福島レポート

2018.09.12

世界最高性能の全球型シアター――放射線や福島の魅力を体験

遠藤乃亜 / ライター

福島の暮らし

福島県三春町にある環境創造センターの交流棟(愛称:コミュタン福島)には、全方位(360度)の映像を見られる”世界最高性能”の施設があります。「環境創造シアター」と名付けられた施設で、放射線のメカニズムや福島の豊かな自然や文化を、迫力ある映像と音声で体験できます。

コミュタン福島は、東京電力福島第一原発事故を受けて、2016年7月に全面オープンしました。放射線に関する知識や再生可能エネルギー導入の取り組みなどを紹介しています。ここにある「環境創造シアター」は、地球の100万分の1の大きさに相当する、直径12.8メートルの全球型の施設です。内側は全面スクリーンとなっており、視聴者は、真ん中を横切って渡された透明な橋の上に立ちます。上映が始まると、前後はもちろんのこと、頭の上や橋の下にも迫力ある映像が映し出されます。空中を飛んでいるような浮遊感を味わえます。

こうした機能を持った全球型シアターは、世界で2台しかありません。1台目は、2005年に愛知県で開かれた「愛・地球博」の長久手日本館に設置されて人気を博した「地球の部屋」です。愛・地球博が終わった後に国立科学博物館に移設され、「シアター360」として活躍しています。コミュタン福島にある環境創造シアターも同じ機能を持っています。

現在、環境創造シアターでは原則30分おきに、番組を上映しています。オリジナルコンテンツとして「放射線の話」「福島ルネッサンス」「宇宙から見た地球環境」の3本をそろえています。実際は目に見えない放射線について原子レベルの視点で疑似体験したり、福島の美しい山河や立派な城、馬が力強く疾走する「相馬野馬追」の会場近くを飛ぶ感覚を味わえます。さらに、「恐竜の世界」「宇宙138億年の旅」などの、国立科学博物館のオリジナルコンテンツもあります。

福島第一原発事故前は、電力会社や医療機関、研究者、原発立地自治体の人たちを除けば、放射線に関心を持つ人はあまり多くはなかったかもしれません。福島第一原発事故後の福島では、住民は安全性を確認して安心して生活を送るために、個人線量計を身につけて自分の外部被曝線量を把握したり、テレビや新聞で日々報じられる各地の空間放射線量を確認したりしてきました。福島県民と交流すると、放射線について非常に詳しい人が多くて驚いたという人も少なくありません。

コミュタン福島では、環境創造シアターをはじめとする様々な設備があります。福島第一原発の模型、原発事故が起きた直後の新聞、最新技術を使ったゲームや体験学習を通じて、放射線や除染について楽しく学べる工夫が施されています。コミュタン福島を訪れた人は誰でも、楽しく学びながら、福島の自然や文化について知ることができます。

コミュタン福島(https://www.com-fukushima.jp/index.html)の開館時間は午前9時~午後5時で、入場無料。毎週月曜日休館(月曜日が祝日の場合は翌平日)。