福島第一原発にたまるトリチウムを含む「処理水」の処分方法は?

東京電力福島第一原子力発電所では「トリチウム」を含む水が保管されています。(「トリチウムってなに?」https://synodos.jp/fukushima_report/21554

 

敷地の地中を流れる地下水が、原子炉建屋やタービン建屋などの地下へ流入しています。建屋内には事故以降、様々な種類の放射性物質を高濃度に含む「汚染水」がたまっています。流入した地下水がこれと混ざることで、汚染水の量は増加しつづけています。

 

汚染水は多核種除去設備(ALPS)などを用いて浄化しています。ALPSでは62種類の放射性物質を除去できるようになりました。このALPSで唯一除去できずに残る放射性物質がトリチウムです。トリチウムは(主に水分子の中の水素原子が1つトリチウムに置き換わった)トリチウム水として存在します。ALPSによって浄化された水は、浄化処理が終わったという意味で「処理水」と呼ばれ、現在約92万トンに達しています。

 

では、これらの処理水の処分方法に関して、これまでどのような検討がなされてきたのでしょうか。汚染水処理の大きな方針は東電だけに任せずに、国が検討しています。具体的には、所管する経済産業省が二つの有識者会合を立ち上げて議論を進めてきました。

 

一つ目は「トリチウム水タスクフォース」です。2013年12月から16年5月まで15回の会合を開き、処理水の処分方法を検討しました。このタスクフォースの役割は、処分方法としてどのような選択肢があるのかについて技術的検討を行い、それぞれの選択肢のメリットとデメリットをまとめることです。

 

タスクフォースは2016年6月に議論をまとめた報告書を公表しました。報告書では、「地層注入」「海洋放出」「水蒸気放出」「水素放出」「地下埋設」の五つの処分方法について、処分に要する期間や費用を計算しました。その結果、処分期間は最短で5年2か月間、最長で13年間。処分にかかる費用は最低17億円、最高3,976億円と大きな違いがあることが判明しました。5つの処分方法のうち、「海洋放出」は費用が最も少なく、処分期間が最も短いということがわかりました。

 

タスクフォースは、技術的な検討を担いました。しかし、実際の処分方法を決めるためには、より幅広い視点からの検討が必要です。たとえば、社会的影響としては風評被害の問題があげられます。そうした役割を果たすために、経済産業省は2016年11月に「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」という二つ目の会合を立ち上げました。

 

この小委員会がタスクフォースと異なる点は、複数の社会科学系の専門家やジャーナリストをメンバーに加えた点です。小委員会は2016年11月から17年10月まで計6回の会合を開きました。この会合では、主に風評被害の懸念などについて議論がされました。また、広く国民の声を聞くために、2018年8月30、31日に福島県富岡町と郡山市、東京都内の計3回、「説明・公聴会」を開きました。

 

説明・公聴会では計44人が意見表明し、タスクフォース報告書では有力な選択肢とみられた海洋放出に関して、反対する意見が多く出されました。加えて、小委員会委員長の山本一良・名古屋学芸大副学長は、5つの選択肢に加えて「タンクでの長期保管」の可否を議論する方針を示しました。今後もこの小委員会での議論が行われる見通しです。

 

●「トリチウム水タスクフォース」と「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の議論や資料は、経済産業省のサイト「福島第一原子力発電所における汚染水対策」で確認できます。
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku.html#osensuitaisaku_mt

 

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