セクシュアル・マイノリティ/LGBT基礎知識編

Q6 当事者はどのような問題に直面しているのですか? また、どのような社会的支援が必要なのですか?

 

セクシュアル・マイノリティは、その年齢や状況によってさまざまな問題に直面します。幼少期や思春期には、学校や家庭のなかで。あるいは成人してからは、職場や同性のパートナーとの生活の保障について。さらには年をとってからは、その年齢ならではの問題が生じてきます。ここでは、わたしが共同代表を務める「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」で取り組んでいる子どもたちの課題について、例をあげたいと思います。

 

幼少期の頃には、「なんとなく周囲との違和感を覚えていた」「自分が何者かわからなかった」「うまく説明できないがモヤモヤした」、あるいは「周りから、お前はみんなと違っていると言われて、自分でも自覚がないのに反応に困った」という体験をしている方が多いです。子どもをとりまく環境、つまり学校や家庭、地域社会においてもなんらかの受け皿が必要であることが予測されますが、もっとも深刻なのは、トランスジェンダーの子どもたちの性別の扱いに関する事柄と、いじめの問題だと思われます。

 

トランスジェンダーの子どもたちは、男女別の制服の着用、ランドセルの色、男女別のトイレや宿泊行事での扱いなどに、ときに引き裂かれるような苦痛を感じ、生活に支障をきたしたり、自分の存在を否定されたような衝撃を受けたりことがあります。調査によれば、医療機関を受診して性同一性障害と診断を受けた人々のうち、じつに4人に1人が学生時代に不登校を経験しており、その理由として「学生服を着ることが苦痛だった」などと語っていることがわかっています。

 

幼少期から思春期にかけて、「性のあり方」に揺らぐことは一般的によくあることではありますが、それが一時的なものであれ継続的なものであれ、子どもたちの訴えに対して柔軟な対応のできる周囲の環境づくりは必須だと思われます。文部科学省では、性同一性障害の児童・生徒への対応について、学校に対して適切な対応を呼び掛けていますが、実際には「大半の子どもたちは診断を受けられる環境にない」ため、診断の有無にかぎらず対応を検討する必要があります。

 

昨今では「ユニバーサル・デザイン」といって、障害の有無や老若男女の違いに関わらず、もともとの社会のシステムを誰でも使いやすいようにあらかじめ設定しておこうという考え方が提唱されることがありますが、学校のなかの「性」の扱いについても同様に、あらかじめ当事者がいることを想定するのが望ましいでしょう。具体的には、外部の専門機関や団体などと連携しながら、現実的な範囲での対応についてふりかえり検討していくことが期待されます。

 

いじめの問題も深刻です。国内の調査によれば、ゲイやバイセクシュアルの男性の約半数は、子どもの頃にいじめられた経験を持っています。いじめはもともと同性の集団内で起こることが多く、「男らしくない」あるいは「女の集団のなかで浮いている」子どもたちはターゲットにされやすい傾向があります。

 

本人としては、まだ自分がセクシュアル・マイノリティであるかどうかのはっきりとした認識は持っていなくて、なんとなくモヤモヤとしている段階であっても、周囲から「お前はなんか違っている」「オカマやおとこおんなだろう」と非難されてしまうことも多いことから、これは相当につらい思いをすることになります。

 

後になって「やっぱり自分は同性が好きかもしれない」「自分の性別は、本当は男/女じゃないかもしれない」と、本人がアイデンティティを確立しはじめたときに、そのときのネガティブな反応をまざまざと思い出すわけですから、「セクシュアル・マイノリティである自分なんて受け入れられない」「本当の自分は、こんなんじゃ生きていけない」などの強い自己否定に陥ることも多いのです。

 

LGBTの若者は、約6割が自殺を考えた経験を持ち、自殺未遂の経験も15%(ゲイ・バイセクシュアル男性の場合)などと、非常に「生きづらさ」を抱えている割合が高いのですが、その背景にあるのは、このように自己肯定を阻むような周囲の環境だと思われます。

 

いじめの問題を減らすには、さまざまな角度からのアプローチが重要ですが、セクシュアル・マイノリティに関するいじめについては、とくに周囲の大人の意識を変えることが重要です。いじめを相談する際にも、たとえば身体的な暴力などは「それはひどい」などと周囲から比較的理解がされやすいのですが、言葉の暴力や無視などの行為は周りからは見えづらく、さらに性的な事柄を含むいじめについては、羞恥心や密室でなされることなどから周りに訴えることへのハードルがとても高くなりがちです。

 

大人の側が「きみも周りに合わせたらいいのに」とか「もう少し男らしくしたら」など、セクシュアル・マイノリティに対する知識や配慮のない発言をすることで、子どもが今後いっさい相談をしなくなり孤立していくケースも多くあります。「ちがい」がいじめにつながらない環境づくりとともに、困ったときでも相談がしやすいような雰囲気づくりを心がける必要があります。

 

 

Q7 自分は当事者かもしれません。どこに相談すればよいのでしょう?

 

全国各地で、セクシュアル・マイノリティの当事者が集まれるような団体やグループが多く存在します。自分と似たような仲間と出会うことで「ひとりじゃないんだ」と安心できたり、いろいろな情報を得ることができるので(最初は勇気がいるかもしれませんが)出かけてみてはいかがでしょうか。

 

また、セクシュアル・マイノリティに関する電話相談をやっている団体も多くあります。

 

LGBTと周囲の人のための相談機関一覧(制作:QWRC);http://www.qwrc.org/soudan/soudan.html

 

こちらのサイトでは、それぞれのニーズに合わせた相談先の一覧がのっています。「名前を名乗る必要がなく、嫌になったらいつでも切っていい」という電話相談の特徴を活かして、話せることから話してみるのもいいかもしれません。また、各地の団体やグループ、イベントの情報などを尋ねてみるのもよいでしょう。

 

 

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NHK「ハートをつなごう」LGBT BOOK書籍

作者石田衣良, ソニン, 杉山文野, 茂木健一郎, リリー・フランキー, ピーコ, 竹内佐千子, 針間克己, 平田俊明

クリエーターNHK「ハートをつなごう」制作班

発行太田出版

発売日2010年7月30日

カテゴリー単行本

ページ数143

ISBN4778312287

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