時代劇を気軽に楽しむ「補助線」として――『エドノミクス 歴史と時代劇で今を知る』(扶桑社)あとがき

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時代劇の補助線として

 

飯田 僕と春日君という不思議な組み合わせのふたりによるこの本だけど、何よりのメッセージは、もっと時代劇を見てほしい、時代小説――なかでも江戸モノをもっと読んでほしいってところなんだよね。今、テレビ時代劇がものすごく少なくなってるじゃない。その結果、学問的な意味での歴史とはちょっと違う時代劇的舞台設定についての共有知識っていうのが、だんだん薄らいでしまっている。でも、定番の時代背景みたいなものをちょっとだけ知りながらみると、時代劇って、結構、面白いんだよ、って。習慣的消費じゃないけれど、なんとなく日常的に見ている状態だとすんなり受け入れられるものが、今、受け入れられにくくなっているところがあるから。

 

春日 今は、頑張れば時代劇っていくらでも見られる時代です。映画も少ないながらも作られているし、舞台もかなり時代ものが増えてきました。CSの専門チャンネルでは昔の時代劇もたくさん放送されています。でも、それって、好きな人がお金を払って見ているという状況なんです。つまり、頑張ればいくらでも見られるけれど、頑張らないとまったく見られない。それだと新規のファンってほとんど増えないんですよ。で、マニア化が進んで、より間口が狭まる。これはどのジャンルにもいえることですが、先細りする典型なんです。

 

飯田 作り手も、結局、マニアに向けて発信しようとするしね。

 

春日 その危機感はありますね。僕が「時代劇研究家」として発信しているスタンスも、そこにあります。新規ファンが気軽に時代劇に入れる入口を作りたい。時代劇はお年寄りのものだと思われがちですが、彼らは別に年を取ったから時代劇を見るようになったのではなく、幼い頃から気軽に時代劇に親しんでいて、今に至っているんですよ。日常での時代劇との出合いがなくなっている今、若い人たちが「お勉強」ではなく気軽に時代劇と接する状況をつくるというのは大きなテーマです。この本にも、そんな問題意識で臨んでいます。

 

飯田 「こんな解釈もできるのでは?」というのを、時代劇と歴史話が好きなふたりが語ったのがこの本です。僕は歴史の専門家でもなんでもないですし、時代考証とか本当の歴史がどうだみたいな話は専門家にお任せします。

 

でも、鬼平のインサイダー取引とか大岡越前や遠山の金さんよりも辣腕の筒井政憲という町奉行がいたとか、そういうトリビア的な知識があると時代劇の楽しみ方は広がる。そんなマメ知識を、僕はおもに経済分野から提案したつもり。

 

春日 私は「こういう見方を事前に知っておくと、時代劇に入りやすいんじゃないかな」というような豆知識を、エンターテイメント研究の立場から提案してみました。正確な史実や時代考証ではなく、あくまで時代劇を楽しむための補助線としての基礎教養といいますか。

 

飯田 時代劇を考証チェックのために見ると途端につまらなくなる。けれど、例えば、遠山金四郎が出てきたら江戸末期で不景気で地方は荒廃しているなとか、イメージ通りの江戸時代ものなら舞台は1820年前後かな、とかの前提をなんとなく踏まえると、物語がより面白くなる。あるいは、「なんとなくそれっぽいな」とか「そこをズラしましたか!」とかね。

 

春日 私たちがこの本で提示したいのは、まさにその「前提」です。昔の人たちはそれを当然のように知っていたから気軽に時代劇を楽しめますが、今は断絶してしまっている。若い人たちが時代劇に入りにくいのは、そこも大きいと思います。ですから、娯楽として時代劇を気軽に楽しむ「補助線」として、この本を役立ててもらえれば、幸いです。

 

 

 

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