震災から考える現場判断の重要性と今後の日本のあり方

震災で顕在化した日本の諸問題

 

飯田 今回の東日本大震災では震災対応に関する問題だけでなく、日本全体が抱えている高齢化やコミュニティーの崩壊といった社会問題を顕在化させたように思います。

 

本田 「絆」という言葉が流行したように、希薄になりつつあった人と人の繋がりが大切にされるようになったと思います。費用対効果や効率性という言葉の中で、小泉政権以降の限界集落、消滅集落にはあまりお金をかけない風潮がありました。しかし、今回の震災で少子高齢化と人口減少が起きている日本で、地域やコミュニティーがいかに大切か、認識するようになりました。

 

飯田 効率という言葉は、目先で得なことしかやらないことではないんですよね。来年の予算について考えれば、たしかに莫大なお金のかかるインフラ整備に予算をつぎ込まないほうが良いでしょう。でもインフラ整備も、災害の備えもしないことは、30年くらいの長い視点で考えると、じつは効率的ではないかもしれません。

 

首都直下型地震が起きたときに、東京をどこがバックアップするのかという話はまったくできていない。東京が被災した場合、県や地方だけでなく、国そのものも機能しなくなるでしょうから、遠野市や住田町のように自らが判断し動き出さなくてはどうにもなりません。「プッシュ型支援マニュアル」が遠野市や住田町から出てきたことは非常に興味深いことです。

 

本田 今回の地震をきっかけに、自治体主導の方向にもっていくこともわれわれの義務だと思います。犠牲者の方々に報いるためにも。

 

飯田 最近では、県という行政単位が時代にそぐわなくなっているという議論がしばしばなされます。

 

本田 今はインターネットやメールで、遠野市のような小さな市でも直接、霞ヶ関と向き合う機会も増えています。昔は、まず県の出先に行って、県の本庁に行って、ようやく霞ヶ関にたどり着いて、たどり着いたらたどり着いたで「なんで今更こんなものを」と言われていた。今では県を通さなくても、われわれのような自治体に、情報を受け止めるセンスとその情報を消化できる能力がある職員がいれば、国とやり取りできるようになったんですよね。

 

飯田 情報が瞬時に地球の裏側まで届く時代に、県という制度は「帯に短し襷に長し」ではないかという指摘は多くなっています。たとえば自治体ほど地域に根差した仕事をするには県は大きすぎる。一方で、国の代わりになるには小さすぎる。おそらく県も、どこからどこまでが自分たちの仕事なのか、自分の立ち位置がつかめなくなっているのではないでしょうか。今回の震災は、地方自治体について考える機会になっていると思います。

 

 

友好協定、姉妹都市のありかた

 

本田 わたしはいま、自治体のネットワークをつくろうと、いろいろな所で盛んに主張しています。お互いにネットワークの中で行動し、発言することで、県や国が動かざるを得ない状況をつくっていきたいと思っているんです。

 

飯田 友好協定や姉妹都市といったネットワークがあると、震災発生直後に各地から支援を受けることができ、その地域の拠点にもなれると思います。実質的なネットワークの存在以上に、「どこに支援を集中させるか迷う必要がない」という点が大きいかもしれない。それに日本中の各地域に1個ずつ友好都市があれば、広域で被害があったとしても、被害を受けていない残りの市がバックアップすることができますよね。

 

本田 ええ、今回も友好関係を結んでいる愛知県大府市は、遠野市にたくさん支援してくださった。

 

友好都市は、リボンをつけて儀礼的に首長同士が握手を交わすだけではなく、お互いに連携・交流しながら、何かあったときは支え合う。ウィンウィンの関係を作っていくことが友好関係のあるべき姿だと考えています。

 

飯田 県のありかたが難しくなり、基礎自治体の重要性が増していくなかで、本田市長のご活躍の機会もますます増えることと思います。市長の一層のご活躍を期待するとともに、東北の復興をお祈りしています。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

 

(2012年11月27日 ショッピングセンターとぴあにて)

 

 

tono

 

 

 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

・打浪文子「知的障害のある人たちと「ことば」」

・照山絢子「発達障害を文化人類学する」
・野口晃菜「こうすれば「インクルーシブ教育」はもっとよくなる」
・戸谷洋志「トランスヒューマニズムと責任ある想像力」
・濵田江里子「「社会への投資」から考える日本の雇用と社会保障制度」
・山本章子「学びなおしの5冊 「沖縄」とは何か――空間と時間から問いなおす」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(6)――設立準備期、郵政民営化選挙後」