反対意見を持つ相手を味方にする方法

■反対意見を持つ相手を味方にする方法

 

第一次世界大戦の直後、米国上院議員ロッジ氏とハーバード大学ローレル学長が、ボストンで国際連盟についての公開討論を行なうことになりました。国際連盟は現在の国際連合の前身で、アメリカのウィルソン大統領が提唱したものです。ロッジ上院議員はそれに反対する中心人物です(最終的にアメリカ政府は国際連盟への加盟を断念しました)。

 

彼はボストンの聴衆の大半が自分の意見に反対しているのを感じていました。しかし、みんなを説得しなければなりません。どうすればいいのでしょうか? 聴衆の考えを正面から非難する? いや、それはだめだ――。彼は、抜け目のない心理学者でもあったため、自分の願いをそんな未熟なやり方で台なしにはしませんでした。

 

ロッジ議員はまず、「親愛なるアメリカ国民の皆さん」と呼びかけて、聴衆の愛国心に訴えかけました。聴衆との意見の相違を小さく感じさせ、同じように大切にしているものを強調したのです。

 

そして、敵である討論相手を称え、手法に関しては互いの意見に多少違いがあるもののアメリカの繁栄と世界の平和という重要な点に関しては一致している、という事実を指摘します。

 

最後には、自分は国際連盟のような組織自体には賛成だと述べ、討論相手と異なるのは、国際連盟よりも理想的で有効な組織が必要だと感じているだけなのだ、と締めくくっています。まるで、彼が聴衆と同じ意見を持っており相違があっても細部にすぎないかのようです。

 

 

敵に敬意と共感を示す

 

彼の話の冒頭を紹介しましょう。最大の敵である討論者でさえ、これには共感せざるを得ませんでした。

 

 

親愛なるアメリカ国民の皆さん。皆さんの前でこうしてお話しできる機会をいただき、ローレル学長に感謝いたします。

 

彼と私は長い友人であり、ふたりとも共和党員です。彼は、アメリカで最も重要で影響力のある大学の学長であり、政治研究家としても知られています。彼と私は、この大切な問題について異なる意見を持っていますが、その目的が、世界平和やアメリカの繁栄である点は同じです。

 

私自身の立場について、どうか一言だけ言わせてください。私は自分の考えを簡単な言葉で説明したいと思っていました。しかし、私が言ったことがわからず、おそらく誤解を抱いている人もいらっしゃいます。

 

私は国際連盟に反対していると言われているようですが、そんなことは決してありません。私は国々が、自由な国々が一体となって、私たちが連盟と呼ぶもの、あるいはフランス人が社会と呼ぶようなものになり、将来の世界平和や軍縮のために貢献することを心から望んでいます。

 

 

正面から相手の間違いを指摘しない

 

いくら相手が自分とは違う立場だと思っていたとしても、いきなり反対意見ではなく、このようにお互いの共通点から話を切り出されると、気持ちが和らいでしまいます。もっと聞いてみたい、とさえ思うでしょう。話し手の意見は、反対意見ではなく、公平な意見なのだと感じさせます。

 

ロッジ上院議員が、国際連盟を信じている人々に対して、それはとんでもない間違いであり幻想にすぎない、と冒頭で言ったらどうなっていたでしょうか? 無益な結果に終わるだけだったでしょう。歴史家ジェームズ・ロビンソン氏は、相手に正面きって間違いを指摘することの無益さをこう説明しています。

 

 

私たちは、ときに抵抗もなく、軽い気持ちで意見を変える。しかし、自分が間違っていると言われたら、非難されたと怒り、頑なになる。

 

驚くほど無頓着に信念を形成するのに、それが奪われそうになると、とんでもなく執着する。脅かされるのは考えではなく、プライドなのである。「私の」という小さな言葉がもっとも重要だ。夕食であろうと、犬であろうと、家であろうと、信念であろうと、国であろうと、神であろうと、「私の」ものであることが大事なのだ。時計が合っていないとか、車がみすぼらしいとか言われて怒るだけでなく、火星の運河や、エピクテトスの発音や、サリシンの医学的価値や、サルゴン1世の時代に関する知識を、訂正しなければならないときもあるだろう。

 

これまで真実だと思っていたことを真実だと思い続けたいし、これまでの考えに疑問が投げかけられると、その考えにしがみつくためのあらゆるいいわけを探そうとする。その結果、いわゆる推論と呼ばれるものは、すでに信じているものを信じつづける理由を見つける作業になるのだ。

 

 

▼自らのプライドを守るため、人は自説に執着する 【次ページにつづく】

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

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