福島レポート

2018.05.12

福島第一原発から放出される水は海を汚染しているのか?

基礎知識

福島第一原発構内から海に放出されている水には、どのくらい放射性物質が含まれているのでしょうか。 

福島第一原発の周囲の海水に含まれる放射性物質は、毎日検査されています。2017年9月11日の「福島第一原子力発電所周辺における海水分析結果(福島第一港湾内)」によると、防波堤に囲まれた港湾内で検出される放射性セシウムやトリチウムは検出下限値(1ベクレル/L)前後です。

一方、港湾外の海水は、港湾内よりも検出限界値を下げて(0.001ベクレル/L)分析していることから、セシウムやストロンチウムが検出されることが多いのですが、それでも法令で規制されている濃度(セシウム134で60ベクレル/L、セシウム137で90ベクレル/L、ストロンチウム90で30ベクレル/L)よりも十分に低い値となっています。

では、実際に私たちがこの水を飲んだらどうなるのでしょうか? 私たちの体内には、もともと放射性カリウムがつねに4000ベクレルほど存在しています(体重60kgの成人男性の場合)。1Lの水≒1kgですから、検出下限値前後の水で4000ベクレルの放射性物質を集めるためには、4000Lが必要ということになります。 

体内にある放射性カリウムと同じ量の放射性セシウムを摂取するためには、福島第一原発にもっとも近い海水を一日4L、1000日間飲み続けなければなりません。また仮にそれを実行できたとしても、放射性セシウムは尿や汗で体外に流れてしまうため、子どもで約1ヵ月、成人でも約3ヵ月間しか体内に留まりません。 

このように、福島第一原発からもっとも近い港湾内の海水に含まれる放射性物質が十分に低いこともあり、2015年4月の調査以降、福島県沖で獲れた魚から、基準値(100ベクレル/kg)を超える放射性物質が検出されることはほとんどありません。(2019年4月24日更新)

●参考リンク

福島第一原子力発電所周辺における海水分析結果(福島第一港湾内)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2017/images3/intake_canal_map-j.pdf

水産物の放射性物質調査の結果について
http://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/kekka.html