福島レポート

2023.07.05

「処理水海洋放出は国際的な安全基準に整合的」

基礎知識

2023年7月4日、国際原子力機関(IAEA)は、ALPS処理水(以下処理水)の海洋放出計画に関して、「国際的な安全基準に整合的である」とする包括報告書を公表しました。IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は岸田文雄首相に報告書を手渡しました。IAEAは、世界中から派遣される原子力分野の専門家が所属し、原子力利用に関して各国に具体的対応策を提示する中心的機関です。報告書は、世界的な知見に照らして、処理水の海洋放出が安全かつ合理的であることを示したことを意味します。

日本政府は2021年4月13日に廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議を開き、「2年程度後にALPS 処理水の海洋放出を開始する」方針を決定しました。グロッシ事務局長は同じ日に、「IAEAがALPS処理水レビュー実施」を発表しました。

この方針に基づいてIAEAはタスクフォースを結成しました。メンバーはIAEAスタッフに加え、11か国(アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、マーシャル諸島、韓国、ロシア連邦、英国、米国、ベトナム)出身の国際的な専門家が加わっています。

タスクフォースは来日し、東京電力や経済産業省、原子力規制庁の職員に聞き取りしたり、福島第一原発を視察したりして、これまでに中間的な6本の報告書を公表しています。7月4日に公表されたのは、処理水海洋放出前の総まとめとなる包括報告書です。

包括報告書の主なポイントは次の通りです。

  • ALPS処理水海洋放出に関連する東京電力や日本政府、原子力規制委員会の取り組みは、国際的な安全基準に整合的である
  • ALPS処理水の海洋放出が、人及び環境に与える放射線の影響は無視できるほど小さい

包括報告書を受けて、日本政府は「報告書の内容を詳細に確認し、透明性をもって国内外に情報発信する。今後も、IAEAに対する情報共有を継続するとともに、ALPS処理水の海洋放出について、国際社会の一層の理解を醸成していくことに努める」としています。海洋放出は今年夏頃に開始される見通しですが、今回の報告書で国際的、科学的な評価が示されたことで、放出に対する懸念払拭が進むと期待されます。

参考リンク

●福島第一原発の処理水海洋放出計画は国際的な安全基準に準拠している(IAEA)

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-finds-japans-plans-to-release-treated-water-into-the-sea-at-fukushima-consistent-with-international-safety-standards

●ALPS処理水の放出に関するIAEA安全性レビューのタイムライン(IAEA)

https://www.iaea.org/interactive/timeline/105298

●Fukushima Daiichi ALPS Treated Water Discharge(IAEA;英語、アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語、日本語の各言語で処理水について情報発信している)

https://www.iaea.org/topics/response/fukushima-daiichi-nuclear-accident/fukushima-daiichi-alps-treated-water-discharge

ALPS処理水の処分(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/alps.html

処理水ポータルサイト(東京電力)

https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/