず周りにいる。積極的に何かをしろというわけではありませんが、積極的・無配慮に攻撃している状態を解除することからはじめるべきであろうと思います。

 

明智 そうはいっても、いきなりLGBTの子どもに相談やカミングアウトをされたら、対処に困りますよね。その時に一番大切なことは、相談してきた子どものプライバシーを守ることです。本人の許可なく、その子の両親や友だちに相談内容を伝えることは避けてください。

 

なぜかというと、自分が性的マイノリティであることを家族に一番知られたくないと思っている子が多いからです。本人とじっくり相談した上で、この先どうすればいいのかを一緒に考えてあげる必要があります。また、さまざまな性的マイノリティ当事者による互助グループが相談に応じていますので、わからないことを積極的に外部団体に聞いてみるというのも有効な手段です。

 

 

ジェンダーハラスメントをなくす

 

明智 次に、ジェンダーハラスメントについてご説明したいと思います。ジェンダーハラスメントとは「男らしさ」や「女らしさ」から外れた行動を非難することを指します。たとえば、「女のくせに~」「男のくせに~」「男なんだから~」「女なんだから~」という言い回しですね。

 

これは「男らしい男」「女らしい女」でなければ認めないという認識に基づくもので、多様な性のあり方が人権として認められつつある現代の社会とは反対の考え方です。そして、ジェンダーハラスメントの被害に遭いやすい層としてLGBTの当事者が存在します。学校の先生が、ハラスメントであるとは思わずに、クラスの笑いを取るための道具としてジェンダーハラスメントを行っている場合もあります。

 

荻上 テレビの世界では「オネエ系タレント」と呼ばれる人たちが、自ら「オカマっぽい」ことをキャラ化し、笑いを取っていますが、それはテレビ空間だから成り立つことです。現実社会では、勝手なキャラを押しつけるからかいは、偏見とレッテルの押しつけとして機能し、当事者たちを傷つける原因になりうるということは意識されなければいけません。

 

「ストップいじめ!ナビ」性的マイノリティといじめページ;http://stopijime.jp/term_lgbt/

 

荻上 さまざまなことをお話しましたが、今回ご説明した以外にも「ストップいじめ!ナビ」にはいろいろな情報を掲載していますので、ぜひサイトをご覧いただければ幸いです。また、僕たちストップいじめプロジェクトチームは、ウェブサイトの制作だけでなく、自分たちでできることを全力でやり続けていきます。本日はありがとうございました。

 

(2013年1月8日 ニコニコ生放送「いじめを止めたい大人たちへ」より抄録)

 

 

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