福島レポート

2019.07.02

原発事故直後の一人ひとりの外部被ばく線量は?――福島県民健康調査「基本調査」

基礎知識

原発事故後の放射線による健康影響が出ないかをより正確に確認するためには、原発事故直後、もっとも放射線量の多い時期の、住民一人ひとりの被ばく線量を把握することが重要です。東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、福島県は福島県立医科大学に委託し、県民健康調査を実施しています。

一人ひとりが個人線量計を身に着けていれば、その人の外部被ばく線量を測定することができます。しかし、原発事故直後に、個人線量計をつけて生活している人はほぼいませんでした。そのため、何らかの工夫が必要となります。

県民健康調査のうち、「基本調査」は、原発事故後の、もっとも放射線量が高かった時期に県内にいた一人ひとりの外部被ばく線量を知るための調査です。

基本調査では、原発事故後4ヵ月の間に福島県内にいた人や、福島県に住民登録があった人を対象に、一人ひとりの外部被ばく線量を行動記録をもとに推計します。

原発事故の後「いつ、どこに、どのくらいの期間滞在したか」(行動記録)を問診票で回答してもらい、各地点の空間線量率などのデータとあわせて、4ヵ月間の一人ひとりの外部被ばく線量を計算する方法です。

基本調査の対象者は205万5266人ですが、これまでに回答があったのは27.6%、放射線業務従事経験者などを除くと22.6%です。

放射線業務従事経験者などを除いた人の99.8%の外部被ばく線量は、5ミリシーベルト未満でした。もっとも高かった人で25ミリシーベルト、全体の平均では0.8ミリシーベルトでした。(2018年3月までの推計結果)

地域別の平均値は、県北1.4ミリシーベルト、県中1.0ミリシーベルト、県南0.6ミリシーベルト、会津0.2ミリシーベルト、南会津0.1ミリシーベルト、相双0.8ミリシーベルト、いわき0.3ミリシーベルトと、いずれも低い水準となっています。

原子放射線に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、外部被ばく線量について「100ミリシーベルト以下の場合、明らかな健康影響はこれまでに確認されていない」と報告しています。

したがって、県民健康調査検討委員会は、基本調査の結果を受けて、「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価しています。

参考リンク

・「基本調査」の結果について(福島県立医科大学ホームページ)

http://fukushima-mimamori.jp/basic-survey/result/

・県民健康調査における中間取りまとめ (福島県県民健康調査検討委員会)

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/158522.pdf

・被ばく線量と健康リスクとの関係(環境省)
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30kiso-04-02-04.html