確率的影響と放射線防護

放射線は人の健康に影響を及ぼすことがあり、「確率的影響」と「確定的影響」に分類できます。これは、放射線被ばく線量の高低によるものではなく、あくまでも影響の種類による分類です。

 

まず、現代の日本人の約20%~25%以上は、なんらかのがんによって亡くなっています。 

 

このような、年齢や性別の構成、生活習慣を持った人たち(集団)ががんによって亡くなっている人数を集計し、その集団の中で今後がんによって亡くなる人の数を予測します。そして、これらの条件が類似した集団において、(自然に起こり得る揺らぎの範囲を超えて)予測よりもたくさんの人数ががんによって亡くなる数が、被ばく線量に比例して起こると仮定した場合、この影響を「確率的影響」といいます。

 

がんにかかる原因は、加齢や遺伝、また他にも無数に存在するため、実際に低い線量の被ばくががんの発症にどれだけ影響しているのかを、他の要因と区別して確認することはできません。 

 

原爆投下の被害を受けた広島や長崎における調査によると、およそ200ミリシーベルト~2000ミリシーベルトの範囲では、発がんリスクがほぼ線量に比例して増加することがわかりました。この結果から「理論的にはどんなに低線量の被ばくであっても、被ばく線量に応じて発がんリスクが上昇する」とする仮説(LNT仮説)に基づくリスクの大きさ(リスク係数)は導き出されています。

 

実際には、確定的影響(放射線被ばくによって直接ケガをするような影響)の閾値よりも低い線量で放射線被ばくによる発がんが線量に比例して増加しているかどうかは観測できません。しかし、放射線防護の方策(法律や管理施設などを決める際の手法)としては、仮に「低線量でも確率的影響が存在するもの」として、リスクを評価することになっています。

 

このように実際に観測はできないものの、国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線に関する政策や放射線を扱う施設を作る際には、どんなに低い量の放射線被曝であっても、放射線の被曝線量に比例してがんは増加する」と安全側に仮定して、放射線に関する政策や放射線を扱う施設はつくられるべきだと勧告しています。 

 

なお、1945年に原子爆弾が落とされた広島と長崎において、ほぼ70年にわたり、10万人規模の人たちを対象に、がんによる死亡率についての追跡調査が行われています。 この結果、100mSvに満たない量の放射線に被曝した人たちの間では、(自然に起こり得る揺らぎの範囲を超えて)がんによって亡くなる人の数の増加は観測されませんでした。(2018.5.25更新)

 

 

 

 

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