被災地から東京に何を問いかけるか

大手メディアは東京だけでなく、各地方に支局があり、その土地の様子を全国に伝えることができる。その土地に住みながら被災者と同じ目線に立ち、取材を繰り返す記者は、東日本大震災と復興をどのように感じているのか。そして誰に、何を伝えたいと思っているのか。朝日新聞社南相馬支局の佐々木達也記者に、被災地で取材するさいに必要な心がけ、本社と支局の姿勢の違いなどを荻上チキが伺った。(構成/金子昂)

 

 

被災地から東京への問いかけ

 

荻上 「復興アリーナ」では、東日本大震災や復興に関して、様々な活動を複数の視点から検証し、いずれ起こる次の災害に参照できる教訓を残したいと思っています。今日は、震災から現在までの被災地の状況について、現場取材を続ける記者の視点から伺いたいと思いまして、朝日新聞社南相馬支局の佐々木達也記者に、取材をお受けいただきました。

 

さっそくお聞きしたいのですが、佐々木さんは震災以前、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。

 

佐々木 1984年に朝日新聞社に入社しました。初任地は山形県です。地域を数カ所勤務したのちに、東京本社の社会部に所属し、その後、福岡にある西部本社の文化部で、映画や演劇を担当していました。震災の1年半前に東京本社の文化事業部に移り、記者職から離れていました。

 

荻上 南相馬支局に着任されることになったいきさつをお教えください。

 

佐々木 50歳を過ぎて、残り何年かの世界になってきました。もともと記者出身でしたから、記者に戻りたいという思いが強くありました。出身は仙台です。両親はいまも仙台市に住んでいますし、被害の大きかった石巻市にも親戚がいます。そういうことがあって、春の段階から地方に出たいと申し出ていました。特に被災三県のどこがいいと指定したわけではないのですが、南相馬支局に空きができたので、9月20日付で着任しました。

 

荻上 着任して初めての取材はなにを取り上げられたのでしょうか。

 

佐々木 南相馬支局は、一人の記者で南相馬市、相馬市、新地町、飯舘村、浪江町、双葉町といった地域をカバーしています。ただ、いまは飯舘村など3町村は全住民が避難しているので、私は南相馬市、相馬市、新地町を取材して、その他の町村は、避難先を担当する記者に任せている状態です。南相馬市は昨年9月末に緊急時避難準備区域が解除されました。解除が住民にどういう影響を与えるのか、行政はなにができるのかといったことを最初に取材しました。

 

荻上 伝えなくてはいけないことはたくさんあったと思います。どういうところを重点的に伝えようと思ったんですか。

 

佐々木 被災者が考えていることを、東京の人間に、どのように伝えるかを念頭に取材しています。被災地ではいろいろな特ダネが飛び交っています。特ダネ記者はそれをみつけることが仕事だと思いますが、この土地で生活をして、取材をする、全国紙の記者の役割は、この土地に住んでいる人たちのことを東京の人間にどれだけ伝えるかだと僕は解釈しています。

 

よく、非常に紋切型で、東京の机の上で考えたのであろう記事をみかけます。あるいは、いまの風潮として、黒か白かはっきりさせて、わかりやすくさせることによって、同調を煽る作り方の記事がある。でも人間は黒と白に完全にわけられるものではありません。どちらも持っているものです。そういう姿を描きたいと思っています。

 

荻上 センセーショナルなものを取り上げて、読者を煽るような「特ダネ」とは異なる仕方、ということでしょうか。

 

佐々木 特ダネが悪いといっているわけではありません。ただし、なにか一つのことを、さもそれがすべてかのように書かれている記事があるとしたら、いったいどこまでが本当なのだろうかと感じることはあります。完全に否定するつもりはありませんがみんなが暮らしている中からみえてくる生活を描きたい。そしてそれを、「東京の人はどう考えますか?」と問いかけていきたい。

 

 

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