福島の甲状腺検査で見つかる「微小乳頭がん」とは?

東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、福島県で行なわれている県民健康調査には、甲状腺検査が含まれます。甲状腺検査では、原発事故当時18歳以下だった全県民を対象に、超音波で甲状腺がんの可能性の有無を調べています(甲状腺がんスクリーニング)。

 

甲状腺は、代謝や成長にかかわるホルモンを作り、蓄え、分泌する役割を持つ10~20gの臓器です。のどぼとけの下で、気管を取り囲むように存在しています。ほかにも、食道、反回神経(声帯の筋肉を動かす神経)がすぐ近くにあります。

 

 

(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

 

 

甲状腺がんは、甲状腺の細胞ががん化したものです。甲状腺がんにはいくつかの種類があり、それぞれ性質が異なります。

 

日本人の甲状腺がんの約90%を占める「甲状腺乳頭がん」は、以下のような特徴をもちます。

 

①治療後の経過(予後)が良い。
②進⾏がきわめて遅い。
③リンパ節転移が多い。

 

甲状腺乳頭がんは、ほかのがんと異なり、若い人の方が高齢の人よりも予後が良いがんです。すでにリンパ節に転移した状態で見つかることが多いものの、すべてが必ずしも時間の経過とともに増えたり大きくなったりはせず、ある程度のところで成長を止めることが多いといわれています。

 

リンパ節転移の有無は、甲状腺乳頭がんの予後の良し悪しと、あまり関係がありません。

 

また、高精度の超音波を使った甲状腺がんスクリーニングで見つかるような、腫瘍径10mm以下の甲状腺乳頭がんを微小乳頭がんといいます。

 

甲状腺微小乳頭がんは、甲状腺がん以外の原因で亡くなった方を死後解剖すると、10人に1~2人程の高頻度で見つかります。それにもかかわらず、一生のうちに実際に乳頭がんを発症する人が1000人に1人程であることから、ほとんどの甲状腺微小乳頭がんは一生発症しないままであると考えられています。

 

超音波で無症状の甲状腺微小乳頭がんを発見すると、一生甲状腺がんと診断されずに済んだかもしれない人を甲状腺がん患者にしてしまう(過剰診断)というがん検診の害があり、国際的に推奨されていません。また、高齢になって発見しても予後が良い甲状腺微小乳頭がんを、子どもや若者のうちに発見する(前倒し診断)ことにも、心身、また社会的な害が大きいことが指摘されています。

 

原発事故後の周辺地域住民に対しても、甲状腺がんスクリーニングを行わないことが、IARC(国際がん研究機関)によって勧告されています。

 

リンク

・Sanae Midorikawa MD, PhD  Michio Murakami PhD  Akira Ohtsuru MD, PhD(2019)

Harm of overdiagnosis or extremely early diagnosis behind trends in pediatric thyroid cancer

Cancer

https://doi.org/10.1002/cncr.32426

・Toru Takano MD(2019).

Natural history of thyroid cancer suggests beginning of the overdiagnosis of juvenile thyroid cancer in the United States

Cancer

https://doi.org/10.1002/cncr.32424

・国立がん研究センター がん情報サービス「甲状腺がん」

https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/index.html

・がん研有明病院 がんに関する情報「甲状腺がん」

https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/thyroid.html

・「甲状腺スクリーニング検査を実施しないことを推奨する」――IARCの勧告

https://synodos.jp/fukushima_report/22298

 

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