なぜ除染ボランティアに参加し、そしてなにを思うのか

荻上 昨年末、特定のNPOに所属せずに個人でさまざまな支援活動に参加しているボランティアのみなさんにお集まりいただき、ボランティアの現状や課題についてお話いただきました(「働きながらできるボランティア支援 個人ボランティア座談会 https://synodos.jp/fukkou/3593 」)。

 

今日はボランティア活動のなかでも、除染作業をされているみなさんにお集まりいただき、除染ボランティアの課題や成果についてお話いただきたいと思っています。

 

 

ボランティアに参加しない言い訳ができなくなった

 

荻上 まずはみなさんの自己紹介とボランティアに参加されたきっかけをお聞かせください。

 

古口 古口です。前回の座談会にも参加させていただきました。前回お話したとおり、宮城・岩手のボランティアに参加し続けてきたのですが、まだ人手が足りないところがたくさんあるので、むしろ人が避けている場所に行かなくちゃという想いが募り、除染ボランティアに参加するようになりました。

 

小林 小林です。以前はイギリスのコートルズ社の日本法人で働いていました。日本でいうと東レみたいな会社です。いまは退職して年金暮らしです。

 

今日の座談会に声をかけてくださった古口さんとはちょうど1年前の2012年1月くらいに、福島県にある常円寺が中心となり活動している「花に願いを」の除染活動で知り合いました。常円寺はわたしたちが参加する前は、ひまわりをたくさん植えて吸線作用で除染ができるかどうかを試みるプロジェクトを行っていたようです。

 

わたしが参加するきっかけとなったのもそうですが、現在の除染ボランティアが始まってから人が集まり出しました。線量の高いホットスポットが点在していたので、物理的に取り除こうとすれば人が必要になるので募集をかけたのだと思います。

 

荻上 いままでにボランティアに参加されたご経験はありますか?

 

小林 東日本大震災以前に参加したことはありませんが、常円寺の除染ボランティアに参加する以前は、月に1度、長くて1週間ほど、気仙沼市や南三陸地方、大槌町、釜石市、陸前高田市などで瓦礫撤去のボランティアをしていました。

 

今回、ボランティアに参加するきっかけとなったのは2011年の5月頃にとある新聞記事を読んだことです。その記事には、東北三県に集まったボランティアは当時のべ30万人。しかし阪神淡路大震災では2、3ヵ月後には100万人集まっていたと書いてありました。あれだけ広い地域が被害に遭ったのに、たったこれしか行っていないなんて、と愕然としたんです。初めて参加したのはたしか2011年6月です。

 

荻上 ご自身が被災された経験はありますか?

 

小林 いえ、ありません。

 

阪神淡路大震災のときは会社を預かる身だったので、持ち場を離れるわけにもいかず。なにもできなくて申し訳ない思いをしていました。良心の呵責といいますか……。いまは、言ってみればもうお役御免の立場ですし、以前と違って行かないことに言い訳もできないので。

 

荻上 なにか募集を見てボランティアに参加されたのでしょうか?

 

小林 インターネットでボランティアを探していて、気仙沼市社会福祉協議会の募集を見つけたんです。初めて現地に入ったときはやはり圧倒されましたね。大変なことになっていることを実感しました。

 

 

プロボノとしてボランティアに参加する

 

荻上 ありがとうございます。詳しいお話はのちほどお聞かせください。次に八下田さんお願いします。

 

八下田 八下田です。普段は横浜の小さなベンチャー企業で、カーナビなどの電子機器の企画・開発を行っています。

 

わたしは大学の原子核工学科で修士を取得しています。仕事があるためになかなか遠くまでボランティアに行けず、震災から一ヶ月くらいはインターネットに原子力事故・放射線に関する書き込みをしていました。初めてボランティアに行ったのは2012年4月1日かな。それからはほぼ毎月行っています。

 

古口 八下田さんとは2012年の夏ごろに常円寺で出会ったんです。住職に連れられてご飯に行ったときにちょうど前の席にいらっしゃって。放射能や原子力にものすごく詳しかったので驚きました。南相馬など福島でお会いするボランティアさんのなかには、少なからず原発等に関して正確でない情報に踊らされたり、扇動屋に振り回されてしまう方がいました。八下田さんみたいにきちんとした専門知識の裏づけがある方を何人かお友だちに持つと、わたしのような専門外でもリテラシーがつきますね。

 

荻上 常円寺の活動はなにで知ったのでしょうか?

 

八下田 インターネットですね。仕事が落ち着いた頃に、大学で専攻していた分野だし、なにかできることがあるだろうと思って調べていたんです。

 

荻上 八下田さんは、いわゆる「プロボノ」にあたると思いますが、はじめて常円寺で除染ボランティアを行ったとき、放射線の測定方法など、プロの目からみてどのように映りましたか?

 

八下田 除染方法はどこも試行錯誤です。経験がありませんからね。除染活動を行っているところはいくつか見てきましたが常円寺が一番しっかりしていたと思います。スタッフ・常連さんによる指導や機材もそろっていましたし。

 

荻上 他にプロボノの方はいらっしゃいましたか?

 

八下田 原発の設計に従事していた人、国の機関や大学の研究者もいました。専門家でなくても、放射線に対する防護の三原則「短時間で済ませること、線源から離れること、遮蔽すること」を考えながら作業している方もいたので、放射線に関する知識を持っている方は複数いたようですね。

 

 

八下田好一さん(51歳・左)と古口正康さん(38歳)

八下田好一さん(51歳・左)と古口正康さん(38歳)

 

 

原発問題に対するメディアや行政への不満

 

荻上 小林さんは東日本大震災以前に、放射能物質や原発に対する知識や関心はお持ちでしたか?

 

小林 八下田さんほどではありませんが、伊方原発計画に対する1970年代末の反原発訴訟をきっかけに関心を持ち、原発に関連する本は読んでいました。その後、チェルノブイリ原発事故が起き、国内でも国際的にも反原発運動が盛り上がった。わたしはそんな世代の人間です。

 

だから今回の原発事故に対するメディアの不勉強さには憤りを感じていました。反原発運動を見ていながら、まるっきり素人のように振る舞っていた。あの時の経験と知識はどこにいってしまったんだ、と。

 

八下田 報道だけでなく意味が良くわからない、という点で政府の発表自体もおかしかったように思いますね。大学の研究室のメーリングリストでは、どの物質が検出されているのかが話題になっていました。ヨウ素やストロンチウムなど核種ごとに危険度は違いますから、シーベルトで一律に発表されても困る。

 

荻上 お二人とも、原発問題に対する行政やメディアの姿勢に不満があったわけですね。

 

八下田 行政に不満があったと言っていいのかはわかりませんね。当時、行政はなにも想定していなかったと思いますし。報道の方も行政の間違いに何も修正しようとしていなかったし、間違った解説をしていたところもありました。

 

小林 わたしは明確に反原発なので不満はありましたよ。

 

荻上 反原発への意識は除染ボランティアへのモチベーションと一致していますか。

 

小林 あまり関係ないです。年寄りが普通のボランティアで足手まといになるくらいなら、年齢が功を奏する除染ボランティアに、と思ってシフトしたところがあります。

 

 

小林伸吉さん(64歳)

小林伸吉さん(64歳)

 

 

 

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