「セーリ」も「シャセー」も知らなかった――『男子の性教育』(村瀬幸浩)他

『男子の性教育 柔らかな関係づくりのために』(大修館書店)/村瀬幸浩

 

小学校高学年のときだったと思う。女子だけが別の教室に集められ、男子はそのまま待機する時間があった。たぶん「道徳」か「保健・体育」の授業だった。

 

なぜ女子だけが集められるんだろう? 女子の間でいじめがあって誰かが怒られてる? あれ、ぼく、なんか悪いことしたっけ? 女子が集められた教室の近くにあるトイレの前をそわそわ行ったりきたり。

 

含みをもってニヤつく奴もいたような気がするから、たぶん何が行われているか知ってた奴もいた。まあでも、たぶん大半の男子は、月経も、生理だって、知らなかったと思う。

 

……いや、もしかしたらぼくが少数派なのかもしれない。ぼくが「セーリ」という言葉を聞いたのは、たぶん中学生の後半あたり。エロ本だってそこそこ見てたし、ごくごくふつーの中学生だった(と思う)けど、自らの身体で体験したこと以外の性的な知識はほとんどもってなかった。もうちょっと正確に言えば、自分の身体になにが起きているのかよくわかっていなかったから、その知識だって頼りにならない。つまり、ほとんどなんにもわかってなかった。

 

これっていま思えば由々しき問題だ。小学生くらいの女子が、まったく知識もない状態で初潮を迎えたら、きっとものすごい不安を覚える。それは精通して性欲を覚えて、なんだかわからないけどむらむらして、なぜか罪悪感を覚えながら、やり方があっているのかもわからないマスターベーションをする男子にも同じことが言えると思う(ちなみに著者は、オナニーやマスターベーションに含まれるマイナスイメージを払拭すべく、「セルフプレジャー」と呼ぶことを提唱している)。

 

本書でも引かれている猪瀬優理氏の調査をみると、少なくない男子が、射精に対して汚らわしい・恥ずかしいというマイナスイメージを抱いていることがわかる。でも性欲は生理現象であって、別に悪いことじゃない。強姦のような事件が発生すると「男は性欲を我慢できないんだから、女性が自分で自分を守らないといけない」なんて乱暴な話も聞くけれど、襲った奴が悪いにきまってる。本書に書かれているように、欲求はコントロールできなくても、行動はコントロールできるものだ。だったら自らの性について、ちゃんと勉強しておく機会がないといけないんじゃないか。射精ってどうして起きるの? 精子ってなんで白いの? これって病気? マスターベーションのやり方は? それって本当に汚らわしいの? などなどなど……。

 

著者の村瀬氏は、20年以上前から「男子にも性の学びを」と主張してきた方だ。本書は一方的に「男子の性欲を理解してくださいな」という本じゃない。これまで性教育の埒外におかれてきた男子が、自らの性を学ぶことで、ようやく相手と「柔らかな関係」を作る第一歩が踏める。本書でも言及されているように、性の多様性も少しずつ認識されつつある。性教育のこれからを考えるための必読本。(評者・金子昂)

 

 

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