福島レポート

2018.11.29

日本一標高の高い公開天文台――浄土平天文台

遠藤乃亜 / ライター

福島の暮らし

福島県福島市にある浄土平天文台は、標高約1,600メートルに位置しています。日本一高い所にある「公開天文台」として、市民や天文愛好家から親しまれています。

浄土平は、福島市から山形県米沢市に広がる吾妻連峰の東部(福島市内)にあります。福島市中心部から車で約1時間で行けることもあり、多くの市民や観光客が訪れます。かつては山伏が修行で使う登山道もありました。険しい山道が続く中の平らな開けた場所は、山伏が体を休めるのにはうってつけの場所だったのでしょう。「厳しい修行を続ける山伏にとってのつかの間の安息の地だったにちがいない」と「極楽浄土」にたとえられ、やがて「浄土平」と呼ばれるようになったといいます。

高い標高のため空気が澄み、都会の明かりからも離れていることもあり、昔から天体観測ポイントとして愛好家が訪れていました。読書感想文コンクールの課題図書として有名な「星になったチロ イヌの天文台長」という物語があります。浄土平では1970年代以降、たくさんの愛好家が集って天体観望会「星空への招待」が開かれました。愛好家の心を和ませた犬・チロも観望会に来ていたことから、「チロに会いにいこう」が合言葉になったそうです。

ファンなどから強い要望が出たことから、福島市は1993年に浄土平天文台を開設しました。口径40センチの望遠鏡が設置されており、子どもたちが星空に触れる機会を今も守り続けています。

天文台の隣には、浄土平の自然や歴史を紹介する「浄土平ビジターセンター」と、食事やお土産を販売する「浄土平レストハウス」があります。いずれの施設も例年、福島市中心部からつながる磐梯吾妻スカイライン(県道70号)の開通期間(4月上旬~11月中旬)に合わせて開館されています。