東松島市、デンマークのロラン市との震災復興協定を締結

東日本大震災からの復興を目指す宮城県東松島市は、去る7月9日、デンマーク・ロラン市との連携・協力協定を締結した。また、ロラン市にある持ち株会社で、同市の再生可能エネルギープロジェクトやインテリジェントなエネルギーソルーションに対して融資するLOKE A/S(Lolland Energi Holding)が、在日デンマーク大使館の立ち上げた東松島復興コンソーシアムのメンバーになるなど、日本とデンマークの地方自治体のユニークな復興コラボレーションが活発化している。

 

 

再生可能エネルギーを柱とした復興へ

 

デンマークからは、東北大の震災支援チームの紹介で、昨年の大震災直後からフランツ=ミカエル・スキョル・メルビン前駐日大使が東松島市を幾度となく訪れ、同年6月にはフレデリック皇太子も東松島市を訪問、子どもたちと給食やサッカーで交流を図るなど、同市を通じて日本との親交を深めている。デンマークの企業から寄せられた東松島市への義援金も1億2千万円を超え、レゴ社が同市の子どもたちのためにおもちゃなどを寄付するといった物的支援も行なわれてきた。

 

津波で壊滅的な被害を受けた東松島市は、被災以降、復興へ向けて、モデルケースとなる事例や情報を国内外から幅広く集めていた。その過程で、ロラン市が基幹産業であった造船業の衰退を経て、自治体の基本政策を環境エネルギー事業へと転換し、地域の再生を図ったことを知る。東松島市も、再生可能エネルギーを柱とした復興を目指したいと考えていたことから、少しずつ両市の交流が始まった。

 

今年1月には、菅直人前総理と共に、東松島市の復興政策課の方々のロラン市訪問が実現し、藻イノヴェーションセンターや水素コミュニティなど、産官学、それに民も連携した『トリプル・ヘリックス』の手法で行なわれている環境エネルギープロジェクトを視察。さらに、震災からちょうど1年が経った3月には、ロラン市で環境エネルギープロジェクトを手がける『ミスター・エネルギー』レオ・クリステンセン市議が来日して東松島市を訪問。日本全国11都市で選定された環境未来都市のひとつとして、東松島市の復興プランにおいてどのように協力し合えるかを話し合った。

 

そして、5月1日には在日デンマーク大使館が発起人となり、Grundfos、BWSC、DHI、Plan Architgects、Scandinavian Livingの5社と共にコンソーシアムを設立。7月にはロラン市長をはじめ、ロラン市の産官学の代表も来日を果たして、9日に在京デンマーク大使公邸において、A. カーステン・ダムスゴー大使立ち会いのもと調印式を行ない、LOKEもコンソーシアムのメンバーとなった。

 

コンソーシアムの目的は、東松島市の持続可能な町づくりのためのアイデアやソルーションを提供すること。設立の最大のメリットのひとつは、コンソーシアムを通じて、東松島市のプロジェクトに産官学で関わっていけるということにある。そうすることで、これまで日本では取り組みがなかったり、法律上難しかったりしたプロジェクトや技術開発も、東松島市という、いわば『特区』を通して行なうことで、ブレイクスルーにつながる期待も高まっている。

 

 

東松島市とロラン市をつなぐ「藻プロジェクト」

 

東松島市とロラン市との間では、震災復興に向けた連携および協力についての協定が締結された。東松島市の阿部秀保市長と、ロラン市のスティ・ヴェスタゴー市長が協定書に調印。具体的には、①東松島市における総合的な再生エネルギー政策に関すること、②東松島市における再生可能エネルギー技術、環境教育、人材育成に関すること、③再生可能エネルギー技術の地域利用に関する実験などに関すること、④再生可能エネルギー資源の活用と保全に関することについて連携及び協力をする、ということで合意している。

 

現在、両市の間でコラボレーションをしていこうとしている分野のひとつが、藻のプロジェクトだ。ロラン市では現在、藻を様々な方法で利用する研究や実証実験が盛んに行なわれている。ひとつは調整池や遊水池を使った藻の培養で、ここで畑から海に流れ出る水を浄化し、その養分と空気中の二酸化炭素を吸い、光合成をして育った藻からプロテインやオイル、色素成分など高付加価値成分を取り出してそれを産業化し、残りをバイオガス化してエネルギー源にする。畑からの水を浄化する過程で、リンを回収することも期待されており、この成分が残ったカスを天然の肥料とすることで、農地を守ることもできる。

 

もうひとつは、下水処理に藻を使う実証実験で、これまで二次処理で利用されてきた微生物に代わり、藻を利用する。ロラン市では、下水処理場に隣接されている地域暖房施設から出る二酸化炭素を利用することで、藻の光合成を促すほか、ここでもリンの回収が重要なポイントとなる。成長した藻はバイオガス化してエネルギー源として利用し、リンを含んだ残りカスは、天然の肥料として利用する。

 

東松島市は伝統的にノリやカキの養殖が盛んなエリアで、海のバイオマス(ブルーバイオマス)に関する知識に長けている。一方、ロラン市には、北欧最大の藻イノヴェーションセンターを有し、淡水における藻の研究が進んでいるが、海水におけるブルーバイオマスの研究についてはまだこれからの分野である。また、日本とデンマークでは環境が違うので、培養できる藻の種類や、得られる実証実験の結果も異なるはず。

 

だからこそ、これまでロラン市や藻イノヴェーションセンターで取り組んできた藻の研究の成果を生かしながら、両市で実証実験に取り組むことができれば、東松島市にとっては、これまでの伝統や地域の資源を生かした新たな産業を生み出す契機となり、同時に再生可能エネルギーの生産と地産地消、それに二酸化炭素の排出問題、さらには農地保全にも取り組むことができる。

 

一方、ロラン市にとっては、東松島市での実証実験の結果をシェアすることで、さらに藻の研究と藻を利用した産業の構築に役立てることができる上、将来的に目指したいと考えている、海洋ブルーバイオマスの有効利用(藻をはじめ、海藻、魚介類の養殖など)のための知恵を、東松島市から得ることができるのである。そこから、両市とつながりのある大学や研究所とも連携が進み、産業化へ向けて、地域の、もしくは新規の民間企業とのつながりもできてくるはずである。

 

 

 

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