『1984 フクシマに生まれて』刊行記念 大野更紗と開沼博が選ぶ「生き抜くためのブックレット」

2014年2月に刊行された大野更紗・開沼博著『1984 フクシマに生まれて』(講談社)。その刊行記念として3月23日に池袋で開かれたトークイベントでは、本書の紹介に留まらず、著者のふたりが考える「現代社会を生き抜くために、今、読むべき30冊」が紹介された。1984年、福島県生まれという共通点を持つふたりは、いま読者に、どんな本を手に取ってもらいたいと考えているのか。イベントの抄録をお送りする(構成/金子昂)。

 

 

『1984 フクシマに生まれて』(講談社)

 

大野 みなさんこんにちは、大野です。

 

開沼 開沼です。よろしくお願いします。

 

大野 今日は日曜日の午後という貴重な時間にもかかわらずトークイベントにお越しいただいて本当にありがとうございます。会場であるリブロ池袋本店さんが入っている百貨店があまりに混んでいて、駅の改札からこのイベントルームに辿り着くまでに、35分もかかりました。車椅子がぜんぜん前に進まなくて。

 

開沼 まずは『1984 フクシマに生まれて』の宣伝をしないといけないんですよ。

 

大野 あっ、そうですね。

 

 

1984 フクシマに生まれて (講談社文庫)

著者/訳者:大野 更紗 開沼 博

出版社:講談社( 2014-02-14 )

定価:

Amazon価格:¥ 918

文庫 ( 352 ページ )

ISBN-10 : 4062777630

ISBN-13 : 9784062777636


 

 

開沼 刊行してしばらく経ちますが反響はどうですか?

 

大野 なんで私に聞くんですか(笑)。開沼くんも共著者でしょ!

 

開沼 ぼくは、ぼくが書いた本の中で一番読みやすいって言われましたね。あとツイッターをみていると、同世代のひとが「自分がみてきたものと非常に似通っていて共感できる」といった内容を呟いているのをみました。

 

大野 私はこれまで被災地としての福島に直接言及した本って作ったことはなかったんですよね。

 

福島県内の中高生世代で、スマートフォンを持ってる人が結構いるんですよね。ツイッターをやっている人も当然いらっしゃる。SNSを通してですが、福島の若い世代の人から感想をいただいたのは嬉しかった。でも実はこの本って、タイトルに「フクシマ」ってあるけど、福島を書いたわけではないんです。

 

開沼 そうですね。

 

大野 震災後の社会で、様々な分野でキーパーソンとなる人たちの話を聞いてきたと思っています。開沼くんはどうですか?

 

開沼 そんな感じです。聞きたい人に聞けたので自分でもやっていて楽しかったし勉強になった。それから、あとでお話したいと思っていますが、2か月ほどオウム真理教元幹部の平田信裁判を傍聴したりしてたんで、森達也さんとお話しできたのは予習になってよかったかな。

 

大野 川口有美子さん、駒崎弘樹さん、小鷹昌明さん、森達也さん、茂木健一郎さん、金富隆さんと、それぞれ異なる現場の最前線で活躍されている方と、みんなのスケジュールをなんとか合わせて、講談社に集まって、半日くらいゆっくりとお話を伺う。月に一度の「勉強会」みたいな感じだったよね。

 

開沼 そうですね。読者の皆さんには勉強会の空気を味わってもらいたいと思います。たった850円ですし。

 

大野 (これはコスパが良いですよ)(小声)。気楽に、手に取ってもらいやすいように、文庫書き下ろしにしました。

 

開沼 というわけで、『1984 フクシマに生まれて』の話はこのあたりで切り上げましょう。今日は非常にハードなんです。いまから2時間ほど、「今、読むべき30冊」と題して、僕たちが15冊ずつ選んだ本を紹介していきたいと思います。

 

大野 イベントに参加してくださった皆さんに「現代社会で生きぬく上で重要な本を30冊、2時間で読んでしまった……」という気持ちになっていただけるようなイベントになる……予定です。

 

開沼 時間もないので、さっそく大野さんの一冊から。

 

※当日配られたペーパーはこちらからダウンロードください。

 

 

『生の技法<第3版> 家と施設を出て暮らす障害者の社会学』(生活書院)

 

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大野 一冊目は『生の技法』です。戦後日本では、重度の障害のある人が「施設」から出て暮らすという選択肢が長きにわたってなかった。1960年代から70年代にかけ、主には脳性まひのグループが中心になって「もう施設で暮らすなんてまっぴらだ!」と施設から出る運動を始めた。制度がゼロの状態から、きりひらいてきた。戦後の当事者運動に関する貴重な記録でもあります。最近は、社会学の概説の教科書にも載るようになりましたね。古典となった感があります。

 

特筆すべきは、執筆者に社会学者3名(岡原正幸、尾中文哉、立岩真也)だけでなく、安積純子さんという重度障害の当事者であり、自立生活運動の牽引者が1名入っていること。障害や社会保障を語るには、必携の一冊です。

 

開沼 文庫版は大野さんが解説を書いていらっしゃるんですね。

 

大野 それは別にいいんです。最初に頼まれたときは、あまりにおそれおおくて「無理です」と断ったんです。けど、いろいろ経緯があって……。まあそれはいいんです、では次、開沼くん。

 

 

『てっちゃん ハンセン病に感謝した詩人』(彩流社)

 

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開沼 ぼくの一冊目は『てっちゃん』です。これは最近でたハンセン病についての写真集で、韓国から日本に留学生としてこられた写真家の権徹(ゴン・チェル)さんが出したものです。

 

ハンセン病の話はいままでいろいろとコンテンツ化されてきて、歴史的な蓄積もあり、小難しく書くことはできるわけだが、この本は文章がたんたんとしていてわかりやすく、また写真で見られることの説得力があるんですね。

 

復興の話に携わっていても思うんですけど、時間の経過とともに記録や理論はいくらでも出てきます。すると「この本を読んでいないと震災のことを語っちゃいけない」みたいな話になって新規参入が難しくなる。解決策のツールはでてくるが、それを使える人が減っていくというジレンマがあるわけです。そのハードルを一度、徹底的に下げるためにはこういう本が必要なんだと思うんですよね。子どもでも読める本だと思いますし、現代においてハンセン病を知るための重要な本だな、と。

 

大野 このくらいのボリュームのフォトブックだとお風呂の中でも読めますよね。

 

開沼 おっ、お風呂の中で読みますか?

 

大野 発病前は、毎晩読みましたよ。お風呂って、日本の人にとって重要な読書空間なんじゃないかなあ。

 

開沼 ぼくも一時間以上読んだりしますね。

 

 

 

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無題

 

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